今の自分を褒める覚悟――真心ブラザーズが新レーベルよりシングル「I

真心ブラザーズ   2014/03/18掲載
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 デビュー25周年を迎えた真心ブラザーズがニューシングル「I'M SO GREAT!」(映画『猫侍』主題歌)をリリース! 自身らの新レーベル「Do Things Recordings」の第一弾作品として発表されるこの曲は、シンプルかつダイレクトなバンド・サウンドと“今の自分を褒めろ”というメッセージがひとつになったロックンロール・ナンバーに仕上がった。4月からは全国ツアー〈WE ARE SO GREAT! 〜俺たち、エライよね〜〉もスタート。さらにスピードを増している“2014年の真心ブラザーズ”について、YO-KING桜井秀俊にたっぷりと語ってもらった。
――まずは新レーベル「Do Things Recordings」について聞かせてください。新しい環境はどうですか?
桜井 「具体的に何が出来るかは、正直よくわかってないんですけどね(笑)。ただ、フットワークの軽さとか身軽さっていうのは、あったほうがいいと思うんですよ。音楽以外の人と知り合うなかで生まれてくる表現とか、酒の席で思いついたアイディアなんかも、すぐにカタチに出来るというか。こっちが盛り上がっているうちにお客さんに届けられるスピード感って、やっぱり大事なので」
――自身のレーベルを持つことで、さらにスピードが上がる、と。
桜井 「それが出来たら楽しいですよね。その分、身勝手になっちゃう危険もあるんですけど」
――こちらから見てると、“いつも自由に好きなことをやってる”というイメージが強いですけどね、真心ブラザーズは。興味のある方向にバッと進んじゃうというか。
YO-KING 「そうですよね(笑)。この前、佐久間正英さんが亡くなったときに経歴を改めて見てると、“あ、この人も佐久間さんがやってたんだ”とか“このバンドのプロデュースもやってたのか”というのがけっこうあって。そのとき思ったんですよね。そういえば俺たち、プロデューサーと仕事したことって1回しかないなって」
桜井 「そうだね」
YO-KING 「“すごい初期の頃に、名プロデューサーと言われる人と仕事してたら良かったのかもな”とか。そしたら東京ドームで3daysくらいやってたかも。口パクになって、ヴォーグ・ダンス踊ったりして(笑)」
桜井 「ハハハハハ!」
――25年間、ほぼ全部セルフプロデュースだったっていう。それも凄いことですけどね。
YO-KING 「最初からずっと自由にやってますからね。メンバーのOKが取れたら、そのままお客さんの耳に行っちゃうっていう。それが当たり前と思ってた節もあったし。もちろん、いいところもあるし、悪いところもあるんですけどね」
2014年2月22日開催〈今年も中野で会いましょう 2014〉
――今回のシングルも当然、現在のふたりのモードがめちゃくちゃ強く反映されていて。「I'M SO GREAT!」というタイトルって、YO-KINGさんの哲学に直結してますよね?
YO-KING 「うん、そうですね。久しぶりにこういう攻撃的な曲が出来たなって。“ウニやクリになれ”っていう素晴らしい歌詞もあるし(笑)。丸くなってもいいんだけど、時々はトゲを出していこうぜってことなんだけど。すごい想像力でしょ?」
桜井 「まさに童心ですね(レーベル名の“Do Things”には“童心”という意味が含まれている)」
――最初から「アグレッシヴな曲にしよう」という意識はあったんですか?
YO-KING 「えーとね、『猫侍』の主題歌のお話を受けてから作り始めたんですよ。完成間近の『猫侍』を見せてもらって、そこから広げていって。曲を作るときは、いつも“インスピレーション待ち”なんですよ。ギターを持ってiPhoneに録音するだけなんですけど(笑)、何かとっかかりが出てきたら、あとは流れで作っていくっていう」
――「I'M SO GREAT!」というワードを思いついたら、あとは一気に行けそうですよね。
YO-KING 「最初は“I'M SO GREAT!”のあとに別の歌詞を入れようと思ってたんですけど、そのうちに、全部“I'M SO GREAT”がいいなって(笑)。この言葉が強すぎて、その後に何を持ってきても負けちゃうんですよ。だったら、これを連呼したほうがいいでしょ? ただね、“I'M SO GREAT!”って“俺は偉大だ”っていうだけじゃなくて――そう思ってもらってもいいんだけど――どっちかっていうと“俺、がんばってるよな”っていうニュアンスが入ってるんですよ。“俺ってエライよな”って自分で自分を褒めて、それをガソリンにして楽しく生きていこうっていう。まあ、“こいつアホだな”って感じで楽しんでもらってもいいんですけどね。リンゴ・スターの〈I'm The Greatest〉という曲があって、それも少し頭にあったかな」
桜井 「リンゴ・スターさん、言うねえ」
