2010年、“DO10!”と銘打った怒濤の活動を続ける
monobright。彼らの3rdアルバム
『ADVENTURE』は、その名のとおり、音楽的冒険心を詰め込んだ刺激的な一枚だ。さらに本作発表と同時に、来年春にリリースする4thアルバムのダイジェスト盤を配布するという無謀な企ても発表。全力疾走する4人の明日はどっちだ!?
――デビュー3年目にして、3作目が完成。ずいぶん早いペースですが、振り返ってみてどうですか?
出口博之(b) 「ずっと突っ走ってきたけど、とくに今年に入ってから全員の意識が揃ってきましたね。どこに向かって走るのか、同じところを見て進めてる感じがします」
桃野陽介(vo、g、key) 「なんか2010年って、音楽が変わる時代だという気がするんですよ。突出したブームがあるわけでもなく、メジャーなものが売れるという法則もなく、フラットな意識で音楽と向き合える時代だなと思うし」
――いい時代だと思いますか?
桃野 「うん、そう思います。新しいことを迷いなくやれるから。バンドマンはみんなそう思ってるんじゃないかな。その中で僕らは、今の時代のポップを見つけたいと思うんです」
――monobrightにとってのポップとは?
桃野 「僕の中では、ふたつの定義があって。まずひとつは、大衆に好まれるポピュラー音楽としてのポップ。わかりやすくて、人にすぐ伝わるもの。もうひとつは、音楽を好きすぎてポップになっちゃったもの。
ビートルズや
トッド・ラングレンや
XTCのように、音楽が好きで好きで、コアなことやろうとしすぎるあまり、ひっくり返ってキャッチーなことをやってるポップ。僕らはその両方の要素を混ぜ込みたいんです」
松下省伍(g) 「ポップって、その時代を生きる人たちが感じ取るものだと思うんですよ。政治にしろスポーツにしろ、大きな話題になるものは、そのジャンルに興味なかった人たちまで引きつける力がある。僕らもそんな力を持った音楽を作りたい。でなきゃメジャーでやる意味がないと思うんですよね」
――時代に作用するポップというと……今は「不況」と言われていますが。
桃野 「そう、今回のアルバムが今までと決定的に違うのは、ネガティヴさを取り入れたことなんです。今の時代って、ネガティヴな気分や、屈折したものに共感する人が多い気がして。今回はネガティヴをポップと捉えたわけです」
――確かに今は、ネガティヴなムードが主流かも。
桃野 「でも、僕自身は超ポジティヴな人間なんですよ。幸せな家庭で育って、反抗期もなかったし、なかなか心が折れないし(笑)。この前向きな人間がどんなにがんばっても、マジなネガティヴにはかなわない。だから、自分なりの自然なネガティヴさを出せたらいいなと」
――今の時代、桃野さんのような人は貴重だなあと思いますけど(笑)。その“自然なネガティヴ”をどうやって音に落とし込むんですか?
瀧谷翼(ds) 「桃野のデモからイメージするものを全員で出し合っていくんですけど、いつも試行錯誤しながらですね」
――例えば「2010年のKOZOO」とか、いろんな音が混沌と混ざり合っていて、どうアレンジしたのかよくわからないんですけど……。
全員 「あははは!」
桃野 「この曲はビートルズの<ハニー・パイ>のイメージなんです。気が抜けてるのか抜けてないのか判断しかねるような、不思議な存在感のある曲にしようと思って、レコーディングではいろんなことを試しました。ドンキホーテで買ってきたおもちゃ楽器を鳴らしたり」
出口 「赤ちゃん用のトランペットを吹いたりね。スタッフも呼んで、狭いブースに8人ぐらい入って“せーの”で音を鳴らして。桃野はなぜかバンジョー弾いてたし」
桃野 「うん。あと僕は、吹くと紙が伸びる笛を、すげーいいポイントでビーーー!!! って吹いてる(笑)。とにかくアレンジは冒険をテーマに、思いもよらない方向へ変化させていきました」
――アルバムの中で、冒険の第一歩となった曲は?
桃野 「<雨にうたえば>ですね。6分以上のポップ・ソングをあっという間に聴かせる方法はないか、バラードだけどノレる曲は作れないかって手探りしながら、究極の変化を詰めこんだ曲。最近microKORGというキーボードを買って、それで作ったのも大きな変化です」
――その結果、正攻法の歌ものに着地したというのがおもしろいですね。そもそも変化球ばっかり投げるバンドだから、歌ものを出すと新鮮に思える。
桃野 「そうそう、僕らは初めからイメージの固まらないバンドだし、周囲も変化を期待してくれるから、このアルバムができたんだと思います。何しろmonobrightっていうバンドの全体像を伝えるのは、時間がかかるんですよ。この『ADVENTURE』だけじゃ伝わらないし、これからの音楽を聴いてもらうことで見える本質があるから、時間をかけて僕らを伝えていくしかない」
Photo By 橋本塁
――もうすでに次なる4thアルバムの発表が予告されていますが、それもバンドの全貌を伝えていく手段?
桃野 「というか、次のアルバムも聴いてもらわないとmonobrightを伝えきれないんです。でもね、どの曲がきっかけでもいいから、とにかくいろんな人に僕らの音楽を聴いてほしい。なにしろ音楽に興味ない人の耳に届けるのが、一番むずいんですよね。ああもう、コンビニでもどこでもいいから、どっかで出会ってくれよ! 出会えよ!! って言いたい(笑)」
出口 「そういう意味では、バカみたいにシングルを切りまくるとか(笑)、そういう突飛なアプローチもアリかなと思う。そうやって動いていけば、きっと誰かの目にとまるだろうし」
――そういう無茶って若いバンドしかできないと思いますしね。まあこれから、たいへんだと思いますけど。
全員 「あはははは!」
――過密スケジュールだと思いますけど、4枚目も楽しみにしています。
全員 「ありがとうございます!(笑)」
取材・文/廿楽玲子(2010年9月)