それぞれクラシックの名門校で研鑽を積み、コンクール優勝歴を重ねてきたクロアチア出身のチェリスト、ルカ・スーリッチとステファン・ハウザー。2011年の1月、YouTubeにアップした
マイケル・ジャクソンの「スムーズ・クリミナル」の情熱的すぎるカヴァー映像が3週間で300万回再生に達するほどの反響を呼び、ふたりはチェロ2本でロックの名曲を歌い上げるユニークなデュオ、
2CELLOSとして同年6月にCDデビュー(日本盤は9月に発売)。世界的な大ブレイクを果たした。
あれから約1年、待望の2ndアルバム
『2CELLOS2〜IN2ITION〜』が世界に先駆けて日本でリリース! この11月には名古屋・大阪・東京で震災復興支援のフリー・ライヴを行ない、7日のリリース記念ショーケースでもおおいに日本のファンを沸かせたばかりだ。
photographer credit:Smallz&Raskind / (C)Sony Music Entertainment ――ニュー・アルバムのタイトルは『IN2ITION』(intuition=直感)ということですが、制作するうえでおふたりの直感が互いに衝突し合ったりしませんでしたか?
ルカ・スーリッチ「たしかに僕らはふたりとも直感に従って行動するタイプで、実際、デビュー・アルバムの時はお互いに譲らなくてしょっちゅう議論を重ねていたけど、今回そういうのは少なかったよ。プロデューサーのボブ・エズリンが僕らの間でよき調停役を務めてくれたからね(笑)」
――前作よりパワーもスケールもアップした今作では、多彩なゲスト陣とのコラボも魅力です。とくに4人の個性派ヴォーカリストとの共演が素晴らしい!
ステファン・ハウザー「4人はまったくタイプの違う歌い手で、独自の表現方法と個性的な声を持っている。
ナヤ・リヴェラの歌声はセクシーで、
ズッケロはとてもノスタルジックでメランコリック、
エルトン・ジョンは豊潤にしてパワフルだし、スカイ・フェレイラは親密で繊細に歌い上げる……どれも驚くほどチェロの音色にフットしているんだよね。しかも4人とも完璧に自分のスタイルに合った楽曲を選んでいると思う」
――
AC/DCの「地獄のハイウェイ(ハイウェイ・トゥ・ヘル)」では、偉大なるギタリスト、
スティーヴ・ヴァイとの共演でこれまで以上に熱いロックのスピリットが炸裂しています。
ステファン「僕らには、生まれつきロックのスピリットが備わっているみたいだ。これまでもつねに魂のロッカーだったし、ありったけのエネルギーと情熱でクラシックも演奏していたからね。とても自然なことなんだよ」
スティーヴ・ヴァイと
Photo credit:Bernard De Lierre / (C)Sony Music Entertainment ――
コールドプレイの「クロックス」が、まるで2本のチェロとピアノのために書かれたクラシックの楽曲のように完成度が高くて、美しい。スター・ピアニストの
ラン・ランとの共演にクラシック・ファンも大興奮です。
ルカ「ピアノとコールドプレイの曲をカヴァーしたいとずっと思っていたんだ。〈クロックス〉はそれにうってつけだし、しかもラン・ラン以外の演奏家とこの曲を一緒にやるなんて考えられなかったよ。彼の発想はいつも時代の先をいっている。ぜひまた、クラシックからロックや映画音楽まで、彼といろいろコラボしたいと願っている」
――エフェクトを効果的に駆使した
ミューズの「スーパーマッシヴ・ブラック・ホール」もカッコいいですね。共演しているのが米国の人気TVドラマ『glee』のサンタナ役でおなじみのナヤ・リヴェラっていうのも素敵です。
ルカ「ナヤとは、僕らが『glee』にゲスト出演して〈スムーズ・クリミナル〉を演奏した時(※シーズン3 第11話)にすぐ友達になって、一緒に何かやろうって意気投合したんだ」
ステファン「『glee』の撮影は大変だったけど、すごくエキサイティングな経験だった。まさにハリウッド式番組制作の現場を目の当たりにしたかも」
――今作は本当に選曲が最高です。
リアーナのヒット・チューンから往年の名曲、英国のオルタナ系人気バンドの楽曲まで幅広いチョイスが素晴らしい。大御所プロデューサーのエズリンさんともかなり話し合ったのですか?
ルカ「ボブとは選曲だけでなく、アルバムのすべてのゲストもセレクトした。ロックの歴史に伝説のアルバムの数々を残した大物と僕らの間に、ある種のケミストリーが生まれたことを心から光栄に思う」
――日本盤にはボーナストラックとして
レッド・ホット・チリ・ペッパーズの「カリフォルニケイション」が収録されていてとても嬉しいです。8月にはクロアチアでレッチリ公演のオープニング・アクトを務めたとか。おふたりにとっても憧れの存在であるレッチリとの共演はいかがでした?
ルカ「間違いなく人生でもっともエキサイティングで、忘れられない体験のひとつだったね。僕らはオープニング・アクトとして演奏したんだけど、最後の〈バック・イン・ブラック〉でなんとチャドがドラムで飛び入り参加してくれて、僕ら完全にぶっ飛んだよ。一緒に演奏しはじめたらアドレナリン出まくりで! しかも彼らのステージでも最初のアンコール曲〈カリフォルニケイション〉に呼ばれて、バンドのみんなと一緒に演奏できたなんて夢みたいだった。本当に最高のバンドでみんな大好きだけど、とくにフリーとチャドが素晴らしすぎる。ミュージシャンとしてすごく尊敬しているんだ」
――来年の2月には日本でツアーも予定されているそうですね。本当に楽しみです! では最後に、このコンビの魅力についてそれぞれ語っていただけますか?
ステファン「ルカのことは非常に成熟した、深みのあるアーティストだと思う。僕らは異なる個性を持っているからこそ、こんなふうに一緒に働けるんだと思う。お互いに補完しあっているんだよね」
ルカ「ステファンとは一日じゅう一緒にいるけど、退屈な瞬間はほとんどないと言っていい。彼の素晴らしい才能、音楽家としてのあり方には、いつもはっとさせられるんだ」
取材・文/東端哲也(2012年10月)