12月11日に2ndアルバム
『絶対少女』をリリースした
大森靖子。CDジャーナルWEBではその発売を記念して、プロインタビュアー
吉田豪による超ロングインタビューを2週連続で掲載! 後編となる今回も、音楽活動以外でやってみたいこと、自らの表現に影響を与えた小6時の出来事、そして
前回に引き続きハロプロおよび
道重さゆみに対する至上の愛など、トピック満載でお届けします。
大学で絵を描いてるときも、
意識しないうちに女の子の裸ばっかり描いてたんです。
なんでですかね。……ハゲでデブみたいなのにすごい憧れがあって。
――『FRIDAY』の連載で女好きバンドマンの批判とか書いて、あれは余波はなかったんですか?
「いっぱいありましたね」
――当然、自分の居場所を狭くしますよね。
「
Paradiseって好きなバンドがいて、CDにコメント書いて下さいって言われて書いたんですけど、あんなミュージシャンの悪口言うような女のコメントをうちのバンドでは載せられないみたいな感じで。メンバー内で意見が食い違ってて、一生懸命書いたのにすごいショックとか、そういうのはいっぱいあります。別にいいんですけど(笑)」
――それよりも感情を叩き付けたい。
「叩き付けたいというか、単に気に入らないんで」
――ダハハハハ! そういう独自な姿勢は、音楽第一じゃないからこそ誕生したものなんでしょうね。
「ミュージシャンからしたらすごい嫌だと思います。申し訳ないなと思いながらやってるんですけど。
直枝さんとか優しいから、それをおもしろいねって言ってくれて」
――大人のほうがおもしろがってくれるんじゃないですか?
「そうですね」
「No Lie-Senseは、なんで声を掛けてもらったのかよくわかんないですけど。ギャラは●●円でした」
――言わないでいいですよ(笑)。
(※ここから某業界人の噂話になるので大幅割愛)
「そういう話は好きでしょうがないですね(笑)。仲良くなりたいっていう意識は誰に対してもあんまりなくて」
――むしろそういう情報が欲しいというか。
「だから豪さんとか羨ましい。私のことインタビューしてくれてる女の子とかも、“女・吉田豪”になりたいみたいに言ってる人が多くて。羨ましがられてる立場ですよね」
――ならないほうがいいですよ(笑)。
「でも、豪さんみたいに地下アイドルに媚売られたりとかしたいじゃないですか」
――思ったより売られてないですよ! CDとかも全然もらえてないし、そもそも女の子たちがボクのこと認識してることがまずないですから。
「ほんとですか? でも、意外にそういうメリットってないですよね。私も“関係者で入れるでしょ”とか言われるけど、普通に握手会とかイベント券買っていってるのになぁって」
――最近では、ハロショでカヴァーライヴ(5月6日、ハロー!ショップ秋葉原店にて“ハロプロしばり”のライヴを開催)やったのも良かったですよ。
「ハロショでライヴできたこと自体は嬉しかったんですけど、あれは結構大変だったんで(笑)」
――全曲、弾き語り用にアレンジし直すわけですからね。
「まず、
つんく♂さんっぽい歌い方を消すっていう作業がいるじゃないですか」
「そうそう。私がやるとなると、あの歌い方をまず消す作業をやらなきゃいけないんで」
――でも、完全に自分のものにしてましたね。
「こっちに持ってこないと戦えないし(笑)。楽しいですけど」
――あれはほんと全部いいアレンジでした。
「“ハロプロ知らなかったけど、大森さんが歌ってたから聴いてみたら本当に良かった”とか言ってくれる人が多いのが嬉しくて。あと、2ちゃんのまとめのスレとか読んでたら、
橋本 愛ちゃんが私のこと好きって言ってくれてて、その流れで『Seventeen』で
モーニング娘。の
道重さんが好きって書いてくれたんですよ。で、そのスレの人たちが“あいつ使えるな”って書いてくれてたんですよ」
――ダハハハハ! ハロヲタの人たちが(笑)。
「“大森靖子、意外に使えるな”って。それがほんと嬉しくて! “そうそう! 私、使えるから!”みたいな」
――大森さんきっかけで橋本 愛さんにも布教できたということで。
「“今まで付いてなかったファンを私、連れてこれるから!”みたいな。それが嬉しかったです」
――それはたしかに、してやったり感ありますよね。橋本 愛さんがラジオで大森さんの曲を紹介してたのも驚きましたよ。
「心配ですけどね。かわいそうじゃないですか。ただの中2とか叩かれたりしたら」
――橋本さんが大森さんを推してて、能年(玲奈)さんがフレネシを推してるっていう棲み分けもおもしろいですよね。 「そうそうそう。うまいこと分かれてる」
――能年さんは可愛らしい感じで、橋本さんはダークサイドがあるんだって感じで。
「でも、『あまちゃん』っていうもの自体が
大友良英さんが音楽やってたり、すべてがそういうものだったじゃないですか」
――メジャーなもののなかにアンダーグラウンドなものが入ってるっていう。『あまちゃん』は見てたんですか?
