アメリカ〈アカデミー賞〉公認、アジア最大級の国際短編映画祭〈Short Shorts Film Festival & Asia(SSFF & ASIA)〉(
www.shortshorts.org )。俳優の
別所哲也 を代表として、1999年に東京・原宿でスタートしたこの映画祭は、映像表現のいちジャンル、次世代を担うビジュアル・コンテンツとして注目を集める“ショートフィルム(短編映画)”を対象とするもの。 2014年度は、「オフィシャルコンペティション(ジャパン部門)」、環境問題をテーマとした「地球を救え!部門」、世界各国から広く作品を募集する「CGアニメーション部門」、そして、レーベルやアーティストからの提供楽曲を使用し、クリエイターが自由にオリジナルのミュージック・ショートフィルムを制作する「ミュージックShort部門」の4部門にて作品を募集中。今回は、「ミュージックShort部門」へ書き下ろしの新曲「さかさま東京」
を提供した8bitミュージック・ユニット、
YMCK (除村武志 / 栗原みどり / 中村智之)に話を訊いた。
――〈Short Shorts Film Festival & Asia〉との出会いは何がきっかけだったのでしょうか。
栗原みどり(以下、栗原) 「まず、何年も前に“楽曲を使わせて欲しい”というメールが海外からWebサイトに届いて。“いいですよ”と返事を出したんですが、特にその後連絡がなかったので。忘れていました。そこへ今年、日本の〈SSFF & ASIA〉の方からご連絡を頂いて、特別上映作品として〈CGアニメーション部門〉に出品されていた『8BITS』という作品に使われていることを知ったんです。それがきっかけで、この部門のQ&Aに参加させて頂きました」
『8BITS』 2010年 / フランス DIRECTOR:Valere Amirault, Jean Delaunay, Sarah Laufer, Benjamin Mattern CG専門大学である「SUPINFOCOM」在学中に4人の学生クリエイターが作り出した卒業制作作品。エンディング曲として、YMCK「MAGICAL 8-BIT TOUR」が使われている。
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[STORY] ゲームの世界は非情である。何年経っても何も変わらない――勝った者だけが生き延びる。いくらテクノロジーが進化しても、目指すべき先は変わらない。今、新たな革命がレトロゲームを支配しようとしている。ジョンは救世主となりこの窮地を救えるのか?http://www.8bitsmovie.com/ 除村武志(以下、除村) 「〈CGアニメーション部門〉の作品は一通り観たんですが、ストーリーがシュールなものもあったり、バラエティが豊富でしたね」
栗原 「今は誰でも動画を公開できますが、その分、数も膨大で、いいものを見つけるのが難しいと思うんですね。映画祭という形でまとめてもらうのは、作品に触れるいい機会になると思いました。私たちもこの映画祭のおかげで曲が使われていることを知ることができました」
中村智之(以下、中村) 「実際に会場へ行って作品を観るまでは、短編っていうこともあってか、ちょっと、監督のひとりよがりなものが多いんじゃないかなって思っていたところがあったんです。でも観てみたら、どれも映像作品として素晴らしくて。作り手の中だけで完結するのではなく、観ている僕らへ“伝える”という要素がしっかりとあるものが選ばれていて、とても素敵だなと思いました」
栗原 「パンフレットを眺めるだけでも面白いですね」
中村 「ちなみに、これ(『DE_RIRIA_SUBASUTAIMU』[2012年] / DIRECTOR:Shinsaku Hidaka)、すごい好きだった」
栗原 「あー! これねえ! なんか不安な気分にさせるんだよね」
中村 「こっち(『MY NAME IS NATHAN』[2012年] / DIRECTOR:Benoit Berthe)はもっと続きが観たかったんですよ」
除村 「ちょっと短かったんだよね。それ(『Autumn Leaves』[2013年] / DIRECTOR:Aude Danset & Carlos De Callvaho / 優秀賞受賞)は綺麗だったなあ」
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――『8BITS』をご覧になってみていかがでしたか?
除村 「凄かったですね、良く出来ていて」
中村 「画面が派手に動いて、映画なんですけど、自分がその世界にプレイヤーとして参加しているような気分にさせられるというか。なんだか観た後、めちゃくちゃゲームがしたくなりましたね」
栗原 「YMCKはドットで映像を全部作っているのですが、この作品は『8BITS』というタイトルだけど、本編でほぼドットは使っていないんですよ。それも新鮮だったし、色んなアプローチがあっていいんだなと思いました。この映像に、YMCKの曲を選んでくれたのが嬉しかったです」
――そして今回、2014年度の〈ミュージックShort部門〉ではエントリー楽曲として書き下ろしの新曲「さかさま東京」を提供されています。
YMCK “さかさま東京”
栗原 「“映画に使える曲”を提供したいなと思いました」
除村 「普段の作曲とかけ離れているわけではないですが、エントリー楽曲ということで、映像を付ける時に面白くなるように。短い曲なんですけど、展開を多く盛り込んだというのはありますね。色々と場面を切り替えたりしてもらえたらいいかな」
――ご自身で映像も作っていらっしゃいますが、どんな工程を経て制作されているんでしょうか。
栗原 「大体は中村がメインで、グラフィックを書いて」
除村 「あとは皆で、あーでもない、こーでもないって、ケチをつける」
中村 「そんな状況で作っています(笑)」
――他のアーティストの方が映像を作るということについては、どんな考えをお持ちでしょう。
栗原 「今まで正式に、ミュージック・ビデオを誰かにお願いしたことはないですが、とても観てみたいです! 動画サイトで、YMCKの曲に合わせて映像を作ってアップしてくれている方がいて、そういうのを見つけるととても嬉しいです。今回はそれが映画祭という形で出来るので、本当に楽しみです。(映像を)作ってくれる人がいるといいな、と思います」
除村 「作ってくれる人いるのかな」
中村 「いるといいな」
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――メンバー3人で作りこんだものじゃないと……っていうこだわりが強いのかと思っていたんですが。
栗原 「真逆ですね、色んな視点から観てみたいです」
除村 「広げたいんですけどね。あんまり周りからはそう見えないみたいで」
――それでは、今回楽曲を提供するということについては?
