これまでインディで2枚のアルバムを発表し、注目を集めてきたロックバンド、
ふくろうず。内田万里(vo、key)、石井竜太(g)、安西卓丸(b、vo)、高城琢郎(ds)の4人が作り出す、独特な歌詞の世界観とメロディアスかつひねりの効いたサウンドは、一筋縄じゃいかない魅力を放ちまくっている。そんな彼らが3rd アルバム
『砂漠の流刑地』で、ついにメジャー・デビューを果たすこととなった。ロック感、ポップ感、サイケデリック度を増した楽曲の数々は、とにかく謎めいたエナジーが渦巻いているのだ。それでいてキャッチーというのがたまらない。アルバム『砂漠の流刑地』の話題を中心に、聴けば聴くほどクセになる、ふくろうずの音楽の魔力(!?)について、紅一点の内田万里に話を聞いていこう。
「私が歌詞を書くようになったのはもしかしたら岡村ちゃんの影響なのかもって、昨日くらいに思いました」――まずは、2007年にふくろうずが結成されたきっかけから聞かせてください。
内田万里(以下同) 「大学生の頃に遊びでやってたコピー・バンドが始まりなんです。ベースの安西に誘われて、就職までやるかってノリでした。私には生まれて初めてのバンドで、誰ひとり友達じゃないし、年もバラバラだし、突然誘われたって感じで。まさか、曲を作ったり歌をうたうとは思ってなかったんです」
――でも、バンドの作詞作曲は内田さんですよね(笑)。
「みんなで曲を作って持ち寄ろうって約束したときに、私しか作ってこなくて。それで私の担当になったんです」
――落とし穴にハマったような感じというか(笑)。内田さんが音楽で影響受けた人は?
「大学の頃は音楽をまったく聴かなかったんです。でも最近思い返してみたら、中3から高1の頃まですごく
岡村靖幸にハマってたんです。 <砂漠の流刑地>って曲で“オーライ”“カモン”っていってるのは岡村ちゃんが染み込んでたのかなって。私が歌詞を書くようになったのも、もしかしたら岡村ちゃんの影響なのかもって、昨日くらいに思いました」
――(笑)。大学卒業したら終了かもってバンドが、ここまで続いた理由というのは?
「結成して1ヵ月くらいで、適当に作った曲が、たまたまあるレコード会社の人の目に留まって声をかけられたんです。こんなに適当にやってても声がかかるならイケるんじゃないかって、勘違いして続けちゃったんです」
――“余裕でデビューできる”くらいに思ってしまったと(笑)。
「ハイ、甘かったです。引っ込みつかなくなって、ここまでこぎつけた感じです」
――バンド活動に楽しみを感じたというのもあるんじゃないですか。
「私、部活も一切入ったことないし、体育もずっとサボり続けてて、集団行動をしたことがないんです。ホント、生まれて初めて人と何かやったのがこのバンドで、それなりに楽しいなって。でも、みんな集団行動苦手な人たちなんで、会話もないんですよね」
――“こうしよう”とか“いい曲できたね”とかも?
「まったくないです(キッパリ)。たぶん、みんな新鮮なんですよ、ずっと人といるのが」
――いってみれば、同じバイブスの人たちだからこそバンドとして成り立ってると。楽曲制作は、内田さんが持ってきたものをみんなでスタジオで広げてく感じですか?
「ハイ。私、楽器を使って曲を作らないので、鼻歌なんです。そのときに(頭で)楽器が聴こえれば伝えるし、聴こえなかったらピアノと歌で伝えます」
――歌詞は、どの段階でできるんですか。
「大体、同時です。もっと歌詞で言いたいことがあればメロディやアレンジを変えたりします。普通の曲作りというのが分からないので、他の人たちとはちょっと作り方が違うと思います」
――ふくろうずの、音楽への一番のモチベーションって何だと思います?
「レコ−ディングのたびに悔しい思いをするので、それを次に活かせたらなってことかな」
――あ、作品ができた喜びよりも悔しさが上回ると(笑)。
「クソーと思いますね、毎回。悔しさが続けてく原動力になってます」
――(笑)。そんな個性的なふくろうずのメジャー・デビュー・アルバム『砂漠の流刑地』ですが、どんな作品を目指したんですか。
「ちゃんとバンドっぽいものにしたかったんです。バンドのまとまりは今までで一番あるし、アレンジも一番しっかりしてると思います」
――以前は、作品全体に繊細さを感じたり、音も綺麗な感じでしたが、今回はパワフルさもあるし、グチャッとサイケ投入って感じがしますけど。
「ずっとこういうことがやりたかったけど、今までできなかっただけなんです」
――やりたいことができるくらい、バンドのスキルもアップしたと。
「スキルアップというより、せっかくバンドでやるなら、バンド・サウンドじゃなきゃ意味ないし。そうじゃなきゃ、ひとりでやればいいと思うようになって。今回のアルバムはバンドらしいものになったので今までで一番満足してます」
――曲作りやレコーディングで、他のメンバーとはどんなやりとりがありました?