「追っかけで見てて。まだ東京行く前までしか見れてないですけど。でも、橋本 愛ちゃんを、自分のこと好きだっていう目で見ちゃうじゃないですか。だから、ずっと愛ちゃんかわいいとしか思えないんですよ。そもそもストーリー的に能年さんに感情移入できないっていうか、最初からアイドル性を持ってるから。私、ナチュラルボーン系のアイドルにあんまり感情移入できなくて、好きになるのはサイボーグ系なんですよ。
ももちとか佳林ちゃんとか」
――努力して作り上げていくタイプ。
「無理矢理作ってるみたいな子が好きなんで、橋本 愛ちゃんにしか感情移入できなくて、なんで能年ちゃんが主人公なんだろうみたいな(笑)。むしろ
キョンキョンにいちばん感情移入するくらいの感じで見てたんですけど。でも、
小池徹平くんがいちばん良かったです」
――どうしてですか?
「結局、好きな子と付き合えずに、ややこしくなって近場の女と付き合うみたいな。あのありがちな流れが一番感情移入できる。男の子を好きになることがあんまりないんですけど、今までで唯一いいなと思ったのが小池徹平くんで。たぶん男の子として見てないんですけど」
――まぁ顔も女の子寄りですからね。
「小池徹平くんとかボコボコにしたら絶対気持ちいいな、とか」
――え! どういう思いなんですか、それは?
「AVとか見るときの気持ちですよね。かわいい子がこんなことしてるみたいな、そういう目で見てます」
――歪んでますねぇ(笑)。男の子を好きになることがないっていうのは、なんなんですかね?
「知らないうちにそうなってて。大学で絵を描いてるときも、意識しないうちに女の子の裸ばっかり描いてたんです。なんでですかね。……ハゲでデブみたいなのにすごい憧れがあって。」
――憧れ?
「自分はそうあるべきだみたいなのがあって。自分は絶対にハゲでデブに生まれるべきだったんですよ」
――内面は絶対そっち側の人ですよね。
「次はそう生まれたいみたいな憧れがすごいあります」
――そう生まれなかった以上、女であることをどうプラスにするかってことですよね。なかなかハゲでデブな中年男だとアイドルとコラボもできないでしょうし。
「そうですね。
フットボールアワーの
岩尾さんくらい頑張るしかない。あんなにお笑いで頑張ってテレビに出てから“アイドルが好き”って言っても、ネガキャンとか言われるじゃないですか。だから自分もネガキャンにならないように頑張らないとなって」
――南海キャンディーズの山里さんとかも、あれだけ誠実なファンなのに叩かれますもんね。そう思うと女子は得だと思いますけど、叩かれると気にします? 「気にしないようにはしてるんですけど、言われた分はちゃんと返したいっていうか。そういうこと言ってくる人って自分のこと匿名だと思ってるじゃないですか。だから自分が悪いこと言ってるって意識がない。ちゃんと人を傷付けてるぞってことだけは教えたいですね。自分がそういうやりとり見てるの好きだから、うしじまいい肉さんとか大好きで」
――あのネット上のアンチとの戦い方とか最高ですよね。
「そうそう(笑)。私はけっこう溜めてから、しかもパフォーマンスとしておもしろい文章が思いつかないといけないみたいな部分があるので。うしじまさんって、そこまでいかずにすぐ書くじゃないですか。最高ですね」
――ほんとにアンチオフ会(10月19日にアンチの人だけを集めたオフ会を開催)にも行きたかったですよ。ウチの近所でやってたんで。
「あそこまでできるとすごいですね、アンチオフ会とか」
――そういうとこに共感するわけですね。大森さんの今後の活動の方向性でふと思ったんですけど、“こじらせ女子”って言っちゃうとあれですけど、そういう枠があるじゃないですか。久保ミツロウ先生とか犬山紙子さんとか。そういう枠に入ってトークする側になる可能性はありそうだなと思って。 「ほんとですか? 全然超やりたい!」
――超やりたい(笑)。そういうのに躊躇とかはないですか?
