最近ますます旺盛な活動を展開しているピアニスト、
スガダイローの新作
『渋さ知らズを弾く』は、彼自身もメンバーの一員である“
渋さ知らズ”の楽曲を採り上げた作品だ。
東保光(b)、
服部正嗣 (ds)とのトリオ、そこに渋さのダンドリストで作曲者の
不破大輔(b)が参加したカルテット、さらにに
竹内直(ts)と後藤篤(tb)が加わったセクステット、そしてピアノ・ソロ。さまざまな編成で、スガダイローは渋さ知らズの曲を自分なりの解釈で提示してみせている。
――スガさんにとっての、渋さ知らズの音楽の魅力はどういうところにあるのでしょう? スガダイロー(以下、同)「力があってシンプルなメロディの魅力ですね。それを自分なりのやり方で演奏したかった、ということです。コードもシンプルなんですが、それを多少複雑にしつつもメロディの強さは残したいと思ったんです。まあ、スタンダードを自分の解釈で演奏するのと同じかもしれませんね。スタンダード集を出してもいいんだけど、果たしてそれは売れるのか? と(笑)。どうせ自分の好きな曲をやるんだったら、売れた方がいいですからね」
――トリオ以外に2管が入っている曲やソロのトラックがありますが。
「実は次の目標として、2管のクインテットを組織しようと思っていまして、その予告編的な意味もあるんです。いろいろメンバーを変えて試みているんですが、これもそのひとつです。楽器の組み合わせもいろいろやっていて、そのうち固まっていくと思っています」
――不破大輔さんご自身もベーシストとして参加していますが、彼のベースはどうですか。
「不破さんはベーシストとして魅力的ですね。何やってるのかよくわからないところがいいんです(笑)。僕はベーシストはそういうタイプが好きでして、従来のジャズ・アンサンブルに求められるベース・パートの役割ではなく、“何なんだこれは!”みたいな刺激がほしいんですよ。ベーシストって、真面目な人が多いので、きちんとリズムをキープしてサウンドの下をがっちり構築することが多いんですね。そうなると、こっちもちゃんとコードを弾かなくては、と思っちゃう」
――ところで、荻窪ベルベットサンでの7夜連続デュオ・セッション(9月3〜9日“スガダイロー七夜連続七番勝負”1日目から順に、志人、松下敦、U-zhaan、山本達久、本田珠也、七尾旅人、The Sun calls Starsとセッション)はどうでしたか? ジャズありロックありインド音楽あり、という人選はどうやって決めたのでしょうか。 「俺が決めた人は一人もいないんですよ。誰がどうやって決めたのかなあ(笑)。初めて演奏する人がほとんどでしたけど、白髪が増えましたね(笑)。ツイッターで“全員血祭りに上げてやるわ”なんていうツイートをしていたのがばれたのか、みんな本気でつぶしにかかってきましたからね(笑)。みんなすごい人たちだから、なかなか大変でした」
――しかしこれだけ集中して即興のセッションをやることは珍しいですよね。
「若いうちじゃないとできないのかもしれない(笑)。毎日違うやり方で演奏できたので、それはおもしろかったですね。再戦したい相手? 全員再戦してもいいよ」
“七番勝負”タブラ奏者のU-zhaanと(9月5日)
――異種格闘技戦みたいなセッションといえば、スガさんの師匠である山下洋輔さんが先駆者ですね。 「山下さんは性格的に、いろんな人と出会うことが好きなんじゃないかな。俺はどっちかというと苦手なんですよ。友好的じゃないというか(笑)、人見知りするほうなのかな」
――スガさんの音楽って、フリー・ジャズと銘打っていても、実は細かく構成されてますよね。
「けっこうそうなんですよ。ここはこういう風に散らかしたいとか、ここはまとまりたいとか、そういうイメージを考えてますね。管楽器入りのバンドを組むときも、こっちの想定内の散らかり方をしてくれないと、という気持ちはあります。そこでは自分の曲をやるつもりです」
――管楽器が入ることで、“スガダイローの音楽”がよりくっきりと聴き手に提示されそうですね。楽しみにしています。
取材・文/村井康司(2010年10月)
<スガダイロー『渋さ知らズを弾く』発売記念ライヴ>●第二弾2010年10月16日(土)
会場:東京・荻窪velvetsun
[出演]
trio +1
スガダイロー(p)、東保光(b)、服部正嗣(ds)
special guest 不破大輔(b)
●第三弾2010年12月25日(土)
会場:東京・荻窪velvetsun
[出演]
trio and more
スガダイロー(p)、東保光(b)、服部正嗣(ds)、竹内直(ts)、後藤篤(tb)
special guest 不破大輔(b)
詳細・問い合わせ:荻窪velvetsun [URL]
http://velvetsun.jp