naomi & goroと菊池成孔がコラボレーション。温もりと慈愛に満ちたボサ・ノヴァ作品『calendula』を発表

naomi&goro   2011/07/14掲載
はてなブックマークに追加
 もともと、菊地成孔がオーガナイズしたイベントでボサ・ノヴァ・デュオのnaomi & goroに声をかけ、共演したのがこのnaomi & goro & 菊地成孔が誕生したいきさつだ。スタッフが盛り上がって「作品を!」ということになったようだが、まさかこの制作過程で大震災をはさみ、菊地氏もgoro氏も心理的に曲が書けない経験をするとは、誰も夢にも思わなかっただろう。プリファブ・スプラウトのカヴァーで幕を開け、naomiさんの柔らかな「おやすみなさい」の言葉で幕を閉じるこのボサ・ノヴァ作品『calendula』は、「Aquarela do Brasil」では冒頭の歌のパートを菊地氏のサックスが担当したりと、このコラボならではの妙味が味わえる。同時に、とてもクールで素敵な音世界を知るこの大人たちが、期せずして少しだけさらけだした温もりと慈愛も、さりげなく含まれている。互いにゆったりと信頼し合うこの顔ぶれだったからこそ、それが可能だったのか。あの時と空間を封じ込めた本作の味わい深さは、とにかくとても貴重なものであることは間違いない。


――最終曲の「いちばん小さな讃美歌」、菊地さんがこういう曲を書かれるのは意外でした。これはどう出てきた曲なんですか?
菊地成孔「このアルバムは、震災をまたいでるんですよね。いよいよ録ろうか、という時に震災があって。場合によっては中止や延期がある可能性の中で、作っていったんです。録りながら余震がきて中断とか、放射能がやってくるのかしら、とか。エコなアルバムなのに、どんどん環境が汚染されていくなか制作されていく。ある種のアンビバレンツで。で、全然、曲を作る気にならなくなってきて。それはちょっとした、一時的な不全でしたね。今はそんなことないんですが、その時は、いま曲を作って、ましてや歌詞をつけて、人に訴えかけるって何なのと」
――カレンジュラは、アロマやハーブの世界では癒しの花ですよね。goroさんがこれをタイトル曲の名前につけられた理由は?
菊地「goroさんが最初に、花の名前をアルバムのタイトルにするって」
goro「アルバムのタイトルを、まず決めたんです」
菊地「で、僕もアロマとか嫌いじゃないんで、いくつか花の名前の案を出して、みんなで総選挙で決めたの。で、goroさんの曲が一番最後になったから、そのまま、それをタイトル曲にということで〈カレンジュラ〉っていう曲名になったんですよ」
goro「そうですね」
――そうだったんですね。一方で今回の菊地さんの選曲の基準は“80年代のチャラい曲”だったそうですが、それはどうしてだったんですか?
菊地「ボサ・ノヴァで意外なカヴァーって、もう出尽くしているんですよね。ヘヴィメタもグラムもビートルズも、ありとあらゆる曲が出尽くしている。ボサ・ノヴァとジャズは、カレーみたいに何でもやれちゃうじゃないですか。誰もやっていないだけで、バッハとかモーツァルトもできるだろうし。だから、あまり奇をてらうより、naomiさんとgoroさんとやれば、クオリティの高いものがチーンと出てくるだろうから、自分がボサ・ノヴァで聴いてみたいのは何かな、ということでエイティーズだったんです。エイティーズの音楽って、もっともエコロジーから遠いですよね。詩の吟詠の感じも、まったく南米ではないですし」
――そういう菊地さんの提案を聞き、goroさんはいかがでしたか?
goro「まあ、ほぼ同世代なので“ああ、いい曲だよねー”って(笑)。僕も間口は広いので……ほぼ何でも大丈夫ですよ、僕。民謡をやろう、と持ってこられても大丈夫。演歌でもたぶん、大丈夫」
――もし第2弾で民謡をやろう、ということになったらnaomiさん、どうでしょう?
naomi「そうですね、たぶん、普通に歌っていると思いますね)」
取材・文/妹沢奈美(2011年6月)
最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] 中国のプログレッシヴ・メタル・バンド 精神幻象(Mentism)、日本デビュー盤[インタビュー] シネマティックな115分のマインドトリップ 井出靖のリミックス・アルバム
[インタビュー] 人気ピアノYouTuberふたりによる ピアノ女子対談! 朝香智子×kiki ピアノ[インタビュー] ジャック・アントノフ   テイラー・スウィフト、サブリナ・カーペンターらを手がける人気プロデューサーに訊く
[インタビュー] 松井秀太郎  トランペットで歌うニューヨーク録音のアルバムが完成! 2025年にはホール・ツアーも[インタビュー] 90年代愛がとまらない! 平成リバイバルアーティストTnaka×短冊CD専門DJディスク百合おん
[インタビュー] ろう者の両親と、コーダの一人息子— 呉美保監督×吉沢亮のタッグによる “普遍的な家族の物語”[インタビュー] 田中彩子  デビュー10周年を迎え「これまでの私のベスト」な選曲のリサイタルを開催
[インタビュー] 宮本笑里  “ヴァイオリンで愛を奏でる”11年ぶりのベスト・アルバムを発表[インタビュー] YOYOKA    世界が注目する14歳のドラマーが語る、アメリカでの音楽活動と「Layfic Tone®」のヘッドフォン
[インタビュー] 松尾清憲 ソロ・デビュー40周年 めくるめくポップ・ワールド全開の新作[インタビュー] AATA  過去と現在の自分を全肯定してあげたい 10年間の集大成となる自信の一枚が完成
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015