【HIDE-HIDE】 ロシアで大ブレイク中! ハイブリッドな尺八&三味線ユニット

HIDE-HIDE   2011/05/13掲載
はてなブックマークに追加
 尺八と中棹三味線で西洋のクラシック、映画音楽、オリジナル曲などを演奏するユニット、HIDE-HIDE。全曲クラシックの名曲でまとめた最新作『音呼知新』は、邦楽器と“五線譜に書かれた音楽”の融合にとどまらない、エモーショナルな音楽性とオリジナリティが印象的だ。昨年3月、ロシアのサンプトペテルブルクで開催された“TEREM CROSSOVER first international music competition”において優勝し、今年4月にはロシア8都市を回る単独ツアーを成功させた注目の存在である。
――新作『音呼知新』は、クラシックの美しいメロディ、キャッチーなメロディを生かしながら、HIDE-HIDEのオリジナリティが前面に出ています。原曲は古典、響きも伝統楽器のものなのに、現代的な音楽となっているところが印象に残りました。HIDE-HIDEの活動を始めたとき、どんな方向性を考えていたのですか?
尾上秀樹(以下、尾上)「僕はもともと、三味線で日本の伝統的な音楽をやりつつ、自分で曲をつくったり、琴やピアノと演奏したりしていました。石垣君とは出会ってすぐに意気投合して、自分でつくった三味線のカラオケ演奏に、“うまいこと尺八を乗っけて”みたいな感じで活動が始まりました。古典を変えようとかいう発想ではなく、古典を織り交ぜようという意思はもちろんありますが、僕たち二人で今までになかったものができないかというところが原点です」
――和楽器によるクラシックの演奏は、聴き慣れたメロディが新鮮に聞こえます。ラフマニノフの交響曲第2番は情感に満ちて、美しいですね。
石垣秀基(以下、石垣)「西洋の楽器と同じような意識でクラシックを演奏しても、意味はないと思っています。僕が思う尺八のいちばん生きるところは、歌心です。単音楽器なので、どうやっていいところを出すかというと、歌心なんですね。クラシックのメロディも、原曲のイメージに沿って吹くというよりは、歌うとしたらどうするだろうということを意識しています」
――尾上さんは、一時期、ビジュアル系のバンドでベースを弾いていたそうですね。HIDE-HIDEの音楽に影響しているところはありますか?
尾上「演奏していてうれしいのは、お客さんやミュージシャン仲間に“三味線にベースのフレーズが出てくるところがあるよね”とか言われることです。意図的にやっているところもあるし、ベースを弾いていたことで自然と醸し出されている部分もあるようですね。ヴィヴァルディの〈冬〉では、三味線用語で“スリ”というスライド奏法を使っています。ふつうは繊細な感じの響きを伸ばす弾き方ですが、あえて太い糸で、ベースでいうスライド、ギターでいうグリッサンドのように激しく擦ることによって、アグレッシヴな表現にしています」
――チャイコフスキーの「弦楽セレナーデ」など4曲は、モスクワでオーケストラと録音していますね。
石垣「オーケストラとコンサートで演奏することや、オーケストラに後から乗せる録音はありましたが、一緒に録音したのは初めてです。ブースがあって、生のオーケストラがいて、指揮者が振ってというところで録音できるということに興奮しました。尺八って気持ちが前に出る楽器だと思うんで、自分の興奮している気持ちも録音に乗ったと思いますし、いい経験ができました。ほかの曲も、その後に日本に帰って来てから録音したので、気持ちが乗ったと思います」
――初のロシア・ツアーは大きな反響があったそうですね。
尾上「アレンジャーのかみむら周平さんと3人での、まさかの単独ツアーで、ほとんどの会場が、歴史と格式のあるクラシックのホールなんですよ。大盛況でした。会場によっては“クラシックのホールに初めて来たんじゃないか?”というような若い方が過半数で、CDを買ってくれて、サイン会に並んでくれました」
――どういった点がロシアで支持されている理由だと思いますか?
石垣「2ndアルバム(前作)の『nostalgia』はロシアの作曲家、ミカエル・タリヴェルディエフの作品集です。ロシアでは有名な映画音楽の巨匠で、大人から子どもまで知っているんですね。コンクールでもコンサートでも、クラシックの曲とともにタリヴェルディエフの曲をやったことで、親近感を覚えてもらえたと思います。ロシアのコンクールで優勝しているということで、安心感もあったのではないでしょうか。それに、ロシアの人は日本の文化、音楽、さまざまなものに興味があるんです」
――ロシアでのコンサートはどのような内容だったのですか?
尾上「16曲のプログラムで、8曲が新作『音呼知新』から。3曲くらいが2ndの『nostalgia』からで、オリジナルや〈ソーラン節〉、楽器紹介の時間もとり、2時間くらいやりました。日本でやっているのと同じように手拍子をあおったら、すごいグルーヴでしたね」
――来年もロシア・ツアーが予定されているそうですね。
石垣「今回は、そもそもお客さんが集まるかどうかもわからない状態で行きましたが、温かく迎えてくれました。僕たちの音楽や、大切にしている歌心が、ロシアの人にも通じたんだと思います」
取材・文/浅羽 晃(2011年4月)


■HIDE-HIDE CD発売記念コンサート『音呼知新』
5月20日(金) 19:00 東京・十字屋ホール

※詳細はHIDE-HIDEオフィシャル・サイトへ。
http://www.hide-hide.net/
最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] 中国のプログレッシヴ・メタル・バンド 精神幻象(Mentism)、日本デビュー盤[インタビュー] シネマティックな115分のマインドトリップ 井出靖のリミックス・アルバム
[インタビュー] 人気ピアノYouTuberふたりによる ピアノ女子対談! 朝香智子×kiki ピアノ[インタビュー] ジャック・アントノフ   テイラー・スウィフト、サブリナ・カーペンターらを手がける人気プロデューサーに訊く
[インタビュー] 松井秀太郎  トランペットで歌うニューヨーク録音のアルバムが完成! 2025年にはホール・ツアーも[インタビュー] 90年代愛がとまらない! 平成リバイバルアーティストTnaka×短冊CD専門DJディスク百合おん
[インタビュー] ろう者の両親と、コーダの一人息子— 呉美保監督×吉沢亮のタッグによる “普遍的な家族の物語”[インタビュー] 田中彩子  デビュー10周年を迎え「これまでの私のベスト」な選曲のリサイタルを開催
[インタビュー] 宮本笑里  “ヴァイオリンで愛を奏でる”11年ぶりのベスト・アルバムを発表[インタビュー] YOYOKA    世界が注目する14歳のドラマーが語る、アメリカでの音楽活動と「Layfic Tone®」のヘッドフォン
[インタビュー] 松尾清憲 ソロ・デビュー40周年 めくるめくポップ・ワールド全開の新作[インタビュー] AATA  過去と現在の自分を全肯定してあげたい 10年間の集大成となる自信の一枚が完成
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015