2011年の来日公演は震災の影響で見送られたが、ウィーンで4グループ合同のチャリティ公演を行ない、多額の収益金が被災地の学校に送られた。今年はシューベルト組がゴールデンウィークから7月にかけて全国をツアー中。指揮者のオリヴァー・シュテッヒ氏とメンバー3人に話を聞いた。
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――かつてはウィーン周辺の出身者のみで構成されていたそうですが、現在はいろんな国の子どもたちがメンバーにいるようですね。
シュテッヒ 「シューベルト組にもさまざまなルーツを持った子どもたちがいますし、いろんな国の言語で歌っています。その一方で、オーストリア民謡や
J.シュトラウス2世の曲といった伝統的なレパートリーも大切にしています。どこの国から来ても、みんなあっという間に言葉がウィーン訛りになりますね」
――今回の来日公演では「上を向いて歩こう」や「見上げてごらん夜の星を」など、
坂本九ナンバーも歌ってくれます。Kenshiくん(日本出身)がみんなの日本語歌唱の指導を?
Kenshi 「学校には日本人の先生もいます。でも、僕も変な発音に気がついたら直してあげるかな」
Caspar 「初めて歌ったけど、とても美しい曲だと思いました。とくに〈上を向いて歩こう〉が好き。3番で口笛を吹いたりするところなんかが」
Paul 「日本のお客さんが手拍子したりして、喜んでくれるのが嬉しい。歌詞の意味をもっとよく知りたいです」
――寮生活の中でも、やっぱり組ごとに団結することが多いんですか? 『ハリー・ポッター』のホグワーツ魔法魔術学校みたいに……(笑)。
シュテッヒ 「寮の建物はひとつですが、組ごとに同じフロアに固められています。たとえば、ブルックナーのミサ曲を合同で練習したりするとき、ブルックナー組はすごく熱心なのですが、シューベルト組はなかなか揃わなかったりしますね(笑)」
Paul 「みんなシューベルトが大好きなんです。〈鱒〉とか〈野ばら〉とか、素晴らしい曲をいっぱい作曲してる」
Caspar 「僕らの組は歌もうまいけど、とくにサッカーとかスポーツがいちばん強いよ!」
――歌うのが好きな曲は? また、ふだんはどういう音楽を聴いているんですか?
Caspar 「シューベルトもいいけど、僕はハイドンの〈テ・デウム〉が好きです。今まで2回歌って楽しかったから、また歌いたい。ふだんはポップスもよく聴きます。
グリーン・デイが好き」
Kenshi 「モーツァルトの〈サンタ・マリア〉っていう曲が好き。僕もいろんなジャンルの音楽を聴きます。Seeedっていうドイツの(ダンスホールレゲエ)バンドのファンです」
Paul 「(来日公演Bプログラムで歌う)フィンランド民謡の“エヴァのポルカ”が好き。最近のポップスはあまり聴きません。
ビートルズとかは好き。あと
ボブ・マーリーとかレゲエが好きだから、僕もSeeedをよく聴いてる」
――やはり将来は、音楽の道に進もうと思っているんですか?
Caspar 「今、趣味でギターを習っているけど、将来はカメラマンになりたいので、写真を勉強するつもり」
Kenshi 「音楽を長いことやってきたから、ほかのこともちょっとやってみたいです」
――日本で行ってみたいところはありますか?
Caspar 「今回、富士急ハイランドに行くのをすごく楽しみにしています。5月の末には沖縄にも行くんですよ」
――東京の印象を教えてください。
Paul 「大都会なのに街が清潔でびっくり。昨日行った秋葉原はニューヨークのタイムズスクエアみたいだと思いました」
――では日本人のKenshiくんから見たウィーンの印象、魅力は?
Kenshi 「昔の教会や古い建物がちゃんと残っているのがすごいですね。モーツァルトの住んでいた家とかも。そしてやはり音楽にまつわるものがいっぱいあります。街をちょっと出ると緑が多いのも素晴らしいと思います」
取材・文/東端哲也(2012年5月)