夏だ! 恋だ!
SCOOBIE DOだ!
まさしく水を得た魚! サマー・リリースとなるニュー・アルバム
『何度も恋をする』は、SCOOBIE DOの夏イメージにジャストなキラキラとまぶしい胸ときめく作品だ。“不滅の中2感覚”ともいうべきピュアな男子の心情を、お得意の16ビートに乗せて綴る全11曲。ところが今回は、これまでとちょっと違う感覚が……いままで以上に胸キュン度がアップしてはいまいか?
そのあたりの秘密を、ギタリストでもあるリーダーのマツキタイジロウに訊いてみた。
――今回はひさびさに“夏全開!”なアルバムですね。
マツキタイジロウ(以下、同)「7月にリリースすることを先に決めていたから、“夏”ってことだけは漠然とありましたね。あとはひたすら曲を作ってそこから選ぶ、そんな感じです。作った曲はこの倍くらいありました」
――自分たちでCHAMP RECORDSを設立して以降、ストイックに“スクービーらしさ”を構築していた印象があります。ところがこのアルバムではそのタガが外れた、言ってみれば多少、尻の穴が緩んだ感じがしますが(笑)。 「CHAMPになってから、基本的に“バンド活動の場はライヴがいちばん大きい”って考えてたから、ライヴでハジけられる曲……もっと言うと、“SCOOBIE DOは4人組のロック・バンドなんだ”ってまずは伝え続けないといけない、っていうのを去年までの3年くらい、しつこくやっていた感じなんですよね。今回は、ライヴがどうだとか、ロックバンドとして説明しなきゃいけないとかはもう最初からぜんぜん考えてなくて。いわゆるスクービーのもうひとつの柱、メロウな部分を今までより多く見せたいなってことは考えてましたね」
――それはなにかきっかけがあったとか?
「自然に、ですね。もうその説明は十分やってきたかなっていう感覚だったんですよね。自分たちの得意なフィールドのものをポロンと出しても、ライヴはライヴでなんとかできるんじゃないかなっていう感覚がなんとなくあったんですよね」
――確かに、ずいぶんと“スクービーらしさ”のバリエーションは広がったなあ、とシミジミ思います。結成当初の感覚だったら絶対にNGなことも、今は普通にやってますよね。
「確実にそうですね。
『DOIN' OUR SCOOBIE』(99年のアルバム)の頃は、サウンドとかコンセプト的には1969年以降はないって感覚でしたから。それが今となっては80年代も入ってるくらいですからね」
――今回、サウンドのイメージはどういうものでしたか?
「今回は、PEACE MUSIC(ここ数作、スクービーがレコーディングしている東京郊外のスタジオ)っぽいサウンドにしたいなってところがあって。古いんだけど今の音っていうか、ヴィンテージのアナログっぽい温もりがあるんだけど今でも聴ける音にしたいなと思って、最初にそう中村(宗一郎、エンジニア)さんには伝えました。中村さんからは“それも分かるけど楽曲的には80〜90年代の要素も入ってるからそこは演奏の仕方も変えてほしい”みたいな提案があって、いろんな楽器を試しながら、例えばドラムもセットをまるまる変えたりだとか、それでいいところに着地したものをまたそこから選んでいくっていう作業でした」
――なるほど、だからかな。いままでスクービーを聴いてそう思ったことはなかったんだけど、今回は不思議なことに良質なギターポップ・アルバムを聴いたような感覚があって。 「へえ! そこは狙ったわけではないんですけど、実は今、俺の中ではすごくギター・ポップとかネオアコがブームなんですよ(笑)。“なんでなのかな?”と考えたんですよ。黒人音楽をポップなものとしてバンドで再現しようとした音楽をいろいろ聴いていくと、やっぱりネオアコとかがそれをいちばん形にしようとしてたんじゃないかって最近になって思って」
「そうそう! それをいちばんやってた
スタイル・カウンシルがあって、一方では、ギター2本でやるオレンジ・ジュースとかもいて。そのあたりに通じる感覚って、最初、自分たちは目指してなかったところで。もともとはダイレクトに黒人の音を焼き直そうとしてたんだけど、ちょっと俯瞰で見たときに、そういう同じようなことやろうとしてたのって、60年代のビート・バンド以降で考えると、ネオアコに繋がっていくような気がして。それでいろいろとネオアコの盤を聴いてはいたんだけど、それが直接このアルバムの音に出たか?っていうと、自分ではそうでもないような気はしているんですが」
――うん、それはそう。でも、ギター・バンドがソウルをやるとなぜだかネオアコになるんですよ、フレンズ・アゲインとか。 「フレンズ・アゲイン! すごく好きなんですよ。そのあたり、自分の中ではすごくシンクロしてる感じはあります」
――フレンズ・アゲインが演奏していたのは、確実にソウルやラテンに影響を受けた曲だったし。オレンジ・ジュースがアル・グリーンの「L-O-V-E(Love)」をカヴァーしてたり、ペイル・ファウンテンズがデニス・ウィリアムスの「Free」を演ってたり、ネオアコと呼ばれるバンドは確実にソウルへの憧憬が大きなバックボーンですよね。それをギターで演奏しようってことだけで。同様に今回のマツキくんも、ギター・サウンドではいろいろなトライをしているように感じましたが。 「そうですね、ギターはいろいろ竿を使い分けたというか。PEACEで録るようになってこれまでは、“僕らこの音でこんな感じで演奏するんでそれをさあ録ってください”っていうレコーディングだったんですよ。でも今回はまず楽曲ありきで、その楽曲がどういう音色を呼んでいるか?みたいな感じです。ヴィンテージな音にしていくのもありつつ、“じゃあこの曲にはこのギターがいいんじゃない? こういうサウンドがいいんじゃない?”って音をチョイスしていく。だから、ちょっとずつ作っていくようなレコーディングでしたねえ」
――トータリティよりもバラエティですよね。そのあたりもネオアコっぽい気が。
「まずコンセプトを打ち立てて、そこに向かって行くっていうのじゃないんで……まあ、いつもそうなんですけどね(笑)」
取材・文/フミヤマウチ(2010年6月)