2007年にソロ・アルバム
『千の風になって』でデビュー。以来、3オクターブの幅広い声域と見事なコロラトゥーラ(軽やかに転がすように歌う)のテクニック、そしてサスティーン・ヴォイスと称される伸びやかで透き通る声で、クラシカル・クロスオーヴァー界の新たな歌姫として活躍している
Yucca。その歌唱は、ドラマの挿入曲から映画音楽にCM曲と、さまざまなシーンで起用され、リスナーからの問い合わせも非常に多いとか。4枚目となる本アルバムには、そんな話題の楽曲も多数収録。癒し系の“潤い”はそのままに、ときにロック・サウンドをとりいれた大胆なアレンジも爽快で、とても魅力的な一枚に仕上がっている。
――今回はヴォカリーズ(歌詞を伴わず、母音のみによって歌う唱法)の作品が印象的です。1曲目の「想望」も、人気のNHK大河ドラマ『龍馬伝』の挿入歌として話題を呼びましたね。
Yucca(以下、同)「
佐藤直紀さんの作る曲は美しい旋律を持っているだけでなく、とても歌いやすくて気持ちがいい! この曲が皆さんに気に入ってもらえたおかげで、FINAL SEASONでは『龍馬伝紀行』の音楽も担当できて嬉しかったです」
――2曲目の「VICTORY DRIVE」へとメドレーのように繋がっていて吃驚しました。とても効果的ですね。
「ライヴでもこの流れなんですよ。アルバムでもあの感じが出したくて」
――「VICTORY DRIVE」は
モーツァルトのオペラ『魔笛』の夜の女王の超絶技巧アリアをフィーチャーし、ロック調のサウンドでインパクトがあります。TOYOTA アルファードのCM曲として、こちらも大きな反響を呼びました。
「外国の方が歌っているんですか? っていうお問い合わせもあったみたいです(笑)。たしかに一度耳にしたら忘れられないメロディですが、やはりソプラノ泣かせの難曲です……ちょっとでも音がずれるとすごく目立つので。9曲目に〈Queen Of The Night〉としてあらためて収録しましたが、レコーディングやライヴで歌うたびに、いつも緊張して大汗をかきます」
――オペラ・アリアといえばテノールの名アリア「誰も寝てはならぬ」のアレンジも大胆ですが、個人的には「私のお父さん」の自由奔放で表情豊かな歌唱に魅せられました。
「〈私のお父さん〉はピアノ伴奏ですが、とても現代的な雰囲気で私も好きです。これも、細く高く歌い上げる部分では苦労しました。じつは夜の女王のアリアより難しかったかも(笑)」
――「アランフェス協奏曲」にスペイン語の歌詞をつけて歌い上げた曲には、ヨーローッパの空気を感じました。大人の“恋の歌”ですね。
「ラテンで、パーカッションによる出だしにもこだわってみました。今回はアレンジに関していろんな箇所で私の意見も聞いてもらえたので、これまで以上に皆で一緒に作った感があります」
――そして、“ヤマト”の宇宙空間につきものの、あのスキャット……ヴォカリーズ屈指の名曲だと思います。映画『SPACE BATTLESHIP ヤマト』に使われたものがYuccaさんの声だったとは!
「私自身はいわゆる“ヤマト世代”ではないんですが、スタッフの反応から、あのスキャットが作品にとって大切なものであると知りました。それで、歌う前に自分なりに“ヤマト”の世界観について勉強したりして……。『龍馬伝』の時にも感じたことですが、そういうのって歌唱にちゃんと表われるんですよね」
――「Time To Say Goodbye」はYuccaさんの敬愛する
サラ・ブライトマンの代表曲。これまでにも何度かレコーディングされていますが。
「打ち込みやストリングスによるサウンドが多いこの曲ですが、今回はエレキ・ギターの“泣き”を効かせてゴージャスにいこうって決めてました」
――ボーナストラックでは作曲にも挑戦されていますが、メッセージ性の強い日本語の歌詞はどなたが?
「以前から、花の香りで人の心を癒す“バッチフラワー”療法のエキスパートとコラボしたライヴなどを開いていて、この曲の歌詞もその方に書いていただいたものです」
――では最後に、リスナーの皆さんにメッセージをお願いします。
「いちばんやってみたかった新しいことにチャレンジして、自分でもとても楽しんで作ったアルバムです。とくにロック・テイストの曲を聴いて、スカッとして前向きな気持ちになっていただけたら、それも一種の“癒し”ですよね。また、ライヴの方でもお待ちしています。皆さんがアドレナリン全開で元気を出していただけるようなものを企画していますのでどうかお楽しみに!」
取材・文/東端哲也(2011年7月)