「本当に喋らないんですよ。最近やっとみんな喋るようになってきたけど、きっと、そろそろ本気出さないとヤバいなと思いはじめたのかも」
――みんな“A.T.フィールド”強めだと。
「もう“A.T.フィールド全開!”です。でも自分を誰にも触れさせないぞってことじゃなくて……単純に何考えてるか分からない系なんです。ギターの石井は、ほーんとに変わってて、枠にはまらないから変さを説明できないんですよね。奇行が目立つとかだったら、ある意味、分かりやすいじゃないですか? でも、そういうのとも違っていて。この間も、<砂漠の流刑地>のPV撮影でギターを蹴飛ばすシーンで足を骨折したんです。それもリハーサルでですよ。リハで骨折するほど思いっきりギター蹴る必要ないですよね。全体的にそんな感じです」
――アハハハ、行動が読めないと(笑)。
「ホント分からないので、普通の会話は無理。しかも根が暗いわけでもなく、どちらかというと明るいんで余計謎なんです」
――曲で、ギターがメチャクチャ炸裂してるときの感じが近い(笑)?
「ですね。あの変な感じは、もっとギターにぶつけることができそうだなと思います」
――じゃあ、安西さんは?
「安西は、スイーツ女子ですね。突然ヒステリー起こす感じです。甘いもの好きで、クリームブリュレの表面がこげたのを作ってきて対バンの人に配ったり。しかも、カラメルを別皿で持ってきてたんですよ。最近やってくれないんですけど」
――あ〜、忙しくなっちゃったからですかね。
「いや、飽きたんだと思います」
――そこら辺も女子的だと(笑)。では、高城さんは?
「ちょっと足りない感じ……(笑)。すごくいい絵を描くんですけど、それが神様からのギフト的な色彩感覚なんですよね」
――でも、意思疎通が取れなくて揉めたりしないんですか。
「あまりにまとまりがないし、喋らないので、他のバンドみたいにメンバー間で争うようなことは起きないんです。ただ、私が新曲作ってきても何も言われなくて。それが25曲くらい続くと腹が立ってキレることはあります。そうなると、それぞれが家で反省してくるみたいで」
「内向的なバンドだったので、メジャー・デビューをきっかけに、もうちょっと外に意識を向けられるバンドになっていきたい」――いや〜、すごいバンドですね(笑)。さて、アルバムはかなりバラエティに富んだ曲が収録されています。1曲目の「もんしろ」はポップで勢いのある感じで、“さすらい続ける蝶になる”という歌詞から、バンドのこれからのスタンスを感じますが。
「あんまり詩的な歌詞を書けなくて、今の現状を歌詞にするしかできないので、赤裸々な感じ、率直な日記みたいな歌詞だと思います」
――アルバム・タイトル曲の「砂漠の流刑地」はアンニュイなメロディのミッド・チューンですが、歌詞では一途な恋を歌ってますね。
「たぶんそんなことがないから、逆に言いたいんだと思います。歌詞は過去形なんですよ。そういうときもあったなって一場面を切り取る感じで。この曲は好きですね、よくできたなと思います」
――アルバムの全体的に歌詞は、自分探しや愛がテーマになっている曲が多いですよね。
「適当に書いてるんですけど、普段どこかで思ってないと言葉は出てこないから、ぼんやり考えてることを歌ってるんだと思いますね。生き方みたいなのを考えるのが好きなんで、そういうものが自然と出るのかも。でも想像力なさ過ぎるので、次はもっと想像力ある曲を書こうと思っています」
――今でも、十分、想像力を感じる歌詞だと思いますよ。
「いや、もっと恐竜が出てくるようなのを書きたくて」
――あ、スピルバーグ的な(笑)。
「そうそう、SF的なのが書きたいですね〜」
――「スフィンクス」って曲もあるけど、現実にあるものじゃ足りないと(笑)。あと「心震わせて」は、男女デュオで歌うシンセ・メインの80s感あるポップな曲ですね。
「安西と一緒に歌ってるんですけど、ライヴでお客さんから“もっと安西さんに歌わせてください”って言われて、そうしたんです」
――ファンのリクエストにお応えしたと(笑)。
「ハイ。ウチのバンド、お客さんのリクエストにかなり応えるので、ライヴ中に言われたら実行します。これ、書いといてください」
――了解しました(笑)。あと「みぎききワイキキ」は爽快なギター・ポップからひねって爆発する感じがいいですね。
「変な曲にしようって作ったんです。こういうのがやりたかったんですよ。ひとりじゃできないし、ギターが頑張らないとできないので」
――ギターの石井さんが、ついに頑張ったと。あとメロトロンの入ったドリーミーなサイケデリック感のある「ユニコーン」は
會田茂一さんがプロデュースです。
「會田さんは面白い方でした。ギターをどうしようかってときに、必ずハマるギターを提案してくれるし、勉強になりましたね」
――多くの曲は、これまでも一緒にやってきた
ROVOの益子樹さんがプロデュースを手がけてますね。
「ずっとやってもらってるので意思の疎通はできています。スタジオの近くにジョナサンがあって、益子さんは、ステーキとビーフシチュー・オムライスを交互に食べてました」
――いきなり食べ物の話が(笑)。
「私は、ステーキとハンバーグを交互に食べてました」
――アミノ酸たっぷりなレコーディングだったと(笑)。
「私、とにかくお肉が好きなんですよ! 肉類なんでも好きですねぇ。美味しければどんなお肉でも食べたいです」
――意外な感じですね〜。生肉もガンガン食っちゃうぞと(笑)。
「ハイ! でも今、ユッケの事件で刺しが置いてなくて探して食べてます、生肉。好きですね〜お肉、ホントに。あ、よだれが(笑)」
――最高の笑顔してますよ(笑)。でも、音の爆発感は肉っぽいけど、歌詞や歌にはお肉感はあまりないですね。
「そうですか。でもお肉食べないと、テンション上がらないですよね。私、テンション上がることが好きなんですよ」
――じゃあ、歌うこともテンションが上がることのひとつですか?
