2001年のアルバム・デビューから常に注目すべきキャリアを積んできた
ジョシュ・グローバン。クラシカル・クロスオーヴァーの定着に一役買ったディープなヴォーカル表現は他の追随を許していないが、
リック・ルービンをプロデューサーに起用した前作
『イルミネーション』(2011年)からよりアーティスティックな表現に意欲的に取り組んでいる。全米No.1に輝いた最新アルバム
『オール・ザット・エコーズ』は、そんな彼のアプローチの開花を実感させる意欲作。清々しいまでの開放感が魅力だ。ウォルター・アファナシエフやレスター・メンデスらの常連や新起用のプロデューサー、ロブ・キャバロ(
グリーン・デイでおなじみ)ら、気心の知れた仲間と作り上げた彼の自信作である。
(C)Olaf Heine
――素晴らしいアルバムに仕上がりましたね。
ジョシュ・グローバン(以下、同)「ありがとうございます。このアルバム制作のために全力を尽くしました。今まであった自分へ対する境界線のようなものを取り除いて、自由にスタジオで楽しく作業ができました」
――楽しめたということは、他のミュージシャンと楽しく作業ができたということですか?
「そうですね。長い付き合いのある仲の良いミュージシャンが多かったのです。そして新しく知り合い、仲良くなったミュージシャンたちも。このアルバムに関わったすべての人たちが大切な友人となりました。彼らは素晴らしいミュージシャンであるとともに、一緒にいてとても楽しい人たちでした。僕たちはよく笑っていましたし、音楽に関するアイディアも飛び交いました。コードひとつから大きく広がり、自由に音をのせたり、僕は歌ってみたり。とても自然に曲が生まれてきたという感じです」
――「ブレイヴ」はとてもポジティブな曲ですね。
「この曲を書いた時、自分でこういう曲が聴きたいと思うような曲をイメージしました。聴いて救われるような、強くなれるような、人の心を助けたいという気持ちがあったのだと思います。弱っている時に助けてあげられるような曲を作りたかったのです。同時に自分自身も強くなれるような……。僕にとってはチームワークで生まれた曲です。これまで僕の歌は悲しいものが多かったので、自分でもこの曲のポジティブな仕上がりにとても満足しています」
――アルバムには悲しい曲もあれば、心が楽になる曲もありますね。全体に軽いというか、感情移入ができる曲が多いと思いました。意識して曲作りをしたのですか?
「音楽は聴いてリラックスできるのが理想ですよね。悲しい曲だったとしても、僕の音楽を聴いて気持ちが救われたと言われるととても嬉しいです。アルバムは全体を通して、そういった人を力づけるエネルギーを持っていると思いますよ。ドラムが曲にエネルギーを与えているし、ライヴ感があります。このアルバムのゴールは“テンポやエネルギーを感じてもられる曲を作りたかった”かな。もちろんファンの人たちが僕の歌に求める“静”の部分もちゃんと重視しつつですが」
――他の人の曲と比べて、自作曲はパフォーマンスで感情移入しやすいですか?
「パフォーマンスの場合、どの曲にも感情を込めて歌っています。その曲が持つパッションを大切にしたいからです。従って、自分が書いた曲でも、そうでない曲でも、あまり変化はありません。ですが、もちろん自分が書いた曲を歌うということには感動がありますよ。やはり曲が自分の経験から生まれたということは、自分に深く関わる内容であるわけですからね」
「NYでミーティングをしていたときに、マネージャーが提案したことが発端です。素晴らしいメッセージを持つ曲ですね。悲しい内容ではあるけど、希望にもあふれていて、前向きに愛について語っている。メロディも万国共通的だと感じました。ですので、この曲は僕なりのカヴァーができるのではと確信し、結果、自分たちのヴァーションに膨らませることができました。とても気に入っています。皆で話し合い、この曲はアルバムの最後の曲になることに決定しました。この曲の前向きなメッセージが、僕のアルバムを締めくくってくれるわけです」
(C)Olaf Heine
――ゴスペル合唱団とあなたの掛け合いは見事でしたが、一緒にスタジオに入ったのですか?
「そうです。ただし、まずは合唱団抜きで僕が歌い、その後すこしずつアレンジャーと相談しながら作業を進めました。ここは僕だけで歌おうか、ここは声を重ねてみようか……という具合で。すると歌に厚い層ができあがり、素晴らしい仕上がりになりました。この曲だけでなく、アルバム全体がこのように作られたのです。作っている人間が全員同じスタジオに集まって、話し合い、探り合いながらベストを目指した。普段から僕は完璧にやりたい主義なので、今回の制作進行はとても気持ちが良かったです。そのため、2回くらいのヴォーカル・テイクで“もうこれで完璧”ということもありました。みんなで作業を進めることが楽しく、その楽しさをそのままアルバムとして保存したい、という願いが今回の仕上がりに表われていると思います」
――ぜひ、日本のステージでも歌ってほしいですね。
「もちろんです。ぜひ実現させたいですね」
取材・文/村岡裕司(2012年11月)