YO-KING 「言うよ(笑)。でも、確かジョンの詞曲だったかな? それはきっと“俺は偉大だ”ってことでしょ、きっと。こっちはちょっと違うんだよね。家に帰って、湯船に浸かって“俺、がんばってるよな”っていう感じというか(笑)。そういうひと言を言えない人って多いと思うんだよね、世の中」
――ものすごく多いでしょうね。自己評価が低いというか。
YO-KING 「そう、自分を責めちゃうんだよね。自分のイヤな部分にフォーカスするというか……。だからね、覚悟しなくちゃいけないんだよ。“俺は自分のいいところを見るぞ”って」
「I'M SO GREAT!」
――なるほど。ちなみにYO-KINGさんはいつからそういう考えなんですか?
YO-KING 「小学校……いや、幼稚園かな。幼稚園のときに“人気者で行こう”って決めたんですよ。たまたまの流れで人気者になって、“いいな、これ”って。サザンにもあるからね、『人気者で行こう』」
桜井 「アルバムのタイトルね」
YO-KING 「きっと桑田さんも決めたんじゃない? “俺は人気者で行こう”って。世の中も明るいしね、こういう曲が流行ったほうが」
――4月から始まるツアーのタイトルも〈WE ARE SO GREAT! 〜俺たち、エライよね〜〉だし。
YO-KING 「そうそう、そういうことなんですよ。ちょっと『あまちゃん』とカブっちゃったけど」
桜井 「『あまちゃん』は何だっけ?」
YO-KING 「“おらたち、熱いよね”かな」
――(笑)僕のまわりの真心ファンも「真心はエラい」って言いますね。
YO-KING 「お! やっぱりそうでしょ」
――「ライヴに行くと“やってほしい”と思ってる曲を全部やってくれるし、しかもぜんぜん飽きない」って。
桜井 「嬉しいっすね、それは」
YO-KING 「特に中野サンプラザのライヴは、そういう趣旨でやってるからね。(セットリストが)確かに決まってきちゃうけど、それをイヤとも思わないというか。芸人志向が強まってるところもあるんだよね。舞台に上がったら、目の前にいる人たちを満足させなくちゃいけないっていう。こっちがやりたことをやるというより、お客さんを楽しませるほうにシフトしてるんじゃないかな、いまは。だってさ、“俺らはやりたいことをやる。つまらないと思ったら、次は来なくていい”みたい我の強いライヴをやられると、ゲンナリするじゃん」
――ポール・マッカートニーの最近のライヴもヒット曲大会ですからね。
YO-KING 「ポールの凄さって、そこでしょ? 東京ドームで〈イエスタデイ〉を歌うっていう、ビジネスど真ん中でやってる姿に感動するっていうか。70代で“商売っ気”たっぷりっていうのはいいよね。まあ、4月から始まる俺らのツアーはちょっと違うんだけどね。4人バンドでやるし、ロックロールで攻めようと思ってるから」
――「I'M SO GREAT!」もセットリストの定番に入ってきそうじゃないですか?
YO-KING 「うん、入ると思いますよ」
桜井 「〈どか〜ん〉からの!」
YO-KING 「いいねえ(笑)」
桜井 「ぜんぜん曲を知らなくても、イヤでも覚えちゃうだろうし(笑)」
YO-KING 「〈I'M SO GREAT!〉って連呼してるからね」
――カップリング曲の「Welcome to the world」は桜井さんの作詞、作曲ですね。
桜井 「これも最近の曲ですね。このシングルのカップリング用に作ったんですけど、YO-KINGさんから“三拍子でスカスカの曲がいい”っていう話があって。三拍子はちょっと難しかったんですけど、スカスカと言うか、隙間がある曲になってます。歌詞の行間もそうだし、あとは単純に音符と音符の隙間だったり。余地がある曲っていうか」
YO-KING 「春のツアーでロックンロールとかブルースとか、そういう曲をやりたいと思って、それ用の良い曲がほしいなって」
――現在のモードが反映されてる、と。
YO-KING 「まあ、ローリング・ストーンズはずっと聴いてますからね。またさ、昔の音源を上手いことコチョコチョ出してくるんですよ、ストーンズが。金あるから買っちゃうんだけど(笑)、それがホントに良くて。俺らもブルースみたいな曲は脈々とやってきてるし、真心の歴史のなかの“2014年のブルースっぽい曲”ってことだよね」
桜井 「2014年に、この音の少なさは事件ですよ。ドラムとベースはYO-KINGさんなんだけど、まあ、弾かない弾かない」
YO-KING 「基本、弾かないね(笑)。レコーディングも早く終わるしね」
桜井 「ももクロの50分の1くらいの音数じゃないですか、これ(笑)」
――最近の若いバンドの曲も、音数が増える傾向にありますからね。
桜井 「そうですよね。言葉の数も多いし。それはそれでいいと思うんだけど……」
YO-KING 「どっちかだよね。過剰に多いか、過剰に少ないか。俺らは“引き算”なんですよ。迷ったら、引く。だからリンスもしないよ」
桜井 「すごい。リンスしないのに、46歳で天使の輪ですよ」
――(笑)。そういえば最近のストーンズのライヴの映像を見てても、音数はかなり少なめですよね。
YO-KING 「ストーンズもさ、サポートメンバーが増えて、隙間を埋めてた時代があったじゃない? “そういうことじゃないんだな”って思ったんだよ、きっと。俺と同じ気分だね(笑)」
