「ほかに何も入れない生でプレイできる音楽を」―― ザ・ヴュー、原点回帰の4thアルバムを発表

The View(Scotland)   2012/07/02掲載
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 2007年、UKアルバム・チャート初登場1位を記録したファースト『ハッツ・オフ・トゥ・ザ・バスカーズ』で鮮烈なデビューを飾り、人気ロック・バンドとして順調な活動を続けるスコットランド出身4人組のザ・ヴュー(The View)。そんな彼らが、レーベルをインディーズのクッキング・ヴァイナルへ移籍し、4枚目のアルバム『チーキィ・フォー・ア・リーズン(Cheeky For A Reason)』を発表した。停滞ムードが叫ばれる昨今のUKロック・シーンにおいて、本作は非常にカラッと風通しがよく、迷いのないストレートなロック・アルバムとなった。
――今作はファースト『ハッツ・オフ・トゥ・ザ・バスカーズ』の頃を思い起こさせるような、シンプルで勢いを感じるサウンドだと思いました。
 カイル・ファルコナー(vo、g、b)「“原点回帰”は僕らが強く意図したところだったね。実際、ライヴをやるとこういうサウンドになるんだよ。だから、ライヴの時に自分たちが演奏してる裏でバッキング・トラックを流さなくていいし、24ピースのオーケストラを引き連れる必要もない。4人だけで、レコードで鳴ってるままにプレイできるんだ」
 キーレン・ウェブスター(vo、b、g)「まさにね。もちろん、これまでに打ち込みやストリングスを実験したことはよかったと思うし、自分たちがそういうレコードを作ったこと自体はかなりクールだと思ってる。でも、このレコードでは一歩戻ってみたかったんだよ。最初にバンドとして集まって、練習した時みたいなサウンドにしたかった」
――タイトルを『チーキィ・フォー・ア・リーズン』(=ワケありで生意気)とした意味を教えてください。
 キーレン「タイトルは曲の一ラインから取ったんだ。“チーキィ・フォー・ア・リーズン”ってフレーズが、僕らに対する一般的な見方、ザ・ヴューがどう思われてるかを要約してる気がして。あと、ファーストの時も歌詞の一節からアルバム・タイトルを取ったから、今回も同じことをやりたかったんだよね」
――今回メジャーの1965レコードを離れてクッキング・ヴァイナルに移籍しました。一番大きな変化は何でしょうか?
 
 カイル「クッキング・ヴァイナルは僕らのレコード会社っていうより、チームメイトなんだ。レコーディングの費用は僕らが出しているし。以前からいい噂をいろいろと聞いていて、実際に契約してみると前よりずっと自由にやれる。シングルやビデオのことだって言われた通りじゃなくて、自発的にやれるんだ」
 キーレン「実際、計画としては自分たちでこのアルバムをリリースしようとしてたんだ。メジャーとの契約が切れて、でもちょっとは資金もあったし、たくさん曲もできてたしね。でもそれをやり始めた時に、ちょうどクッキング・ヴァイナルからオファーが来て。今考えると彼らと契約してよかったと思う。僕らに何も強制したり、押し付けたりしないからね」
――本作のプロデュースにマイク・クロッシー(アークティック・モンキーズブラッド・レッド・シューズ他)を迎えたのはなぜですか? 実際に仕事をしてみてどうでしたか?
 キーレン「まさに彼がアークティック・モンキーズでやった仕事とかが好きだったんだ。彼はアルバム制作に対してすごくハングリーで、バンドに期待するものも高いし、彼自身現状に満足しないで、自分が作るアルバムで仕事の質の高さを証明しようとしてる。それって、プロデューサーの姿勢として尊敬すべきだし、一緒にやると刺激されるんだよね」
 カイル「彼とは最初からごく自然に通じてたんだよね。彼が何曲か聴いて、“こういうふうにしたい”って言ったら、まさにその通りに仕上げてくれて。僕のほうも彼がやりたいことがよく理解できた。僕らも今回はとにかく“生でプレイしたい”って思ってたから。レコードを聴いても、そういう一瞬一瞬がとらえられてるのがわかると思うよ!」
――リード・シングル「ハウ・ロング」はとてもメロディアスでハッピーな雰囲気の曲ですよね。でも、PVは妄想にさいなまれている男の、ちょっと狂気を感じるような映像で意外でした。これはどういうふうに作られたんですか?
 カイル「僕と元カノで書いた曲なんだ。最初に彼女がメロディを思いついたんだよね。僕がそれをちょっと変えてバンドに持っていったら、みんな気に入ってくれて。でもこの曲はある意味ダブル・ミーニングっていうか、すごくポップに聞こえるんだけど、歌詞は強烈なことを言ってたりする。“いつになったら会える?”って、ラブ・ソングの原型みたいだけど、同時に妄想的でクレイジーでもある。そこからビデオのアイディアも出てきたんだよ。ただ僕らが演奏したところを撮ったものじゃ意外性がなさすぎるだろう? 」
――現在のUKロック・シーンは一時の盛り上がりに比べてちょっとさびしいと言われることもありますが、現状をどう感じますか?
 カイル「一昨年くらいから“今はギター・バンドは難しい”って言われだしたんだけど、状況的には今もあんまり変わっていないね」
 キーレン「これから変わるといいなとは思う。今のところ、UKの音楽的ランドスケープは退屈きわまりない、って言わざるをえないからね。ダンスっぽいもの、R&Bとかばっかりで。そんなのみんな退屈して、すぐにギター・ミュージックが戻ってくると僕は思う。こういう状態が長く続くわけないから」
――最後にバンドの今後の予定を教えてください。
 カイル「今はとにかく、できるだけ長くツアーがしたい。夏はフェスにも出るし、できればほんとにまた日本にも行きたいんだよね。僕、この前の来日で1週間近く入院したんだ(笑)。いきなり敗血症になって、マスクつけさせられて。一時は隔離されて、薬でもうろうとして、もう最悪(笑)。でもファンはみんなグレイトだったし、退院してからまたプレイしたライヴはほんとに最高だったんだ」
 キーレン「日本でやった二回のツアーは、ほんとに素晴らしかったし、確実に僕らの最高のツアーの一つだった。あとはヴィザの問題がどうなるか次第だな(笑)。だから日本にに行けるように幸運を祈ってて!」
構成・文/編集部
写真/Andy Wilsher
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