「ないです、ないです」
――有名になるのが目標だから(笑)。
「でも、こじらせ女子として今、名前が挙がったような人って、こじらせてるからダメだっていうんじゃなくて、こじらせてるなりにちゃんとやってるじゃないですか。そういう人が好きなんですよ」
“もう処女じゃないから普通の恋愛できないじゃん!”みたいなのがあって。
そこから、普通の子ってどうなんだろうみたいなことを思うようになって。
――そういえば、あの動画も見ましたよ。松永天馬(アーバンギャルド)さんと出たポエム朗読イベント(〈ポエトリーリーディング in サブカルチャー〉)。ああいうのを見ると、トークの側でも活動できそうだなって思いますよ。 「天馬さんが喋るの好きだから、あんまり喋らなかったんですけど」
――でも、要所要所で大森さんが爪痕を残してて良かったです。
「ああいうイベントでは、道重さんとかももちの精神を大事にしていて。だから自分も爪痕を残さないとっていう意識があって。道重さんのノートとかすごいじゃないですか。共演者のこと調べ尽くしてるやつ。ももちが
AKB48のダンスを覚えていって『めちゃイケ』で事務所の人に怒られるの覚悟で前に出て踊ったエピソードとか、ああいうの泣きそうになって。自分もそうでなければ、みたいな。最初からかわいくて、努力しなくていい人ですら努力してるんだから、わたしみたいなもともとマイナスの人は、もっと努力しないとっていう義務感はあります」
――義務感から、MCでもなんでも爪痕を残さなきゃっていうのはあるんですか?
「あります。かわいい子は踊ってるだけでいいけど、わたしはおもしろくなきゃダメだみたいな」
――曲でインパクトを残しつつ、MCでも爪痕を残さなきゃと。シブカル祭(〈フレフレ!全力女子! | シブカル祭。2013〉)でもイベント自体を否定するような、かなり余計なこと言ってましたもんね(笑)。
「そうでしたね(笑)。“渋谷もカルチャーもどうでもいい”みたいな」
――清々しかったですよ(笑)。
「まぁどうでもいいですからね、ほんとに」
――この先、自分がなりたいものってあるんですか?
「なりたいもの……なんですかね」
――このアルバムが出たらもっといい風が吹くようになると思うんですけど、そうなったときに自分はどういう方向に向かいたいんだろうとか。
「いろんな人と喋りたいです。ラジオとかやりたい!」
――絶対おもしろいですよね。ラジオで無闇な喧嘩を売ったりとか(笑)。
「なんの解決にもならない人生相談とかやりたいんですよ」
――ゲストを呼んで不穏な空気が流れるのとか聞きたいです。
「人と喋るのはすごい好きなんで、そういうのはやりたいです」
――インタビュアー的なことはできる人なんですか? 前に『Quick Japan』でモーニング娘。の工藤 遥さんと鞘師里保さんのインタビューをやったときも、後からものすごい加筆してたって言ってましたけど。 「加筆してます。だって、りほりほ(鞘師)がすごい頑張って、“モーニング娘。は〜”とか綺麗事いっぱい言うじゃないですか」
――綺麗事(笑)。次期リーダーらしい、ちゃんとしたことを言いますよね。
「実はちゃらんぽらんのくせに頑張るじゃないですか(笑)。そしたら“そうだね!”って言ってあげたくなるっていうか、そのりほりほをやらせてあげたくなっちゃうんですよ。だから、ほんとに向いてないなと思いました(笑)」
――好きすぎる相手だとインタビューするのは無理ってことなんですかね。道重さんとか絶対に無理だろうし。
「絶対無理ですよ。褒めて終わりになりそう。握手会ですら道重さんと握手した瞬間の記憶が飛んでるのに。握手会に行っても道重さんの記憶が飛びすぎて、そこの感想が書けないから、今日はくどぅー(工藤)はこうだったとかブログで書いてたら、“大森さん推し変したの?”みたいなこと書かれたりしたこともあって。いや、覚えてないんだよ!って」
――CDが売れた暁にはラジオをやりたい、と。やっぱり音楽的な目標じゃないんですね。
「オールナイトニッポンやりたい!」
――でもオールナイトの2部とかだったら、やれそうですよね。現代の中島みゆき枠いけますよ。 「中島みゆきさんのラジオ最高ですよね。歌声と内容が一致しない」
――暗い歌をうたってる人がラジオで変なテンションになるっていう意味で、後継者になれそうですけどね。
「でも、みんなそうじゃないですか。私、早見 純さんの漫画がすごい好きなんですけど」
――好きそうですね。
「サイン会に行ったらすごい優しくて、悦子を描いて下さいっていったら、“悦子ちゃんの髪型は長いっけ?”とか、すごい丁寧に描いてくれて。“やっぱり優しい人なんだ!”って感動して泣きながら帰りました」
――漫画は相当ひどいのに(笑)。
「でも、漫画も愛情がこもってるじゃないですか。ほんとにダメな人の線で」
――童貞臭がプンプンしますよね。
「処女の女の子によく会うんですけど、処女の子って独特の疎外感を引きずって生きてるじゃないですか。わたしは物心ついたときから処女じゃなかったので。連れ去られたんですけど、小学校のときに」
――「物心ついたときから処女じゃなかった」って話、『FRIDAY』に書いてたから気になってて、聞いていいのかなと思ってたんですけど……。
「全然いいですよ。処女の子とは逆の疎外感がありすぎて意見が一致するんだっていうのが最近わかって。最近、処女引きずってるみたいな子と友達になるのが多いです」
――小学校のときに何があったんですか?
