ウォーペイントのキャリア通算2作目にして初のセルフ・タイトル作
『ウォーペイント』は、この4人が放つ孤高の存在感を改めて強調したような作品だ。R&Bをヒントにしたというダンサブルなビートを用いつつ、4年前の
『ザ・フール』よりさらに抽象的で浮遊感のある音像は、聴き手をスピリチュアルな精神状態へと誘っていくようだ。今回はそんな彼女たちの最新作に迫るべく、ヴォーカルとギターのエミリー・コーカルに話を聞いてみた。
――今回は共同プロデューサーのフラッドを待つために、ずいぶんとスケジュールが押したそうですね。つまり、そこで彼を待つだけの理由がなにかあったということ?
「ええ。というのも、彼が今までに手掛けてきた作品って、びっくりするほど作風が折衷されているでしょ。
U2みたいな大作があるかと思えば、
PJハーヴェイのレコードでは、デモが大々的に活かされていたりね。そうやって幅広く対応できる彼なら、私たちの“らしさ”を引き出してくれるような気がして。で、実際その通りになったと思うわ」
――メンバーがそれぞれ楽器を持ち替えながら曲づくりに臨んでいたという話も聞いたんですが。
「それは前作のツアーが続いた反動でもあるの。というのも、ライヴだとそれぞれが担当楽器をずっとプレイすることになるでしょ。だから、スタジオに入った時くらいは気分次第で誰が何を弾いてもOKな雰囲気でやりたくて。それに、私たちって自分の持ち場だけをしっかりこなせばいいようなバンドではないのよ。主な担当以外のことをやると閃きに繋がるし、その方がずっと楽しいから」
――歌詞については?
「ほとんどの曲は4人全員で書いたわ。あるいは2人の時もあるけれど、それもジャムっているうちにできていったもの。私が書いた歌詞も、最終的にはバンドの意見を取り入れているし」
――では、その歌詞や楽曲にインスピレーションを与えたものが何かあれば、ぜひ教えてほしいです。
「ツアーが終わった後、2ヵ月くらいオフを取ったのが大きかったかな。私、エジプトに行ったのよ。ピラミッドや寺院をあちこち訪ねて、あの驚異的な文化や歴史を吸収したんだけど、それがすっごく刺激的で。閉じていたものがパッと開いていくような経験だったわ。で、そこから戻ってきたら今度はジョシュアツリーに行って、4人で曲作りを始めたんだけど、そこがまたとてもインスピレーションを与えてくれる場所で。そういう環境からインスパイアされたところが今回のアルバムでは大きいのかもね」
――エジプトで曲を書いたりもしたんですか。
「歌詞はけっこう書いたけど、曲まではいかなかったかな。でも、ギターはよく弾いてた。船室が16個ぐらいの小さな客船で、ナイル川を下りながらいろいろな場所を訪ねて回ったんだけど、その船の乗組員と川辺で焚き火をしながら一緒にプレイしたこともあって。彼らはエジプトの弦楽器を弾く人たちなんだけど、女性がギターを弾くのはプレミア感があったみたい(笑)。彼らの弾くスケールに合わせてプレイするのもすごく勉強になったわ」
――あなたたちは今回の作品を“愛”のアルバムだと表現されているそうですね。
「そうだったかしら(笑)。でも、程度の差はあるにせよ、私たちの作品は常に“愛”を扱ってきたと思う。ただ、このアルバムに関していうと、恋愛度は低いんじゃないかしら。私にそういう相手がいない時だったのもあるし。今回の愛は人生におけるさまざまな形の愛だったと思う。だから、いわゆるラブ・ソングがあるかというと……でも、〈CC〉はジェンが旦那さんに贈った曲だし、〈Teese〉は間違いなくラヴ・ソングか。だから、いろいろね(笑)」
――音の面ではキーボードが前面に出ていて、それが今までとは違った味わいを醸していますよね。瞑想でもしているような気分にさせる音、というか。
「それも『ザ・フール』からの反動かな。毎晩ステージに上がってロックしまくるようなことを3年もやってきた後だから、このアルバムではもっとスペース(空間)を大事にして、音に広がりを持たせたくなったんだと思う。空間的に余裕のある音になったから、それが瞑想っぽい感触を付加しているんじゃないかしら」
――最終的にそれはどんな感情を持ったアルバムに仕上がったと思いますか。
「ピンクで、赤みを帯びていて、紫がかった……ハートね」
――ヴァレンタインなアルバム?
「あははは。私たち、ヴァレンタイン・デイに結成したバンドだからね」
Warpaint - Love Is To Die at Hostess Club Weekender 201402