時にはスクール水着で客席にダイブし、時には
ももいろクローバーZのライヴに奇襲を仕掛け、時にはセンセーショナルなPVでTwitterを席巻し……と常にその行動のエクストリームさで注目を集める5人組の“アイドル”である
BiS(新生アイドル研究会)が、シングル
「PPCC」でメジャー進出。その過激な展開が注目されがちであり、それをウリともしている彼女たちだが、今作にも通底するクオリティの高いロッキッシュなサウンドとエモーショナルな歌詞からは、彼女たちが単なる時代の徒花で終わらないことを感じさせられるだろう。どこまで届くか、注目すべき存在だ。
――BiSは昨年2月の初ライヴから12月には恵比寿リキッドルームを満員にするなど、流れだけ見るととんとん拍子で進んで来たようにも思えますね。もちろんその間にはメンバーの加入/脱退など、数々のドラマがありましたが。
プー・ルイ(以下プー) 「結成の段階で1年でリキッド・ルーム・ワンマンを開催することは目標として決めていたんですが、私とノンちゃん(ヒラノノゾミ)は初期のお客さんが3人しかいない頃も知ってるから、リキッド・ワンマンが本当に実現できるなんて思わなかったし感慨深いですね。可愛くもなく、歌もダンスも上手くない私たちを……」
――そこまで卑下しなくても……。
プー 「マネージャーさんがいろいろ仕掛けて導いてくれたので」
――仕掛けるという意味では、例えば「primal.」のPVで、メンバーの脱退にまつわる事象を自らネタにしたり、グロテスクとも感じる映像を挟み込んだり、同時にメンバーの子供の頃の映像も使ったり、それだけとっても、露悪さとエモさと話題性とを同時に込めるなど、凄く戦略的なグループだと見えるんですね。
プー 「そういうのって他のアイドルさんは見せないじゃないですか。でも私たちはそういう裏側や汚い部分も見せようって。ただ、一方的に“やれ!”って言われるんじゃなくて、事前にマネージャーさんがアイディアを相談してくれるから、私たちとしてもできるっていうのがありますね。全裸のPV(
<My Ixxx>)のときも“全裸は決まってるけど他に何かやりたいことある?”ってところから私たちと制作側で会議して」
――……全裸が決まってるって時点でおかしな感じではありますが。
ヒラノノゾミ(以下ヒラノ) 「<パプリカ>のPVで頭からパンスト被るのは私たち発信だったり」
――そういうエクストリームな表現を続けていくことに不安はないですか? “このままいったら、やることなくなる”みたいな。
テラシマユフ(以下テラシマ) 「やれるだけやって、散っていけたら本望かなって」
プー 「私たちは正攻法で攻めていっても打ち負けちゃうんで、だったら捨て身で戦って死んでいきたいなって。完全燃焼してパッと燃えてパッと消える存在でいいんです」
――消えちゃ困るし、なんかレスラーにインタビューしてる気分になってきました。
プー 「“ゲリラ”とか“全裸で森を走る”とか、そういう言葉が出るので、インタビュアーさんに犯罪者の経歴みたいだって言われますけど、いたって普通の女子です」
――でもMCもかなり過激ですよね。
プー 「あ、“ま●こ”ですか? 単純に言いたくなっちゃうんです。でも、一番最初に“ま●こ”って言ったときはお客さんが引いたんです」
――……そりゃそうでしょうね。
プー 「それに自分でパニクって逆に“ま●こ! ま●こ!”って連呼したらお客さんも“おお、そう来るか!”って乗ってくれて、それが凄く快感で、私としてもそこで殻が破れたなって。だから大事な言葉ですね」
――音楽のこともちゃんと伺いたいのですが、音楽面では松隈ケンタさんはじめ、SCRAMBLESが楽曲の制作をしていますが、基本的にはハードなロック・サウンドがメインですね。
テラシマ 「アイドル・ファンにもロック・ファンにも両方喜んでもらえることができたらいいなって」
ヒラノ 「そういう一粒で二度美味しい的な見せ方はしたいなと思います。ロック・ファンの人にもライヴを観にきてほしいですね」
プー 「楽曲の良さにはホントに救われていて。これで曲まで変だったら、ただの変なグループになっちゃうんで。それに、いかにもアイドルっぽいことをやるとムズ痒くなっちゃうんですよ」