「いや単純に家出してて、車で連れ去られて犯されたって話なんですけど。あはは(笑)」
――あははじゃないですよ、全然! それが小学校のときですか?
「小学校6年です。中学ぐらいになると、みんなセックスの話するじゃないですか。それを聞いて、“あ、それ、わたし、やったことあるやつだ!”みたいな。“もう処女じゃないから普通の恋愛できないじゃん!”みたいなのがあって。そこから、普通の子ってどうなんだろうみたいなことを思うようになって」
――あぁ。自分ができないことを楽しくやってる人たちへの興味が湧いて。
「普通に生きるってどういうことなんだろうみたいな」
――普通に生きるのは諦めちゃった感じなんですか? 普通の恋愛は無理だって。
「文集とかでも普通の人になりたいってひたすら書いてて」
――なれた気がします?
「なれてないですよね(笑)。でも、それなりのやり方を見つけたっていうか。それで苦しいと思うことはなくなったんで、もういいんですけど」
――苦しいと思ってた時期はあったんですか?
「やっぱりありましたね、中学校くらいでは。高校になったら、もうひとりでお弁当食べたりするのも楽だったし。そういえば高校のとき、横浜から転校生が来て。横浜って愛媛からしたらもう東京なんですよ。その子と友達になろうと思って、“カラオケ行こうよ!”って声かけに行ったら、“大森さんと仲良くなっちゃダメだよ”って、すでに言われてて」
――そういうレベルの人だったんですね(笑)。
「でも、強制的に連れてって、友達になったりしたから大丈夫だったんですけど。それまでは、なんで何やってもダメなんだろうとかはありました」
――確実にそのトラウマがベースにはなってますよね。
「冷静に、自分が興味あることとか興味ある人を分析してみると、普通の人はどうなんだろうっていう体で、自分と近いところとか、人とズレてるところを探してるみたいな。“なんだお前もこうじゃん!”って安心したみたいなところがあるんだと思います。愚痴とか出ちゃうのが好きとか」
――道重さんの魅力はそこですもんね。頑張ってるのに、つい漏れちゃう弱音とか。
「あんなにキラキラしてるのに、ラジオでびーびー泣いてるのとかほんと好きで」
――最高でしたもんね。ボクも本人に直接伝えました。あのジェラシーの感じが最高で!
「ほんと最高ですよね!」
――「私が頑張ってブログ始めたのに、他の子も始めるなんて(泣)!」みたいな(笑)。
「わたしはあんなに頑張って手に入れたのに、みんなは何も頑張ってないくせにブログ始めやがって!って(笑)。10期が入ってきたときも、ファンを続けてると“そろそろくるな”ってのがわかるじゃないですか。そろそろ歪みが来てるぞって。そこでやっぱりコンサートとかで、“なんで6期はバスツアーがないんですか?”とか言っちゃったり」
――あの事務所に直訴する感じ、いいですよね。
「溜めて溜めて言うじゃないですか。あれ、ほんと好き。自分と近い人を道重さんはあんまり良く思ってないんじゃないかな。たぶん
生田(衣梨奈)とか、道重さんと近い性格のはずなのに、あんまり興味持ってない感じとか。自分と近い人を祖末にする感じとか好きで」
――生田さんの扱いは雑ですよね(笑)。
「でも、結構似てるんですよね」
――たしかに大森さんとも似てるとも言えますよね。基本、キモヲタ側の人っていうか。道重さんの話だと本当に饒舌ですけど、自分の音楽についてもこれくらい語れるんですか?
