2000年代初めに社会現象となった映画『
アメリ』をデジタルリマスターしたアルバトロス・フィルム配給『アメリ デジタルリマスター版』が、11月17日(金)より東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、ユーロスペースほかにて全国順次公開を決定。それに併せ、ポスター・ヴィジュアルと著名人の応援コメントが発表されています。
90年代に『
デリカテッセン』『ロスト・チャイルド』『
エイリアン4』といったアーティスティックでダークな世界を得意とする映画を手掛けた
ジャン=ピエール・ジュネ監督が、「人々を幸せにする映画を撮りたい」と方向転換して、自分が好きなものと幸せの種を埋め込んだのが『アメリ』。パリの下町のモンパルナスを舞台にしたロマンティック・コメディは、フランスにて公開直後から「観る人みんなが幸せな気持ちになれる」と口コミが広がり、当時のシラク大統領やジョスパン首相も観賞するなど、2000年代初めに歴史を次々に塗り替え、社会現象となりました。“幸せの種”は世界中で芽吹き、各地でロングラン・ヒットを連発。2002年には映画界最高峰の祭典アカデミー賞で外国語映画賞、美術賞など5部門にノミネートされました。
日本公開は2001年11月17日。女性ファッション誌やカルチャー誌がおしゃれでかわいい『アメリ』を大々的に誌面で紹介し、庶民的なパリの風景に旅行好きも目をつけ、もちろんジュネ・ファンも最新作に期待し、公開前から話題となっていました。日本での上映館は今はなきミニシアター「渋谷シネマライズ」1館限定で、『アメリ』を待ち焦がれていた人々が朝からスペイン坂の上から井の頭通りまで並び、「観たいのに観られない!」との悲鳴もあがったとのこと。騒ぎを聞きつけたTVのワイドショーや男性週刊誌も『アメリ』現象を追いかけ、社会現象と化していきました。その後、北は北海道の旭川、南は沖縄・那覇まで、47都道府県、全160館の映画館で上映(再上映含む)されるなど、ミニシアター系映画としては異例の拡大公開を記録しました。
同時に、赤と緑を基調にしたポップなインテリアや、
オドレイ・トトゥが着こなすレトロなファッションに恋したファンに向けたムックやノベライズ、レシピ集、ヤン・ティルセンが手掛けた劇中音楽の楽譜集など関連書籍が続々と出版。アメリのベッドサイドに置かれるミヒャエル・ゾーヴァの豚さんランプは高値で取引され、アメリの世界を3Dで体験したいファンのために聖地巡礼ツアーが企画されるなど、『アメリ』はY2Kの日本で憧れの的になりました。
ショートボブにクリンとした瞳、口角をクニュッと丸めてほくそ笑むなど、いたずら好きなアメリを表情豊かに演じたのは、当時、映画デビューしたばかりのオドレイ・トトゥ。ジュネ監督は脚本段階で別の俳優を主演に想定していたものの、スケジュールの都合で断念。新たにキャスティングを始めたところ、『エステサロン/ヴィ−ナス・ビューティー』のポスターでトトゥを発見し、即採用したといいます。トトゥはキュートな笑顔と確かな演技力が相まって本作で大ブレイク。来日時にはとぼけたコメントで取材陣を笑わせるなど、アメリのような無邪気さで幸せを振りまき、彼女のいない『アメリ』は想像できないほどのはまり役と絶賛されました。
あれから20年以上経った2023年、名作『アメリ』がジュネ監督監修でデジタルリマスター化。色彩は鮮やかに、CG処理も最新技術できめ細やかになってスクリーンに再登場します。渋谷ユーロスペースでは公開時と同じ35mmフィルムでの上映もあり、ジュネ監督は新旧を見比べるお楽しみを用意してくれました。カフェでのんびりと噂話を楽しみ、キヨスクで毎朝、新聞を買うのが当たり前だったあの頃。スマホもSNSもない、人々がのほほんと暮らすパリの下町を覗けば、アメリのおせっかいにニヤニヤ、ロマンティックな隠れんぼに心がほっこりと、時が変わっても色褪せない魅力がたっぷり。何度観ても楽しめ、スクリーンで観たくなる映画となっています。
