日本を代表するインスト・レゲエ・バンドとして、そして、めくるめくさまざまな音楽的要素を自在に取り入れリトルテンポ節として圧倒的な演奏力とエンタテインメントと音楽熱で日本中のフェスや祭りには欠かせないライヴ・バンドとして君臨している
リトルテンポが、3年ぶりの新作
『太陽の花嫁』をリリースした。
前作
『山と海』では、オトナのアダルティなバンド的アンサンブルを披露し、貫禄を感じさせてくれていたのだが、この新作『太陽の花嫁』では、リトルテンポ初期の印象、そう、まるで
UB40の初期のような、センチメンタルで内省的でありながらも、全体としてはハートウォーミングで優しい感じというか、(もちろんリトルテンポにはこのような魅力はいつもあるのではあるが……)しかも、今作ではリトルテンポ初の打ち込みトラックも4曲収録し、今までになくエレガントな味わい深さとフレッシュさを見事に感じさせてくれるアルバムとなっているのだ。
ライヴではおなじみだったアフロ・キューバンなオールドスクール・ラテンのスタンダードである「南京豆売り」のリトルテンポ流カヴァーにはじまり、
大野由美子をゲストに迎えてサンシャイン・スティール・オーケストラのクラシカルなアンサンブルを見事に聴かせてくれている「月光」、ブルーノート仕様のキュートなロックステディ「トワイライト・ダンディ」に、デスカルガみたいなキューバン・ジャム・セッションも感じさせつつのスティール・ギターむせび泣きのオヤジ哀愁艶歌「ブラジリアン・サマー」や、はたまた往年の
ribbonを思い出すかのような、ぜひともアイドルに歌ってもらいたいメロディカ&スティール・パンがセンチメンタルに歌う、歌謡ラヴァーズの王道インスト「ときめき☆リダイヤル」などなど、バラエティ豊かでありながらもアルバムとしての流れと調和もこれまた見事なのである。
『太陽の花嫁』というアルバム・タイトルも、まずは、「この言葉の響きを聞いただけで幸せになれそうだよね」という温かく優しい響きと意味、そして、そこに込められた思いを深読みしようとすると、未来への希望や命の源、そして次の世代の子供たちへ捧げられたリトルテンポからのメッセージにも思えてきて、より深く音楽が伝わってくるようである。昔からのファンにも、そして今までリトテンを知らなかった新たな聴き手も幅広ーく魅了しそうな、そして長く長〜く楽しめる作品となりそうだ。
リトテンのホームグランドとも呼べる武蔵野の某スタジオにて、リーダーのTICOこと、土生剛さん(steel pan)にお話を訊いてきました。
――新作の完成おめでとうございます。今回のアルバムからは今まで以上に優しい印象を感じたのですが、震災というのはアルバムの内容に影響していますか?
TICO(以下同) 「優しくなったんだよね。歳を経て(笑)。今回のアルバムのデモ・テープを聴いたのは正月のタコ焼きパーティで、その時にほぼイメージが固まってたんだけど、その後の震災、そして今の状況があって……音には多分出ていると思いますね。暗い部分ではなくて、“明るくいきましょう!”という気持ちの部分が特に」
――今回打ち込みを取り入れたのは?
「単純にバンドの録音に飽きたのと、おっさんが9人集まってやるスタイルの中で、今さらなんだけど、“なんか打ち込みオシャレだな! ナウい!”みたいな感じで取り入れてみたんですよね。昔はバンドの人力で昇華しようという目標があったけど、なんか1周したというか。アルバムは、まとめてしまうと、ぶっちゃけコンセプトないし、気負いもなく、流れのままに作っただけなんです」
――今回のアルバムは、今までリトテンを知らなかったような人にも、さらに受け入れられそうな気がするんですが、これからの季節、ラジオとかでもガンガンにかかりそうな気がするというか。TVとかもいけるんじゃないですか? NHK『トップランナー』とか観てみたいですけどね。
「実はトップランナーには昔、10年くらい前に出たことあるんだよね。いやー苦い思い出ですね。その時の司会は大江千里さんと元バレー日本代表の益子直美さんだったかな。で、エイベックスの頃、“癒し系クラブ・サウンド”、みたいな触れ込みで出て……“ダブとは?”みたいな感じで、ウッチー(内田直之)の手元がアップに映されたり、“もーーー、やーめーてーくーれー”的な、終始、“恥ずかしいー”みたいな。そんな感じでした。でも改めて今だったらできることもあるかもしれませんね。ただヴィジュアル的には、もうどうにもならない。みたいな」
(※残念ながらトップランナーは、今年の3月末で定時番組としては現在休止中。リトルテンポが出演したのは番組始まってすぐの、初期2000年の頃でした)
――今回、アルバムのツアーはやるんですか?
「こんなご時世なんで、夏場はそんなに組めなかったけど、また秋からゆっくりと段取って組んでいこうかと。まあ、それでもフジロックとかいくつか入ってきてるから、大きめのとこをやりつつ……最近は、タイとか韓国とかもいいかなー、とか思ってて。アジアの他の国にも行ってみたいんだよね。韓国ではレゲエがアツイみたいで、なんか、
フィッシュマンズがスゲー人気みたいで」
――(編集部)むこうに『空中キャンプ』っていうライヴ・ハウスがあるんですよ。フィッシュマンズの熱烈なファンの方々が作った箱で、日本人のアーティストたちも最近そこでよく演奏してるみたいなんです。
(一同大きくうなずく)
「なんかHAKASEがそこに行ったって話してて、とにかく、アツイ!らしくて……もうモテまくるって話で、カミさんが横にいるのに、女の子たちが両脇腕組んでくるって」
――凄いですねー。それはアツすぎますねー。でも、このアルバムを携えて、リトルテンポには韓国ツアー、ぜひ行ってほしいですね。
「そんときは、HAKASE (元フィッシュマンズ)& FRIENDSでいくから。(笑)ライヴも、常にHAKASEがド真ん中で(笑)」
――絶対観に行きたいです(笑)。
取材・文/コンピューマ(松永耕一)(2011年6月)