――3曲で一つの世界観が感じられる、完成度の高いシングルになりましたね。
YUKA(以下、同)「いい感じに統一されてると思うし、表われてる感情のふり幅もいい具合になりました。全体的なイメージを大事にしよう、っていうのは制作前から考えていたんですよね。3曲ともシングル級なんだけど、一つの作品としても成立している作品を作りたいと思って。<スカイハイ>から作っていったんですけど、そこを基準にして“上がるところはここまで”“ゆったりするのはここまで”っていう幅を決めたんです」
――正確なプランニングがあった、と。そうすると“ゆったり”が「moonlight」ということですよね?
「そうですね(笑)。この曲に関しては、<Sunshine Girl>で私たちを知ってくれた人が、“あ、この人たち……”って思ってくれるようなものにしたいと思っていて。moumoonの切ない感じもあって、恋してるときの高揚感も感じられてっていう。ここまでロマンティックな方向に行くとは思ってなかったんですけどね、最初は」
――「moonlight」っていうタイトルも、ちょっとロマンティックですよね。
「これはわりと最初から決めてたんです。月明かりの下で、女の子がくるくる踊ってるようなイメージがあって。好きな人のことを思いながら上機嫌になってる帰り道だったり。“恋愛にどっぷり”ではなくて、いい感じの軽さが欲しかったんですよね。音楽に酔えるような雰囲気も、ちゃんと出せたんじゃないかなって」
――“日常のトリップ”です、この曲は。「スカイハイ」も軽やかなイメージですよね。心地よくハネたリズムが印象的でした。
「リズムのテイストだったり、コードの感じ、ピアノの使い方、コーラスの重ね方なんかを、MASAKI君(作曲/サウンド・プロデュースを手がける柾 昊佑)としっかり話してたんですよ。そこを共有できれば、そのまま一緒に走りやすいというか。それが上手くいった曲ですね。あとは“聴いていて、気持ちがスッキリする曲にしたい”ってことだったり」
――「嘆きのダークチェリー/喜びのスターフルーツ/めいっぱい頬張って 人生を味わおう」という歌詞がすごくいいな、と。こういう比喩って、楽曲の世界観をきちんと把握していないと出てこないですよね、きっと。
「比喩を考えるのが好きなんですよ(笑)。何て言うか(楽曲の)主人公を置いているっていうのが大きいのかもしれないですね。私自身のことを書こうと思ったら、もっとトゲトゲしていて、鋭い言葉が出てくると思うんです。それはこういう可愛らしい曲には合わないなって。逆に“この曲だったら、自分の感情が描ける”っていうこともありますけどね」
――なるほど。「YAY」はどんなイメージで制作してたんですか?
「女の子が元気になれる、踊れる曲になったらいいなって。主人公の、『嫌いなところもあるんだけど“まるごと全部愛してみる”“全てをかけて臨んでみる”』っていうのも、わりと攻めの姿勢だなって思うし。軽やかなんですけど、そのなかにあるメッセージって、じつは切実なんですよね」
――そうですよね。サウンド的には打ち込みと生楽器のバランスがすごくいいな、と。
「それはもう、MASAKI君のこだわりですね。基本的には“生”が好きなんですけど、この曲に関しては打ち込みと生のギター、ベースがいい感じに融合していて。フレーズも懐かしい感じだったりするんですよ」
――moumoonの魅力がさらに広く伝わるシングルだと思います。
「いま、たくさんの人に聴いてもらえる状況がありますからね、ありがたいことに。そのぶん“次は何をやればいいんだろう?”っていっぱい考えて、悩んで、眠れないこともあったんですけど、作ってるうちに“悩む必要ないな”って思えたんですよね。自分たちが“いいのが出来た”って思えれば。それはきっと、みんなにも届くと思うし。私、マスタリングやってるときにずっとニヤニヤしてたんですよ、“あ〜いいなあ”って(笑)。みんなにも気に入ってもらえると嬉しいですね」
取材・文/森 朋之(2010年10月)