「上がらないんです(あっさり)」
――あら(笑)。
「歌うことは、今はあまり好きじゃないから、お肉感が出てないのかな? いつか歌うことが好きになれたら、岡村ちゃんばりに歌いたいですね」
――期待してます(笑)。とはいえ、今もかなり独特な歌い方ですが。
「ホントに自分の歌が嫌で、もっと滑舌よくなりたいんです。でも、これでしか歌えなくて」
――あ、一番ストレートな歌い方なんですね。
「そうなんですよ。わざとこうやって歌ってるわけじゃないんです。でも狙ってやってるわけじゃないからまだいいのかなって。他のメンバーも誰も何も狙ってないんですよ。いつかそれが、ちゃんとした1つの狙いみたいになったらいいなと思います」
――では、フル・アルバム『砂漠の流刑地』が完成して、どんな感想がありますか。
「いつも“自分が中学生だったら買うかな?”というのが基準になってるんですけど、どうかな? ジャケットがインパクトあるし、試聴機で<砂漠の流刑地>を聴いたら買うと思います」
――バンドとしては、これからどんな風になっていきたいですか。
「内向的なバンドだったので、メジャー・デビューをきっかけに、もうちょっと外に意識を向けられるバンドになっていきたいです。とにかく曲を作って盤を出したいですね。ライヴは大嫌いだけど、早く好きになれるように頑張ります。ライヴもただやってるだけだったので、いろいろ自覚を持ってやろうかなって。外に向かっていくようなライヴをします」
――あとさっき、“テンション上がることが好き”といってましたが、お肉以外でテンションが上がるものは?
「マンガを読むのが好きですね。とにかくテンションが上がります!」
――じゃあ、音楽聴いてテンション上がることは?
「無いですね〜」
――アハハハ。ちなみにどんなマンガが好きですか?
「なんでも読むけど、昔の漫画が好きですね。最近『14歳』を読み返してホントいいなって。くだらないのも読むし、『まんカス』とか最高にテンション上がるし、今は『ギャグマンガ日和』を読み返してます。『美味しんぼ』も大好きだし、少女漫画も大好きだし、『カイジ』も『グラップラー刃牙』のSAGA編もたまらないですねー」
――じゃあ『空手バカ一代』とかも読んでほしいなぁ。
「読んでます! いいですね〜」
――読んでましたか(笑)。
「(嬉々として)『ジョジョの奇妙な冒険』の新しいシリーズ(ジョジョリオン) も始まってうれしいです。あとアニメも好きなんですよ。最近のよりも『パトレイバー』とかが好きですね。大学の頃、『SF研究会』に入ってたんです。ひたすらみんなでガンダムを見まくるっていう。楽しかったな〜」
――止まらないですねー(笑)。ちなみに、ガンダムだと、どこら辺が好きですか。
「やっぱり『ファースト』『Z』。『ZZ』も後半は。あと『逆襲のシャア』。最近のだと『SEED』も好きでしたね。あ、アルバムに入ってる<ユニコーン>って曲はガンダムからイメージした曲です! モビルスーツも好きで、ジオングが一番好きなんですよ。デカいの好きなんですね〜。ビクザムもアッガイも好きです。やっぱり連邦じゃないんですよ、ジオン軍の方が好きなんですよね〜(以下、取材終了後まで延々と)」
取材・文/土屋恵介(2011年6月)
【ふくろうず ワンマン・ライヴ情報】
<そうだ! 人生はワンマンだ>
日時:7月17日
会場:渋谷 CLUB QUATTRO
時間:開場17: 00 / 開演18:00
料金:前売 税込3,000円
問い合わせ:HOT STUFF 03-5720-9999