今回発表されたポスターヴィジュアルは、かつてのポスターデザインを踏襲したもの。ミヒャエル・ゾーヴァのシュールな絵画が飾られた真っ赤な壁紙の部屋のベッドでアメリがアルバムを眺めるシーンを切り取って、「幸せになる」というシンプルで潔いキャッチコピーが添えられた、温かな感情が込み上げてくるデザインとなっています。
公開に合わせて『アメリ』を愛する各界の著名人たちからも応援コメントが到着。音楽家の
青葉市子は「夢中でいれば、世界がちゃんと運んでくれる、そんな魔法が詰まった映画」と絶賛し、俳優・アーティストの
美波は「あの頃の自分に、あの頃のアメリに、もう一度出会える。その出会いは自分の価値観と可能性を大きく変えてくれた」と本作との出会いを振り返っています。そのほか、有賀薫、小谷実由、COFFEE BOY、原田ちあき、福田里香、真舘晴子、
安本彩花、やまもとりえがそれぞれ思い入れが感じられるコメントを寄せています。
[『アメリ』著名人応援コメント]めまぐるしく変化していく世界から、どんなピースを集めて人生を彩りましょうか。
夢中でいれば、世界がちゃんと運んでくれる、そんな魔法が詰まった映画だと思います。――青葉市子(音楽家)「こじらせ女子」なんて言葉がなかった頃の、幸せな個性のこじらせ方。
自信が持てない人でも心の殻を破る勇気がもらえる映画です。――有賀薫(スープ作家)誰かの日常を少しだけ幸せにすること。それは彼女にも、とっておきの小さな幸せ。積み重ねた小さな悪戯が、特大の幸せになって彼女のもとにやってくることを願わずにいられない。――小谷実由(モデル)アメリを観ると悔しくなる。ふくらむ妄想も幸せなイタズラもアイデアに溢れているから。魔法がなくても日常はファンタジー、それに気づかせてくれるアメリ。大好きです。――COFFEE BOY(イラストレーター)大人の毎日は味の薄いスープに似ている。
しかしほんの少しの嘘や工夫をスパイスにとびきり美味しくすることができるのだ。
きっと彼女はそれを誰よりも理解している。――原田ちあき(イラストレーター / 漫画家)ある意味、最高のフード映画です。
クリームブリュレをスプーンでカチ割るのも、
さくらんぼを耳に掛けてイヤリングにするのも、
フランボワーズを指サックにして食べるのも、
全部アメリに教わりました。――福田里香(菓子研究家)小学生の時、奥の部屋のドアに深緑の『アメリ』のポスターが貼ってあった。「魔法使いかな?」と中学生になって映画を見ると、それは手作りの魔法を教えてくれた。パリのオレンジ色の夕方のような。――真舘晴子(The Wisely Brothers / ミュージシャン)あの頃の自分に、あの頃のアメリに、もう一度出会える。
その出会いは自分の価値観と可能性を大きく変えてくれた。
また再び、止まらないドキドキを体感したい。――美波(俳優 / アーティスト)学生時代、理解出来ない自分が悔しく何度も見返した思い出の映画。 私にも私だけの特別な世界があり、それがお仕事に繋がっている事に気づけた時は幸せを感じました。――安本彩花(アイドルグループ私立恵比寿中学メンバー)10代の私にとっての『アメリ』はオシャレでキュートな恋の映画でした。
40歳になった私の『アメリ』は切なく深く愛しい人間たちの映画になっていました。――やまもとりえ(漫画家)©2001 UGC IMAGES-TAPIOCA FILM-FRANCE 3 CINEMA-MMC INDEPENDENT-Tous droits reserves