長いロックの歴史のなかで多くのスーパー・グループが生まれてきたが、
YOSOほど意外な組み合わせはないだろう。フュージョン・ロックの最高峰
TOTOのヴォーカリストの
ボビー・キンボールと、プログレッシヴ・ロックの雄
YESのキーボードの
ビリー・シャーウッドとオリジナル・キーボードの
トニー・ケイが合体。TOTO+YESでYOSOというバンド名そのままに、出来上がったアルバムは高度なテクニックに優れた音楽性を持ち、TOTOファンが聴いてもYESファンが聴いても違和感のない上質のロック作に仕上がった。ボビー・キンボールにバンド結成のいきさつやファースト・アルバム制作の裏側を語ってもらった。
――TOTOとYESのメンバーによる組み合わせは意外だったのですが、結成のいきさつは?
ボビー・キンボール(vo/以下、同)「元YESのメンバーでキーボード・プレイヤーのビリー・シャーウッドがプロデュースした、
ジャーニーのトリビュート・アルバム『80s Metal Tribute to Journey』に参加したのがきっかけなんだ。レコーディングが終わった後に、ビリーと何かやろうと盛り上がってね。それで、ビリーとCircaというバンドを組んでいるYESのオリジナル・キーボード・プレイヤー、トニー・ケイも加わって、YOSOになったんだ。今回ビリーはベーシストとして参加している。彼らは演奏家としてだけでなく、友人としても最高なんだよ」
――アルバムのタイトル『エレメンツ』は、YOSOと同じ発音で“Element”を意味する日本語“要素”から付けたのですか?
「えっ、“Element”って日本語だと“YOSO”って言うの!? 全然知らなかったよ!! メンバーに電話してすぐに知らせなきゃ(笑)! このタイトルをつけたのは、僕らがそれぞれ違うバンドの“Element(要素・一員)”だというところからなんだ。アルバムのオープニング曲も「YOSO」というんだけど、歌詞の出だしが“Balancing all the elements(すべての要素のバランスを取って)”で、意味のない“YOSO”という言葉に何がしかの定義を与えようと思って作った曲なんだ。偶然とはいえ結果的に正しい内容の曲を作ったってことだよね。びっくりだ。まるでパズルの最後のピースがピタッとはまったみたいな感じだよ!」
――『エレメンツ』はTOTOとYESの音楽性がうまく融合し、どちらのファンも楽しめるアルバムになっていると思いますが、曲はどのようにして作ったのですか?
「どういうアルバムにしようという考えはなかったんだ。ビリーはすべての楽器をプレイできるから、曲のアイディアが浮かぶと自分のスタジオでデモを作って僕に渡す。僕はその曲を聴きながら、それに合う歌詞を一晩中かかって書きあげるんだ。そして次の日にスタジオに入ってその曲をみんなでレコーディングする。今回のアルバムは全曲そうやって作っていったんだよ。いいアルバムになったと思うよ。実はもう2ndアルバムの制作も始まっていて、さらにいい出来になると思うんだ!」
――ライヴで演奏されているTOTOとYESの名曲はどういう基準で選曲したのでしょう?
「ライヴではTOTOを5曲、YESを5曲、YOSOを5曲歌っていて、TOTOの曲は、僕が歌ったり作曲にかかわったヒット曲を中心に選んでいるよ。YESの曲に関しては、トニーとビリーに任せているんだ。でも僕は〈ロンリー・ハート〉がお気に入りだったから、歌えたのが嬉しかったな。
ジョン・アンダーソンの歌声が大好きなんだ。彼は天才だね。今回、歌うことと尊敬していることをジョンにメールで伝えたら丁寧な返事をくれたよ。人柄もすごくいい。僕とジョンの音域は偶然にも同じなんだけど、正直な話、ジョンのように歌うのは不可能だよ(笑)。99%のシンガーは歌えないと思うね(爆)。オーディエンスにもTOTOやYESの曲の受けはよかったよ。もちろんYOSOの曲もね」
――今後の予定と来日の可能性は?
「今はアメリカ・ツアー中で、9月から10月にヨーロッパ、それからメキシコや南アフリカを回るから、その後に日本に行きたいと思うよ。それと同時に僕とビリーはそれぞれソロ・アルバムを制作中で、さっきも言ったようにYOSOの2ndアルバムの制作も始まっている。僕個人に関して言えば、TOTOで歌うことがあるかもしれない。
マイク・ポーカロがALS(筋萎縮性側索硬化症)という重い病気にかかっていて、彼を支援するコンサートをTOTOのメンバーでやっているんだ。ヨーロッパ公演ではスケジュールがあわず、
ジョセフ・ウィリアムスが歌ったけど、次回はもしそういう誘いがあれば喜んでやるよ。TOTOを離れている時も僕はTOTOが大好きだからね」
――最後に、日本のファンへのメッセージをお願いします。
「日本のファンは本当に素晴らしい。バンドに対してすごく忠誠だし、音楽を深いところまで真剣に聴いてくれる。あれほどライヴでエキサイトしてくれるオーディエンスは、ほかにないと思うよ。だから僕は日本でプレイするのが本当に大好きなんだ。YOSOとして日本に行くのが待ちきれないよ!」
取材・文/竹之内 円(2010年8月)