「無理です!」
――即答(笑)。
「そこは直枝さんとかに全部喋ってもらって」
――プロデューサー任せにして。でも、気に入ってる作品ではあるんですよね。
「気に入ってます。一応、こういうイメージでっていうのは言ってて。これはキラキラしてるから
相対性理論っぽくして下さいとか」
――意外とそういうストレートな頼み方するんですよね。前も、“きゃりーぱみゅぱみゅみたいにしてください”とか言ってたみたいですけど。 「もう、なんでもいいんですよ」
――わぁ(笑)。
――それもあったんですか!
「中島みゆきっぽくしてくださいとか。だいたい曲を作るときに、これっぽい曲を作ろうとは思ってて。要は覚えやすいメロディで、かわいい音だったらなんでもいいんですよ。まぁ、歌詞がおもしろければいいんで」
いっぱい知識があって音楽をやってる人って、
自分の作品を作りたいっていう意識があるから、
余計な音がめちゃくちゃ多いんですよ。それがかわいそうだなと思って。
――ラジオでも言いましたけど、歌詞が刺さってくるというよりは、意図的に刺しにきてますもんね。
「言葉でおもしろくするのが好きだから。いっぱい知識があって音楽をやってる人って、自分の作品を作りたいっていう意識があるから、余計な音がめちゃくちゃ多いんですよ。それがかわいそうだなと思って。無理矢理自分らしさみたいなのを出すことに固執してるせいでメロディが全然入ってこないとか。そういうのが多くて、ミュージシャンって大変だなって思います」
――他人事だなあ(笑)。
「自分はそこを考えてないから楽だなって。“みんなのうた”みたいな覚えやすいメロディでいい」
――サザンみたいな、くらいの雑な感じでいいんですね。
「なんでもいいです。かわいくなきゃダメだけど」
――かわいいメロディでひっかかる言葉があればいいっていう。そういう音楽で影響受けたものってなかったんですか? 椎名林檎に影響を受けたことはない? 「椎名林檎は普通に好きですけど言葉選びとかは全然好きじゃなくて。声かっこいいなとかパフォーマンスかっこいいなとか」
――声は完璧ですよね。
「歌詞は逆にちょっと。もっと簡単でもいいじゃんって思います」
――難しい言葉を使い過ぎでしょっていう。
「わかんないなぁ、みたいなのが多い。
銀杏BOYZがすごい好きで」
――銀杏BOYZとシンクロする部分があるとしたら、峯田くんが中学時代に女教師にずっとイタズラされてたみたいな、性的な歪みなんでしょうね。 「あぁ、やっぱりそうなんですね」
――セックス以外のことは全部やらされたっていう。
「そうなんだ。PVでもそういうのありますもんね。私の世代は銀杏BOYZ聴いて音楽やってる人がいっぱいいて、銀杏BOYZと対バンしたくてやってるのに、今いないみたいな。すごい鬱憤あると思いますよ、同世代のミュージシャンは。あのやり逃げ感はキツいですね」
――そういえば松田龍平さんと峯田君の対談をやったときに、「友達がいまAKB48にハマってるんだけど」って松田龍平さんが峯田君に言ったら「握手会に行こうよ!」って誘ってましたよ。 「へー。AKBも叩かれてる子ほど好きになっちゃうんですよね。なんなんですかね?」
――指原さんが叩かれてるのを見て急に興味出るみたいな。 「そうそうそう」
――指原さん、ただのハロヲタだから絶対に意気投合できますよね。ボクがインタビューしたときもずっとハロプロの魅力を語ってて。AKBの魅力とか全然語らないんですよ(笑)。「ハロプロだけがあればいいんです! 移動中もハロプロのDVDしか見てないです!」って(笑)。
「そうなんですよ。最初から指原さんはハロヲタだから、いいなって目で見てたんです。頑張ってる感じとか、かわいくない感じとか、好きだなと思って見てて。
こじはる(小嶋陽菜)が、おっぱいが離れてるのを気にしてるって話を聞いてから、こじはるのグラビアを改めて見てみると、たしかに無理矢理すごいくっつけてて。そういうの見ると好きになっちゃうんですよ。コンプレックスの部分を過剰に直してるのとか」
――AKBも楽しめるんですね、ちゃんと。
「そういうので好きになっちゃう。あと
みおりん(市川美織 / AKB48,
NMB48)がほんとに好きなんです。最近NMB内で“レモンばばあ”って言われてるんですよ!」
――ダハハハハ! まだ19歳とかですよね? 確かにグループの平均年齢は低いだろうけど。
「あんなにかわいいのにレモンばばあですよ? 顔はもともと好きで、道重さんのこと好きですって言ってくれてるので写真も集めてたんですけど、それを聞いて大好きになっちゃって。ブログとかすごいチェックしてます」
――大森さんもピンクばばあですもんね(笑)。
「はい。ピンクおばさんってネットで言われてて、自分で言ったらスッキリしましたけど。レモンばばあって最高じゃないですか。レモンとばばあの字面の響きが、もう。女子高生のなかで生まれるみたいな発明的な言葉ってすごいですよね」
――大森さん、ラジオやるべきですよ! こういうフリートークして曲を流してたら大丈夫です。全然もちますよ!