テラシマ 「一回、メイド服着て、髪もすごくアイドルっぽい感じにしてもらったときがあったんですけど、逆にコントみたいになっちゃって」
ヒラノ 「可愛く歌おうとしてもなかなかできないし」
――悩み多きアイドル・グループですね。今回のシングルもそうですが、BiSはメンバーが歌詞を書く場合が多いですね。そこで思うのは、いわゆるアイドル的な希望感よりも、聴いてると少し不安になるような歌詞が散見されるなって。
テラシマ 「そのときのBiSの気持ちが反映されると思うんで……だから今、BiSは不安なんだと思います」
プー 「情緒不安定なんです」
――そう! ホントに聴いてると情緒が不安定になるんですよ。「PPCC」も“ぺろぺろちゅっちゅー”というサビはキャッチーなんだけど、“名前もなくスタート”とか“なんか味気ない”など、パーツではすごく切ない部分もあって。
プー 「2名の脱退者を出したり、戦いながらここまで来たから、そういう傷ついてる部分が歌詞に出ちゃうのかな……。でも歌詞を書くのは楽しいし、表題曲はBiS名義になるんですけど、他の曲は個人で歌詞を書いても良いので取り合いになりますね」
――カップリングの「歩行者天国の雑踏で 叫んでみたかったんだ」はワキサカさんが勝ち取られましたね。
ワキサカユリカ(以下ワキサカ) 「でも初めて書いたんですよ、歌詞」
――“彷徨いもがきながら”とか“ぬかるんでいて抜け出せない”とか、ちょっとダークな歌詞も多いから、ワキサカさんもいろいろ抱えてるのかな、だからBiSになるべくしてなったのかなって。
ワキサカ 「そんな風に思われるんですかね……。私としては明るく書いたつもりだったんですけど」
プー 「ワッキーは自覚がない変態なんです。でも、みんな普通の人生を送って来てなさそうとか言われるよね」
テラシマ 「過去に何か抱えてそうとか」
ミチバヤシリオ(以下ミチバヤシ) 「ホントはガッカリするほど普通だよね」
プー 「でもワッキーは天才なんですよ」
テラシマ 「誰にも書けない歌詞を書けるんです」
ワキサカ 「……そうやってみんなバカにするんです」
一同 「してないよ!」
――ネガティヴ……。
テラシマ 「ボツになっちゃったワッキーの麺類の歌があるんですけど、それが天才で、なんとか公開したいんですよね」
ワキサカ 「(歌い出して)“♪ラーメンソーメン”って歌なんですけど」
テラシマ 「これをメジャー・デビューの曲として提出するのはやっぱり天才だなって」
プー 「大物新人です。逆にミッチェル(ミチバヤシ)は歌詞書いてこないんです。その意味でも逆に大物新人です」
ミチバヤシ 「空っぽの人間なので、何も出てこないんですよね〜」
プー 「絞り出す気がない! でもダイブは上手くなってるよね」
ミチバヤシ 「他は上手くならないんですけど、ダイブばっかり上手くなっていって……」
――ダイブも含めてライヴは異様な盛り上がりがありますね。
プー 「だからライヴがないと淋しくて。私たちも楽しいし、お客さんが必死な顔で盛り上がってるのを見るとすごく可愛くて。“もう! そんな顔で興奮してくれるの!?”って」
テラシマ 「“瞳孔開ききってるよ!”って。もう、みんなが好きすぎて飼いたいぐらい!」
――ギリギリだなあ。
プー 「協調性はまったくないグループなんですけど、ライヴを盛り上げたい、アイドル・ファンと音楽ファンを一緒に楽しませられればなって気持ちは一致してますね。その意識でアイドルを作っていけたらと思ってます。……ただBiSって今までの作品でジャケットに写ってる人が毎回違うんですよね」
――確かに人数が同じでもメンバー構成が違ったりしてますね。
テラシマ 「次どうなるんだろう。怖いね〜」
――そんな人ごとのように。
ミチバヤシ 「次は2人とかになってたり」
――いっそ48人超えるぐらいになってたりしたら笑いますけどね。
プー 「今のメンバーが一番後ろにされちゃったりね」
……とのインタビューの二日後、メンバーの追加募集が急遽HP上で行なわれた。常に動きを止めないBiS、恐るべし……。
BiS / “PPCC”Music Video (Special Edit)
取材・文/高木“JET”晋一郎(2012年7月)