チェンバー・ミュージックを独自のセンスで取り込んでしまったような意欲作
『フィールド・オブ・リーズ』を完成させ、ホステス・クラブ・ウィークエンダー出演のため来日を果たした
ジーズ・ニュー・ピューリタンズ。ニュー・アルバム完成後初となるライヴにはスペシャル・ゲストとして
Salyuも参加し、さらに管楽器2人とピアノを加えた7人編成で、ほかのアクトとは完全に一線を画したサウンドを展開、多くのオーディエンスを驚愕させていた。
気難しげに音楽観を語るバンマスの兄ジャック・バーネットと、長身イケメン・モデルでもある陽気なドラマーの弟ジョージ・バーネットという、そんなに似てない不思議な双子にインタビュー。
――毎月リリースされる新譜を特定のジャンルにこだわらず、ポップスもジャズもクラシックもすべて掲載している雑誌なんです。
兄 「そいつはスゴいな」
弟 「素晴らしい考え方だね」
――まあ、CDというフォーマットはいつまであるのか、とか言われてたりもしますけど(苦笑)。
兄 「それはイギリスでも同じだよ」
弟 「それはイギリスでも同じさ。でも僕なんかはフィジカル・メディアが好きだけどね」
――さて、今回の来日公演が、新譜を作りあげてから最初のライヴなんですよね。やってみていかがでした?
弟 「そう、まさに初ライヴだった」
兄 「とても楽しんだよ。とくに、ニュー・アルバムの曲はライヴで演奏するのが楽しいね。雰囲気もいい感じだったし、より自分たちらしい音楽を演っているという手応えを感じられた」
――ニュー・アルバムは、前作とはかなりサウンドが変わりましたが、この方向性はどんなふうにして思い浮かんだものなのでしょうか? 弟 「まあ、そこまで違わないと思うけどね」
兄 「いやいや違うだろ。おまえ最近、前のアルバムちゃんと聴いたか?」
弟 「そこまで言うほどの違いはないんじゃない?」
兄 「今作の方が、メロディやハーモニー、ヴォーカルにフォーカスしていることはたしかだと思う。前作は、どちらかというとコンピュータを使ってプログラムされたシーケンスやリズムから曲を書いていったのに対して、今回はピアノで曲を書いたから、もっと直接的にエモーショナルだ。自分が感じている気持ちを音楽で表現したいという衝動がまずあって、そこから導かれた作品だね。最終的に伝統的な音にはなっていないけれど、アプローチとしては従来のソングライティングの方法論をとったアルバムと言っていいかもしれない」
――じゃあ、順番としては“こんな音にしよう”とイメージを先に考えついてから制作したわけでなく、心の赴くままに創作を進めていたら、こういう音楽ができていたという感じですか?
兄 「まさにそう。明確な音が頭の中にあって、それを目指したわけじゃなく、書きながら音楽に導かれてこうなったんだよ」
――ユニークな管弦のアレンジは、どういうふうにして作り上げていったのですか?
兄 「独学で、こういった楽器のアレンジを3〜4年くらい前から少しずつ学んでいったんだ。ソフトを使ったり、譜面を書いたり、図を作ったり、いろいろな方法を組み合わせたよ」
――過去に、クラシックの音楽教育を受ける機会はなかったのですか?
兄 「いや、全然」
――では、そういう作業を進めるにあたって、何か参考にしたものとかは?
兄 「本を読んだりとかはしたけど。基本的には、ただやってみたんだよ。こうしたらどうなるかな? と考えるよりも先に、とにかく何でも試してみる、という感じだね」
弟 「(『CDジャーナル』6月号P24の
スマイレージの写真を見て唐突に)俺、日本の女の子グループでドラムを叩いてみたいな。彼女たちの真ん中に入ってさ(笑)」
――できるかどうか訊いてみましょうか?
弟 「うまくいくと思う?」
――考えるよりも先にまずやってみる、ってことでいいんじゃないですか(笑)。
弟 「実現したら笑えると思うね。(写真の
田村芽実を指差しながら)この女の子がとくに可愛いな」
――それはさておき、ジーズ・ニュー・ピューリタンズは、どんどん普通のロックとは違う次元へ突き進んでいる印象なんですが、自分たちの存在が周囲から浮いているなと感じることはありますか?
兄 「まあ、そういう状況にいることは自覚してるよ。同世代のバンドたちが、それぞれ新しい領域を切り開いていくようなことをもっとやってくれればいいのにな、という気持ちもある。単にロック・バンドでレコードを売りたいって性根でやるんじゃなくてさ。僕たちは、自分たちの好きなように音楽を作りながら、そのうえでビッグになりたいという野心も持っているんだ」
――最後に、今後の予定を教えてください。
兄 「
ビョークのコンサートでサポートを務めることが決まっていて、あと主要な都市いくつかで自分たちのライヴをやろうと計画してる。大きなフェスに出たりとかするのは、来年にとっておこうと考えているんだ。もちろん日本でもまた自分たちの単独公演をやりたいよ」
弟 「それから僕は、日本のアイドル・グループとポップ・レコードを作らなきゃ(笑)」
――(笑)。日本ではSalyuが担当したパートは、この後のツアーではアルバムにも参加しているエリーザ・ロドリゲスさんが務めるのでしょうか?
弟 「そう、だから今回の日本でのショウは、唯一のスペシャル編成だったわけ」
兄 「いずれは、Salyuとも何かまたべつのコラボレーションをやりたいね」