【テリ・リン・キャリントン interview】女性トップ・ミュージシャンを率いて結成したスーパー・バンド“モザイク・プロジェクト”を語る!

テリ・リン・キャリントン   2010/09/21掲載
はてなブックマークに追加
【テリ・リン・キャリントン interview】女性トップ・ミュージシャンを率いて結成したスーパー・バンド“モザイク・プロジェクト”を語る!
  天才女性ドラマー、テリ・リン・キャリントンが、エスペランサディー・ディー・ブリッジウォーターカサンドラ・ウィルソンティネカ・ポスマ……と、そうそうたる女性ミュージシャンとともに“モザイク・プロジェクト”を結成、9月にアルバム『モザイク・プロジェクト〜ジャズと生きる女たち』をリリースした。このグループを率いて、先日開催された<東京JAZZ2010>に来日した彼女に話を聞いた。



――『モザイク・プロジェクト』は、さまざまなスタイルやトピックの音楽が盛り込まれていながら、全体としての統一感もあって、素晴らしいアルバムだと思いました。女性だけのプロジェクトというアイディアはいつ、どんな状況で生まれたのでしょうか。
 テリ・リン・キャリントン(以下、同)「女性だけのプロジェクトというアイディアは、今までにも何度か考えたことはありましたし、フェスティヴァルなどでそういう企画を持ちかけられたこともありましたが、今までは遠慮してきたんです。私はとても若い頃からプロとして活動してきましたが、共演して楽しいと思う女性ミュージシャンがなかなかいませんでしたし、女性ミュージシャンという枠に押し込められるのも嫌でしたから。でも、今は自分でも誇れるキャリアを築いたと思っていますし、近年になって楽しく共演できる素晴らしい女性ミュージシャンが増えてきたので、女性だけのプロジェクトを実現させるのにいい機会だと思ったんです」
――歴史的に見ると、たしかにジャズの世界ではクラシックの世界と違って、女性プレイヤーは少数派ですが、それはなぜだと思いますか。
 「クラシックの世界でも、女性はピアノかヴァイオリンなどのプレイヤーがほとんどで、こうした楽器はドラムスやベースほど攻撃的な印象はありませんよね。伝統的に、女性は攻撃的なことをすべきではないという観念があって、その点ジャズのトップ・プレイヤーというのはとても攻撃的ですから(笑)、女性がジャズをやると白い目で見られてきたのかもしれません。でも、今は状況が変わりました。音楽が変わったというよりもむしろ、社会が変わったというべきでしょうね。ジャズ・ミュージシャンばかりでなく、女性のCEOなども増えましたし」
――日本でも、女子高生がビッグバンドを組んで奮闘する『スウィングガールズ』という映画が数年前にヒットしたのをきっかけに、トランペットやサックスを手にする女の子が増え、今では学生ビッグバンドのコンテストで中心的な役割を果たしたり、プロとして活躍したりしているんですよ。
 「素晴らしいですね。私も世界各地でクリニックを開いて、女性の参加者が増えてきているのを見て嬉しく思っていますが、こうしたことをわざわざ話題にする必要がなくなるのが理想ですね。そうなって初めて、女性プレイヤーが認知され、受け入れられたことになるわけですから」
――人口の半分は女性ですから、ジャズ・プレイヤーの男女比を考えると、たしかに理想にはほど遠いですよね。ところで、アルバムのリリース資料の中には「“モザイク・プロジェクト”は優れた女性アーティストによる素晴らしいプロジェクトだが、もうひとつの素晴らしさは、音楽に性が現れていないところにある」というあなたの発言があります。個人的にはたとえば女性であることを前面に出したミシェル・ンデゲオチェロの作品と共通する質感のようなものを感じるのですが。
 「私は個人的に彼女の大ファンなので、そう言っていただけるのは嬉しいのですが、何も知らずにこのCDとミシェルのCDとを聴き比べたとしたら、共通点は感じないと思います。女性の作品であることを知った時に、女性ならではの感受性のようなものを感じるんじゃないでしょうか。男性だけでレコーディングされた素晴らしい作品にも、たとえばジョン・コルトレーン『バラード』はこの上なく美しいアルバムですが、私はそこに女性的な美意識を感じます。男も女も、男性的なエネルギーと女性的なエネルギーの両方を持っていますから、男性でも美しい作品を求めれば、それは女性的なものになると思います。逆に、女性が攻撃的な作品を求めれば、男性的なものになるわけですが、私はどんな音楽を演奏する時でも、そういった意識を離れて、両方の要素が自然に浮かび上がってくるようなものができればと思っています」
取材・文/坂本 信(2010年9月)
最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] 中国のプログレッシヴ・メタル・バンド 精神幻象(Mentism)、日本デビュー盤[インタビュー] シネマティックな115分のマインドトリップ 井出靖のリミックス・アルバム
[インタビュー] 人気ピアノYouTuberふたりによる ピアノ女子対談! 朝香智子×kiki ピアノ[インタビュー] ジャック・アントノフ   テイラー・スウィフト、サブリナ・カーペンターらを手がける人気プロデューサーに訊く
[インタビュー] 松井秀太郎  トランペットで歌うニューヨーク録音のアルバムが完成! 2025年にはホール・ツアーも[インタビュー] 90年代愛がとまらない! 平成リバイバルアーティストTnaka×短冊CD専門DJディスク百合おん
[インタビュー] ろう者の両親と、コーダの一人息子— 呉美保監督×吉沢亮のタッグによる “普遍的な家族の物語”[インタビュー] 田中彩子  デビュー10周年を迎え「これまでの私のベスト」な選曲のリサイタルを開催
[インタビュー] 宮本笑里  “ヴァイオリンで愛を奏でる”11年ぶりのベスト・アルバムを発表[インタビュー] YOYOKA    世界が注目する14歳のドラマーが語る、アメリカでの音楽活動と「Layfic Tone®」のヘッドフォン
[インタビュー] 松尾清憲 ソロ・デビュー40周年 めくるめくポップ・ワールド全開の新作[インタビュー] AATA  過去と現在の自分を全肯定してあげたい 10年間の集大成となる自信の一枚が完成
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015