――ピアノ・トリオにシンセサイザーを加えたシンプルな編成なのに、ゴージャスな音という印象を受けました。アレンジや演奏の力とヴォーカルの力が高いレベルで調和しているからだと思います。
「アルバムをつくるときはいつも、何が起きるかを楽しみたいので、びっくり箱のようにコンセプトを考えていますが、今回は
ノリキ(野力奏一)といっしょに作るということがコンセプトでした。デビュー・アルバム(1990年
『ディス・ガール』)のアレンジャーがノリキなんですよね。ここ数年、またいっしょにライヴをやるようになって、“なんかやろうね”と話していました。彼のピアノは昔からすごく好きで、ただ好きというのではなく、笑顔が出るような親しい感じがあります。いっしょに音楽をやっているとベスト・オブ・イーチ・アザーみたいに良さを出し合えるから、すぐ会話できちゃう。同じ曲をやっても、違う音がちょっと来たら別の会話になる。ジャズの良さですね」
――オーケストラ・アレンジのシンセサイザーが効果的です。
「当初、バックはピアノ・トリオだけのつもりでした。でも、レコーディングしたあと、オーケストラが聞こえてきたんですよね。ノリキは音のチョイスがすばらしい。シンセサイザーであれだけの音を出せる人はなかなかいないと思います」
――選曲はどのようにしたのですか?
「長年、聴いてきた曲や私にとってエピソードのある曲を選びました。〈めぐり逢い〉や〈ティル・ジ・エンド・オブ・タイム〉は音楽好きのお父さんやお母さんが家でよく聴いていた曲です。〈セイ・イット〉はジャズ・シンガーになった頃、あるジャズ・クラブでお店が閉まる前に必ず流れていました。
ジョン・コルトレーンのレコードでしたが、最近、歌詞を見つけて絶対に歌いたいと思ったんです」
――シンガーとして、楽器の奏者から影響を受けることはありますか?
「古い人だと
マイルスとかコルトレーンですね。新しい人ではトランペットで歌っている感じの
ファブリッツィオ・ボッソが好きです。
日野(皓正)さんのグループで北アメリカやアジアをツアーしたときは、身近に聴いていて、日野さんからすごく影響を受けました。バラードがすてきですよ。間がすごくきれい」
――「セーブ・ユア・ラブ・フォー・ミー」はパワフルで、しっとりとしたバラードが多いなか、インパクトがあります。
「“みんな行け!”って感じで、ワンテイクで録りました。この曲は
ナンシー・ウィルソンへのトリビュートの気持ちがあります。最初のアルバムを出す前、Body & Soul(ジャズ・クラブ)で歌っていたら、ナンシーが遊びに来たんです。“良かった”と言ってくれて、次の週に“あのときに歌っていた〈引き潮〉を録音したものがほしい”と伝言がありました。ふつうのバラードではなく、8フィールにヘッド・アレンジしたものです。それを録音して送ったら気に入ってくれて、自分のアルバム(1989年
『Nancy Now!』)に入れてくれたんです。その後、五反田のゆうぽーとでのナンシーのコンサートを観に行ったら、“次の曲はあるシンガーにインスパイアされました。彼女の名はミス・チャリートです”とMCがあり、椅子から転げ落ちそうになりました。ほかのステージでも毎回、無名の私の名を言ってくださったそうです。本当にグレイトな人はすごいんだなあと思って、ちょっとでも近づきたいと思いました」
――今回のアルバムはパーソナルな思いに満ちていますね。
「〈慕情〉もそうです。この曲は4〜5年前、旭川でダウン症の方たちのためにフリー・ライヴをやったときに歌いました。2000年から、ビコーズ・ウィ・ケアというボランティア・グループをつくり、孤児院や老人ホームなどで歌っています。施設のスタッフが“ふだんは何をやっても反応を示さない”と言う方が、私の歌を聴くと手を叩いたり、涙を流したりするんです。音楽の力はあります。私にとって、歌うことはすべてがヒューマン・コネクションですよ。それがエナジーになっています」
CHARITO
『Affair to Remember』 CD Release Live■ 2012年12月21日(金) 東京 南青山 Body & Soul〒107-0062 東京都港区南青山6-13-9
03-5466-3348 (17:00以降)※お問い合わせ: Body & Soul http://www.bodyandsoul.co.jp/■ 2012年12月22日(土) / 23日(日) 愛知 名古屋 jazz inn LOVELY〒461-0005 愛知県名古屋市東区東桜1-10-15
052-951-6085※お問い合わせ: jazz inn LOVELY http://www.jazzinnlovely.com/■ 2013年2月6日(水) 東京 六本木 STB139〒106-0032 東京都港区六本木6-7-11
03-5474-0139※お問い合わせ: STB139 http://stb139.co.jp/