初のフル・アルバム
『イルミネイテッド・ピープル』をリリースしたUKカーディフ出身の4人組、
アイレット(Islet)。1月28日にイベント〈RADERS〉で初来日も果たした彼らだが、4人のメンバーがかわるがわる楽器をプレイし、歌い、ステージ中を跳ねまわるそのライヴは、とてもハッピーなオーラに満ちたものだった。ポスト・ロック〜マス・ロックをルーツに持つサイケデリックで変幻自在な曲展開。しかし、難解さやストイシズムよりも、ユーモラスな奔放さを感じさせる。来日中の4人に、その独特な音楽性とバンドの成り立ちを訊いた。
――アイレットが鳴らしているのは、自由で、何の制約のないタイプの音楽だと思うんです。でも、同時に人懐っこいポップさも感じます。どういうところからスタートして、この音楽に辿り着いたんでしょうか?
エマ・ダマン「最初のアイディアの一つは、どんなルールも決まりもなく、とにかく自分たちが楽しめる音楽を何でもやってみようということだったのね。どんなスタイルの音楽を演奏するというのも一切決めなかった」
ジョニー・トーマス「で、僕らはフリーフォームな音楽を作ることが好きなんだけれど、でも同時に、ポップな音楽も好きなんだよ。いいメロディもすごく好きだし、パンクっぽいサウンドのも好きだし」
――音楽的な面で、共感するアーティストやリスペクトしているアーティストには、どんな人がいますか?
2012.1.25
Ebisu LIQUIDROOM
(C)Creativeman
――ライヴではメンバー4人がパートを交代しながらいろんな楽器を演奏していますよね。そういうスタイルはいつから?
ジョニー「最初からだね」
マーク「これは自分の楽器だっていうこだわりは一切なかったな」
エマ「たまに、バンド内にヒエラルキーがあったりするようなバンドもあるじゃない? リード・シンガーが一番偉くて、その次がギタリスト、みたいな。でも私たちにはそういうのは一切なかったの。みんなパーカッションを叩いたり歌ったりするのが好きだから」
アレックス「僕らは笑顔の沢山あるライヴにしようと思ってるんだよね。自分たちだけじゃなくて、オーディエンスにも笑ってほしい。誰でも楽しめるライヴをやりたいと思ってるんだ」
――アイレットは地元のカーディフの小さなインディ・レーベルを拠点に、DIYで活動を始めたんですよね。その体制は今も変わっていないんでしょうか? マーク「今はほかのレーベルと組んでやってるけど、基本はずっと変わってないよ。2007年に僕ら(ジョニー&マーク)兄弟ともう一人の兄のリーと設立したshape recordsからリリースしている。それこそオーダーがあったら、自分たち自身でCDを封筒にいれて郵送してるんだよ」
――自分たちの情報発信に、MyspaceとかFacebookを使わず『The Isness』という雑誌を作っているそうですけれども。これはどういう意図で?
マーク「MyspaceやFacebookを使うと、ほかのバンドと全部同じになっちゃうのがイヤなんだよね」
ジョニー「それに、SNSだと、PV数とか“いいね!”の数のほうが大事になっちゃう。僕らにとって、そういうのはどうでもいいんだよ」
エマ「そういうのって、オーディエンスをリスペクトしてない気がするのよね。どれだけの人数のお客さんをゲットできたかの競争みたいになっちゃうから」
――たとえば「ア・ベア・オン・ヒズ・オウン」のミュージック・ビデオなど、アートワークや映像には沢山の色彩が出てきますよね。そういうカラフルな色彩感覚って、アイレットの音楽性にも繋がるものなんじゃないかと思うんですけれども。どうでしょう?
マーク「もちろん、アートワークは自分たちを表現するものだと思うよ。実際自分たちの音楽も、いろんな色のあるカラフルなものにしようと思ってるね」
エマ「そう。ただし、ネオンカラーだけじゃなくて、ダークな色や黒や灰色もあるのよね」
――で、カラフルなだけじゃなくてユーモアの感覚も強く感じました。
マーク「まさにそうだね! ユーモアは絶対あると思う。とにかくプレイしていて楽しいなものが作りたいし、自分たちに対してシリアスになりすぎないことがすごく大事だと思う」
――じゃあ、たとえばライヴをしている時に曲の中に感じるユーモラスなポイントは?
マーク「そんなのたくさんありすぎてどこがなんて言えないよ(笑)。ライヴでもほかの3人がやってることを見て、笑いすぎて歌詞を忘れちゃうこともしょっちゅうあるし。たとえばライヴ中にコードに引っ掛かってつまづいたりしても、全然OKなんだ。それで曲が上手くいかなくて怒るようなバンドもいるかもしれないけれど、自分たちとしてはそういうのが可笑しくてしょうがないんだよね」
取材・文/柴 那典(2012年1月)