――なぜ「Painting」という曲をアルバム・タイトルにしたのですか?
サイモン・ファウラー(vo、g/以下同)「“Painting”って言葉にはネガティヴな感じが一切なく、ポジティヴな感じがするから。何かをクリエイトする感じが、とてもいいと思ったんだ」
――オーシャン・カラー・シーンの曲はポジティヴな歌が多いですが、なぜだと思いますか?
「何でなのかな、分からないな。ネガティヴなことを歌っている人が多いから、僕はポジティヴなことを歌おうと思ってしまうのかもしれない」
「素晴らしいショウだったね。ファンの盛り上がりの凄さから、『モーズリー・ショールズ』の初めの3曲がどれだけ力強い曲だったか、あらためて教えてもらったよ」
――『ペインティング』は前作に比べると、サウンドがソフトな感じがしたのですが? 「俺たちがソフト? 俺たちはいつもフォーク・ロック・バンドだぜ(笑)」
――すいません、ソフトじゃなかったです。自分たちをフォーク・ロック・バンドだと思っているんですか、僕はオーシャン・カラー・シーンはずっとサイケデリック・ロック・バンドだと思ってました。
「(ギターの)スティーヴはいつもサイケデリックだな!」
――おーっ、そしてあなたがフォーキーということですね。
「そうだね」
――では、二人合わさってオーシャン・カラー・シーンになるということですね。オーシャン・カラー・シーンの魅力の秘密がわかった気がしました。ソフトというのは間違いましたが(笑)、今作は多彩なアルバムですよね。「Professor Perplex」はニューウェィヴな感じだし、「Don't Want To Leave England」のスティーヴのギターはブライアン・メイみたいですよね。 「多彩というのは間違っていないけど、スティーヴのギターがブライアン・メイということは絶対ないな。間違ってもスティーヴにそれを言うじゃないぞ、あいつ絶対落ち込むから(笑)」
――えーっ、また間違えてしまった! クイーンはダメですか。「The Union」にはヴィレッジ・グリーンという単語も出てきますが、こういうキンクス的な発想はイギリスのバンドにずっと必要なんでしょうか? 「キンクスっていうより、ヴィレッジ・グリーン(町の緑の広場)、パブというのはイギリス人にはなくてはならないものなんだよ」
――毎日パブに行くんですか?
「毎日というか、1日に2回行ってしまうこともある(すこし恥ずかしそうに)」
――あなたの歌を聴いていると、パブに座って、新聞やTVニュースを見ながら、曲を書いている感じがするんですが、そういう作曲方法ですか?
「そうだよ」
――そういうスタイルって、あなたが元新聞社の記者として働いていたからでしょうか?
「どうだろう、そういうジャーナリスティックなことが好きだったから、新聞社に勤めたんだと思うが……歌に関してはそういうことをするつもりはなかったけど、そういうスタイルになっているね。でもオーシャン・カラー・シーンの一番の影響はファンだね。僕は自分たちのファンに向けて曲を書いているような気がするな。僕たちがここまでこれたのはファンのおかげだという気がする。もちろん、僕たちは初期の段階で凄い成功を手にすることができた。だから今もこうして活動することができると思う。でも、10枚もアルバムを作ってこれたのは、僕たちのことを気にしてくれるファンがずっといたからだと思うんだ」
――ありがとうございます。いつまでもイギリスを代表するバンドでいてください!
取材・文/久保憲司(2012年12月)