――最後に今後の展開についても聞かせてください。「I'M SO GREAT!」というテンションの高い曲をリリースして、活動のペースも上がっていきそうな雰囲気になってると思うのですが……。
桜井 「うん、やりますよ! 新レーベルからの最初のシングルが、こういう勢いのある曲になりましたからね。いい巡り合わせじゃないかな、と」
YO-KING 「2曲ともホントにやりたいことですからね。ぜんぜん無理してないし、バランスを取ったわけでもないし……って、いま思いました。〈I'M SO GREAT!〉はテンションが高いというより、“元気がある”って感じだけどね。元気があるおじさん(笑)」
桜井 「“今日の課長、ごきげんだわ”って(笑)」
YO-KING 「"今日の"じゃなくて、“課長、いつもごきげんね”ってなったら最高だけどね」
――ライヴのMCでも言ってますけど、ごきげんキープは大事ですよね〜。
YO-KING 「大事ですね。ゲーテが言った言葉で“人間の最大の罪は不機嫌である”っていうのがあって。さすが、ゲーテはわかってる(笑)。“最大のボランティアは上機嫌”って言った人もいるしね」
桜井 「まわりの人にうつりますからね、ご機嫌も不機嫌も。だったら機嫌良くしてたほうが」
YO-KING 「単純に得なことが多いんですよ、体験的に言っても。不機嫌な時間ってイヤっていうか、つまんないでしょ」
――そうですね。機嫌悪い人って多いですけどね、電車のなかとかネットのなかとか。
YO-KING 「いつも不機嫌な人って、子供なんだよね。子供って、自分の機嫌を取れないから。だから〈I'M SO GREAT!〉ですよ。ひとりひとりが自分の機嫌を取れば、世界中から不機嫌がなくなるっていうね」
――壮大な話になりましたね(笑)。でも、いまの時代に必要なメッセージだと思います。
YO-KING 「やっと時代が追いついてきたね(笑)。昔はポカーンとされてたんだから」
――同じことを言ってても?
YO-KING 「まあ、いまよりもハシャイでたけどね。ハシャイでる人を見るのって、そんなにいいもんじゃないんだなってことに気づきました(笑)。あんまりハシャギ過ぎないで、元気だけ出していったほうがいいよね」
桜井 「大人っすね〜」
YO-KING 「“楽しそうでいいな”と思ってもらうだけでも嬉しいけどね」
――このシングル以降も制作は続いていきそうですか?
桜井 「そうですね。4月のツアーのなかで、現場で躍動しつつ、曲作りを進めていきたいなって考えているので。躍動感のあるものを作りたいんですよ、次は。部屋でひとりで作ってるよりも、バンドと一緒にワーッとやってる期間の身体でやりたいな、と。そうやって作ったもののほうがリアルなんですよね、やっぱり。そこで曲がたまってくれば、アルバムも作りたいし。25周年ですからね。せめてアルバムくらいは出したいじゃないですか」
YO-KING 「生き生きとした感じというかね。まず、いい音で録れる自信はあるんです。たとえば『KING OF ROCK』を95年に出したときも、曲はもちろんいいんだけど、仲間から“音がいいね”ってすごくホメられたんですよ。そこから20年経って、あのアルバムとは違う“いい音”っていうのがわかってきて。艶というかウェットというか、音のイメージはあるんですよね、頭のなかに。だから、あとは曲!」
桜井 「ハハハハハ!」
YO-KING 「まあ、出来ると思うけどね(笑)。20年前に比べるとエンジニアの技術も上がってるし、楽器とか機材もすごく良くなってるじゃないですか。いまの叡智を結集して、いいアルバムを作りたいですね」
取材・文 / 森 朋之(2014年1月)
真心ブラザーズ
WE ARE SO GREAT! 〜俺たち、エライよね〜

2014年4月11日(金)〜2014年6月29日(日)

www.magokorobros.com
全会場 オールスタンディング
前売 ¥4,900 / 当日 ¥5,400(税込・ドリンク別)

※6月29日(日)「EX THEATER ROPPONGI」公演スタンド指定席のみ、前売 ¥5,400 / ¥5,900(税込・ドリンク別)。
※お問い合わせ:ホットスタッフ・プロモーション

[Tel]03-5720-9999

ARABAKI ROCK FEST.14
2014年4月26日(土)、4月27日(日)
arabaki.com
※出演日未定
宮城 みちのく公園北地区「エコキャンプみちのく」
※お問い合わせ:チケットGIP
[Tel]022-222-9999(24時間自動音声案内)

WORLD HAPPINESS 2014
2014年8月10日(日)
www.world-happiness.com
東京 夢の島公園陸上競技場
開場 11:00 / 開演 12:30

※お問い合わせ:ホットスタッフプロモーション
[Tel]03-5720-9999
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