HIGHASAKITE
“Silent Treatment”
これまで数々の良質なアーティストが輩出してきた音楽都市ノルウェーから、男女混成5人組のバンド、
ハイアズアカイトが通算2枚目のアルバム
『サイレント・トリートメント』で世界デビューした。北欧の大自然を連想させるような、美しく躍動感あふれるサウンドスケープは、
ボン・イヴェールことジャスティン・ヴァーノンも絶賛。メンバー全員がジャズ・スクール出身ということもあって、新人とは思えぬクオリティを誇っている。6月の〈
Hostess Club Weekender〉で、初来日を果たす彼ら。ヴォーカルで中心人物のイングリット・ヘレネ・ホヴィックにメールでインタビューをおこなった。
――バンド結成は、トロンハイムのノルウェー科学技術大学でイングリットとトロンド・ベルスが知り合ったのがキッカケだったそうですが、その頃はどんな音楽性だったのですか?
「ジャズのスクールに在籍していたときは、ジャズしか聴いていなかった。それも、ノルウェーのジャズが中心だったの。でも、結局ジャズには居場所を見いだすことができなかったから、これまで自分が聴いてきた、いわば“ルーツ”と呼べるような音楽をさかのぼっていった。そうしていくうちに成長期に聴いていた音楽にたどりついたというわけ」
――2人はジャズを専攻していたそうですが、ルーツはやはりジャズ?
「そう。メンバーは全員がジャズ・スクールの出身よ。今でもジャズを聴いているメンバーもいるし、エレクトロニック・ミュージックを聴いている人もいる。私たちはとてもオープンなので、どんな音楽からもインスパイアされるわ」
――あとからメンバーが加わり5人組になったことで、サウンドはどのように変わりましたか?
「まずは楽器の数がすごく増ふえた。あと、アイディアの数もね。それぞれのメンバーの影響がフィードバックされて、音楽的にとても豊かになったと思う」
――シンセサイザー奏者が、エイスティン・スカール、マルテ・エベルソンと2人いるのはユニークですが、どのような役割分担をしているのでしょうか。
「2人いるのは“シンセサイザーの多い音楽をやっているから”ってことに尽きるんじゃないかしら。音源に含まれているシンセサイザーのフレーズを、彼ら2人で手分けしながら再現しなければならないから。シンセに関しては役割分担みたいなものは特に決まっていなくて、2人でやりたいようにやってる。どのパートを誰がどうやって弾くかとか、新たなアイディアをお互いに出し合ったりしながらね」
――バンド結成当初は、ネイティヴ・アメリカンを意識したステージ・コスチュームをしていて、それはドキュメンタリー映画『インディアン・サマー』からのインスピレーションだったそうですが、統合失調症の少年を追ったその映画の、どのようなところに惹かれたのでしょうか。
「やっぱり、映画の主人公の考え方よね。映画の中の少年は自然というものをつねに身近に感じていて、逆に自分が受けている投薬とかそういった医療方法にしばられているとも感じている。私には、そういう彼の気持ちがわかる気がするわ」
――あなたのヴォーカルは、この世のものとは思えぬ美しさがあります。そのヴォーカル・スタイルは、どのようにして確立されたのでしょうか。個人的にはコクトー・ツインズのエリザベス・フレイザーや、ブルガリアン・ヴォイス、ビーチ・ハウスのヴィクトリア・ルグランなどを連想したのですが、影響を受けたヴォーカリストはいますか? 「今挙げてくれた音楽すべてを聴いてきたし、それ以外にもたくさんの音楽を聴いてきたわ。そんな中で、自分が心から良いと思えるサウンドを見つけ出し、それをたくさんレコーディングしてきた。ただそれだけよ」
「彼女たちの音楽は、すごく自分に近いなって思うの。彼らはとても明確なコンセプトを持っているし、音楽のコアの部分をとっても大切にしている。うーん、どう説明したらいいか分からないのだけど……。ともかく、私にとってそれは完璧と思えるの」
――ジャスティン・ヴァーノンが、あなたたちのことを大絶賛したことについてはどのような心境ですか? ボン・イヴェールやヴォルケーノ・クワイアなど、彼がやっている音楽についてはどう思っているのでしょうか。 「ボン・イヴェールは大好きよ。評価してくれたことはとても感謝するわ」
――アルバム『サイレント・トリートメント』を作るうえで何かテーマはありましたか?
「それはなかった。むしろ曲を書き終わったあとでテーマが見えてきたというか。もちろん、作り始めたときにはどういうサウンドにしたいのか、自分の中ではっきりとしたヴィジョンはあった。でもそこに、バンドのみんながたくさんのアイディアを寄せてくれたおかげで全然違うものになって、それが結果的に上手く作用したのよ。自分だけでは思いつかないような良いものができたと思う」
――ハイアズアカイトには、都会的な洗練さというよりは大自然の美しさ、厳しさ、壮大さを表わしたようなサウンドが多いと思ったのですが、それはネイティヴ・アメリカンへのあこがれや、北欧の大自然に対するリスペクトなどが含まれているのでしょうか。
「どれも関係ないと思う。だって私の場合、曲は家の中にいるときに浮かんでくるから。キッチンのテーブルについているときの場合もあるし、家の庭とかリビングにいるときの場合もあるわ。もし、わたしたちの音楽を聴いて何か特定のイメージを思い浮かべるとしたら、それはリスナー自身の問題なのじゃないかしら」
――自分たちのルーツはノルウェーであり、拠点はあくまでもオスロだそうですが、さまざまな国を訪れたことで、逆に気づいたノルウェーの良さ、ほかにはない魅力とは何だと思いますか?
「私たちはすごくラッキーなんだなって思った。安全だし、とても居心地のいい場所に住めているんだってことに気付いたわ。こんなふうに感じられる場所はほかには知らないし、まさに“故郷”っていう感じなのよね」
Hostess Club Weekender2014年6月21日(土) / 22日(日)東京 新木場 STUDIO COAST1日券 7,900円 (税込 / 別途ドリンク代)
2日通し券 13,900円 (税込 / 各日別途ドリンク代)[21日出演]
BLONDE REDHEAD / SIMIAN MOBILE DISCO / PERFUME GENIUS / SOHN / HIGHASAKITE ほか[22日出演]
CAT POWER / CLOUD NOTHINGS / JOAN AS POLICE WOMAN / THE BOHICAS ほか 大きな地図で見る