「すごいやりたい! ラジオやりたくてしょうがない。ミュージシャンってインタビュー嫌いな人が多いですよね。でも私、大好きで。喋りたくてしょうがない」
――音楽の話以外でどれだけ対応できるかっていうのがあるんじゃないですか。
「でも、私は音楽の話できないんで。どうすればいいかわからない。『ミュージック・マガジン』の取材とか、音楽の話されたらどうしようと思いながらビクビクしてて」
――音楽の話しかしないミュージシャンとか本当に困るんですよ。それでいて音楽にもそんなに詳しくなかったりすると、音楽を辞めろって言いたくなる。
「私の場合、音楽に詳しくないコンプレックスがすごいあるから、ハロプロの話を出しちゃえっていう(笑)」
――これなら詳しいからって(笑)。
「そうそう。だって勝てないじゃないですか、音楽に詳しい人には。そこまで詳しくないとは思ってないですけど」
――音楽の話もそれなりにはできる、と。
「できますけど、本物の人がいっぱいいるんで」
――本気で命かけて音楽やろうとしてる人もいる中で、有名になりたいだけなんでっていうのは……。
「そうですね。悪いなって」
「だからアレンジはもう任せたいんです。アレンジできないんで、私」
――あのアレンジはお任せなんですか?
「いい悪いっていうのはわかるんですけど、“こういう風にして下さい”っていうのがわからなくて。だからダメだしはするけど、答えは言わないみたいな。最悪な、ドSプロデューサーみたいな。“これ違うんだよね”だけ言って帰るっていう」
――でも、その結果がこれならいいですよね。
「ミュージシャンで私を使おうっていう人が好きで。単純に嬉しいっていうのと、上り調子のときに使ってやろうみたいな、あざとさが見える人が好き」
――今、大森靖子と絡んでおいたら損はないぞ、みたいな。
「そう思ってる人が好きなんです。そのくらい頭使ってほしいですよね。今、私と絡んだら絶対いいことあるじゃないですか。なぜしない!? っていう」
――話が来たらほいほい乗るくらいの、“コラボヤリマン”状態で。
「ほんとそうです」
――℃-uteのカヴァー(「大きな愛でもてなして」)も別物になってましたね。 「来来来チームもハロプロ好きだから、ライヴやるときにいろいろハロプロの曲やろうってなって。アレンジやってみたんですけど、全部ダサい
シャ乱Qみたいになっちゃって」
――ダハハハハ!
「まぁ、バンドにするとそうなるよね、みたいな。すげえダサいんですよ。シャ乱Qは演奏が上手いから、うちらがやると下手なシャ乱Qみたいになっちゃって。それで、こうなりました」
――前も言ったけど、ハロプロのカヴァー集出して下さいよ。
「出したいです。意外に〈I&YOU&I&YOU&I〉も〈大きな愛でもてなして〉も、アップフロントさんに言ったら、いいですよみたいな感じでカヴァーさせてくれて。こんなに簡単に出させてくれるんだって」
――モーニング娘。の「シャボン玉」がほんとにハマってたんで、あれをちゃんとした音源で聴きたいなって。
「この前、
チャラン・ポ・ランタンと一緒に〈シャボン玉〉やったんですけど、すごい気持ちよかったです。まぁそりゃハマりますよね」
――今後もこういう風に一作品に一個ずつハロプロカヴァーが入っていくのかなと思ってて。
「入れたい!」
取材・文 / 吉田 豪(2013年11月)
撮影 / 相澤心也