――バンドを組んだ段階で、アルバムまで見据えていたんですか。
フルカワ 「そうですね。作品を作ることに関しては最初から1曲、2曲作るんじゃなくて、ひとつの目標として1枚のアルバムぶん、バンドの全体像をちゃんと伝えられるようなものを作りたいなと思っていました。何曲か一緒に作ってみないと、LAMAっていうバンドがどういう生き物になるか分からなかったし、そこに対するワクワク感もあったので」
――制作はどんな感じで進めていったんですか。
フルカワ 「普段それぞれ活動していて、全員で集まれる時間が限られてしまうので、ネット上に1個のサーバーを設けて、デモを作るとき、好きな時間に、好きなフレーズだとかアイディアを全員で共有できるようにしたんです。それが溜まった状態で、4人のスケジュールが取れるときに、スタジオに入って作業をするっていう感じでした。その作業自体すごく新鮮で」
――データのやり取りで曲を膨らませていく中で、自分からは出てこないようなアイディアが出てくるようなこともあったり。
フルカワ 「そうですね。自分の引き出しの中にはないフレーズやアイディアが出てきたりするんで、すごく面白かったですね。自分が出したアイディアに対して、どんな反応が返ってくるんだろう?とか、作業の間、ずっとワクワクしてました。もともと、そういう刺激が欲しいなと思って始めたバンドなので」
ナカコー 「この人達はどういうことで笑うんだろうとか、どういう話題で盛り上がるんだろうとか、そういうところからスタートしたんです。それを音に変換していく作業がすごく新鮮で。その楽しさが作品に落とし込めたらいいなと思ってました」
フルカワ 「“PVだったらこういう感じになるのかな?”とか、そういう話をみんなでよくしましたね。お茶したり、お菓子食べながら(笑)。スタジオ入ってるのに、全然、作業しないで。そういう気楽なムードも音に出ているのかもしれませんね。新しい機材が届いたら、それをキャッキャキャッキャ言いながらいじったり。そういう時間のほうが長かったような気がします」
――たしかにアルバム全体を通して風通しの良さみたいなものを感じました。でも決してユルくはないっていう。そのあたりのバランス感も興味深くて。
フルカワ 「それぞれが対等な関係で曲に向き合っていると、関係性みたいなものがどんどん変わっていくんですね。作業を通じて、よりお互いを深く知る作業になるから。同じ“ポップ”という言葉に対しても、それぞれ解釈が違うし、それぞれの感覚を想像しながら作業を続けていくというのは、やっぱり刺激的ですよね。たとえば、ひさ子ちゃんは、もっと自分の音を大事にしたい人なのかな?とか勝手に思っていたんだけど、意外と“変わっちゃっても全然大丈夫だよ!”とか、サウンドに対してすごく柔軟な考えの持ち主で。メンバーそれぞれ予想どおりっていうことは、あんまりなかったですね。それが面白かった」
ナカコー 「みんな柔軟だから僕はやりやすかったです。それぞれ自分の好きな音がありつつも、それを他の人がどういじっても面白がる現場だったので。変に気を使わなくて済むし。予想以上にレコーディングもスムーズに進んだんで」
――ちなみにナカコーさんのバンド内での役割は?
ナカコー 「僕は進行管理をする役目(笑)。期日までに間に合わせるとか」
――いわゆる現場監督的な(笑)。
ナカコー 「そうですね(笑)。サウンドのディレクションとかじゃなくて、進行管理をメインで担当して」
フルカワ 「すごく的確な進行管理でした(笑)。ナカコーは生音と打ち込みを混ぜるという作業に関しても、この4人の中で一番経験値が高いから、サウンドについて的確なアイディアを出してくれたり。縁の下の力持ちというか、すごく頼りになりました」
――アルバム全体の印象はどうですか?
フルカワ 「すごく月並みな言い方だけど、面白いアルバムになっていると思います。自分の声が入ってると、だんだん聴かなくなったりするんだけど(笑)、今回は一緒にやったことない人とのアイディアが結構入っていたりするんで、自分もいちお客さんとして接することができるんですよね。楽しんで聴いてます」
ナカコー 「異質感がありつつ最終的にはポップなものになったんじゃないかと思います。今の日本の音楽シーンを見渡しても、今回のアルバムってかなり異質なものなんじゃないかなって。今まで自分たちが作ってきた音楽と比べても全然違うものだし」
――LAMAでの活動が今後、各自の創作活動にフィードバックしていくことも当然考えられるわけですよね。
ナカコー 「今回のレコーディングで、多様な意識をしっかり共有することができて、それがモノを作る上での発想に繋がるんだということがさらに深く理解できたんで、もしかしたら、それが今後、影響を及ぼすようなこともあるかもしれないですね。まだ分からないけど」
フルカワ 「改めて思ったのは、どれだけキャリアを重ねても“なんとなく”って感覚を失ってはいけないなっていうこと。先に理由があって、それが好きだとか、そういう人もいるかもしれないけど、私は理由よりも先に、“なんとなく好き”とか、そういう感覚を大切にしたいから。今回のレコーディングではそういう意識を再確認することができましたね」」
取材・文/望月哲(2011年10月)