除村 「かなり期待しています。誰も作ってくれなかったらどうしようっていうのが一番心配」
中村 「誰も作ってくれなかったら自分たちで応募します(笑)」
――願望じゃないですけど、どんな映像を観たいとかありますか?
栗原 「『8BITS』は3DのCGだったんですが、やっぱり“ピコピコした音はドット”っていうのを抜けた、ぶっ飛んだ表現が観たいです」
除村 「ね。例えばクレイ・アニメとか」
栗原 「そうそうそう! 指人形のコマ撮りとか」
除村 「フル・アニメーションとか」
中村 「実写でもいいかな」
栗原 「これまでなかった表現の仕方に8bitの音楽が出会った時、また新しい8bitの価値が見出されるかもしれないし、それが観たいなと思います」
除村 「あとは、歌詞に注目してもらうのもいいですね。題名の通りテーマは“東京”で」
中村 「歌詞は結構、シニカルな内容だったり、捉え方だったりするんですけど」
除村 「面白いような、面白くないような“東京”、いろんなものがあるはずなのに、みんな同じにも見えてしまったり……そんな歌詞になっているんですけど、そこを汲み取ってもらって作って頂いても嬉しいです。どんなアプローチも歓迎です、お待ちしております(笑)」
栗原 「私たちが発表してきた映像は、あれはあれで置いておいて、自由に制作していただけたら嬉しいです」
中村 「……敢えて“究極のドット”っていうのも観てみたい気もする」
栗原 「めっちゃハードル高いじゃん、それ!」
中村 「僕ら8bitでやってるじゃないですか、それを『メタルスラッグ』ばりの“ちょっと、大丈夫?”っていうレベルまで作りこむ」
除村 「好きだねー、そういうの!」
中村 「んー……僕、大好きなんで、そういうの。もし出てきちゃったら、次からは“ちょっと頼みますよ”と」
除村 「発注がはじまるんだ(笑)」
――YMCKとして、映像でドット以外のアプローチを試されたことは?
栗原 「ないけど、是非やってみたいです」
除村 「アイディア自体は結構出してる」
栗原 「まだ出来てはないですけど。着ぐるみを持ってるんで、あれを使ってもいいですね。今思い出した(笑)。持っているドットの着ぐるみは、遠目には角ばってるんですけど、近くで見るとすっごいフワフワで、すっごい大きいんです。ハイエースにギリギリ乗る大きさで。今は倉庫に眠っちゃったままなので是非お見せしたいです」
中村 「ライヴで使ったんですけど、相当キツいんですよ」
除村 「2人ともバテすぎだったよ」
栗原 「いや、大変だよ! あれは」
中村 「……僕ね、訓練というか、(着ぐるみ用に)ウォーキングとか、レバー食べたりして備えてたんですけど、本番は……」
除村 「付け焼刃すぎるだろ(笑)」
中村 「あれでMV作るのもいいかもね、たった今、思った(笑)」
――今回は楽曲提供という形で参加されていますけど、今後は映像も含めての参加にも期待してしまうのですが。
中村 「すごく、興味があります」
除村 「ドット、8bitでどこまで表現できるのか、ってところに振ってみたら面白いかもしれない」
栗原 「そうだね。YMCKのロゴで使っているキャラの顔は、目しかなくて。喜怒哀楽を顔で表現できないんですよ。でも、その縛りの中で、縛りの中だからこそ出来ることって、まだまだあるような気がしていて。挑戦したい気持ちがすごくあります」
YMCK “FAMILY DAYS”
――活動10周年、ニュー・アルバム『FAMILY DAYS』を発表と、大きなタームを迎えた2013年を経て、2014年の活動はどんなことを考えていますか。
除村 「そんな話を今、ちょうどしています。最終的にイベントをドーンとやることにして、そこへ向けて作品も出すし、イベントにも出る……みたいな、一年ぐらいかけて大きな流れを作って活動したいなと思っています。まだぼんやりした話なんですが」
栗原 「今年は『FAMILY DAYS』をリリースするっていうことが目標になっていたんですけど、来年はリリースもライヴも、意味と流れをもって、全部が繋がっていけるような」
除村 「あとは、チップチューンのアーティストで“集まりたいな”って思っています。イベントですかね。“盛り上がってるな”って感じが出せたらいいなあ」
中村 「うーん……。個人的なところで言うと、ラップは『FAMILY DAYS』のレコ発で卒業したので、次は……モノマネですか。“ニャンちゅう”の」
栗原 「応援しています(笑)」
2014年1月25日(土) 東京 吉祥寺 Star Pine's Cafe 〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町1-20-16 B1 / 0422-23-2251 START 23:59 〜 5:00 前売 3,500円 / 当日 3,800円(+1Drink) [LIVE] Omodaka / SEXY-SYNTHESIZER / YMCK / Kplecraft / CLACHIP [GUEST MC] ブルボン小林 [HOST MC] smallest [DJ / VJ] Julie Watai / smallest / DJ マスカット大統領 / Sakagami / レーズン大統領
Joy Ride vol.154
2014年2月16日(日) 東京 KOENJI HIGH 〒166-0003 東京都杉並区高円寺南4-30-1 03-5378-0382 OPEN 17:30 / START 18:00 前売 3,500円 / 当日 4,000円 [LIVE] FLOPPY / PEVO / YMCK