マルチバース・プロジェクト“METALVERSE”が、ワンマン・イベント第2弾となる〈METALVERSE #2 – THE END OF THE INNOCENCE〉2DAYSを2月10日と2月11日に東京・豊洲PITで完遂しました。
2023年1月に開催された
BABYMETALの復活公演〈BABYMETAL RETURNS – THE OTHER ONE –〉に突如として“出現”した3つの謎の生命体は、まるでBABYMETALのミラーのような存在としてその後の4月公演〈BABYMETAL BEGINS – THE OTHER ONE –〉にも再び“出現”し、その“METALVERSE現象”を目の当たりにしたファンの間では様々な憶測が飛び交っていました。改めて“METALVERSE”とはどんなプロジェクトなのか?を振り返ってみると、数少ないティザー・ムービーなどで語られている内容は決して多くはなく、“ELEMENTと呼ばれる「METALVERSE」のカケラの数だけストーリーが存在し、登場するキャストや内容は常に変化を重ねる、ひとつの形だけではない多元的なマルチバースプロジェクト”という文章から読み解くくらいしか術はなく、真意は語られぬまま、謎に包まれていました。
そんな中、2023年夏、遂に“METALVERSE”というマルチバース・プロジェクトとして単独で“初出現”することがアナウンスされました。デビュー前にも関わらず、〈SUMMER SONIC 2023〉東京公演の2日目、MOUNTAIN STAGEのOPENING ACTという大舞台に抜擢され、メンバーや楽曲など一切の情報が未公開のまま、果たしてどんなパフォーマンスになるのか?という期待と不安が入り混じるなか、朝イチのトップバッターという時間帯にも関わらず、約2万人を収容する会場を満員にし、“METALVERSE現象”を巻き起こしました。その翌週には初のワンマン・イベント〈METALVERSE #1 - UNBOXING〉を東京 Spotify O-EASTで開催し、2DAYSをSOLD OUTさせました。3つだった謎の生命体は5つへと変化し、BABYMETALとは異なる世界線に存在する、謎に包まれた新プロジェクトが、遂にそのベールを脱いだ瞬間でした。
そして今回の〈METALVERSE #2 – THE END OF THE INNOCENCE〉と題されたワンマン・イベント第2弾開催のアナウンスと共に、新たなティザー・ムービーが次々とアップされ、そこには初めて耳にする楽曲や新たなヴィジュアルの断片が随所に散りばめられていきました。まるで謎解きやパズルゲームのように、ELEMENTと呼ばれる“METALVERSE”のカケラを繋ぎ合わせ、マルチバースの答え合わせをするような感覚で公演当日を迎えることになりました。
今のところ我々はELEMENTと呼ばれる“METALVERSE”のカケラを頼りに答え合わせを続けていくしかないのですが、今回の〈METALVERSE #2 – THE END OF THE INNOCENCE〉を経て、いよいよその答えが明かされる時が近づいているのかもしれません。次回第3弾〈METALVERSE #3 – GARDEN OF EDEN〉の詳細は今後発表予定。“METALVERSE”の次なる展開に注目です。
[ライヴ・レポート] 舞台となった豊洲PITの会場内に入ると、そこには通常のメインステージに加えて、客席内に迫り出したもうひとつのフロントステージが用意されており、前回の公演とはまた違った“現象”が起こるのかと期待が膨らむのであった。
オープニングムービーがスタートし“METALVERSE”のストーリーが語られる中、映像などで度々登場していたELEMENTと呼ばれるクリスタルに輝く5つのオブジェが、なんと映像ではなくリアルな立体物となって天からステージ上に降りてきたのだ。
ムービーが終わり暗転となると、今度は5つのELEMENTが輝き出し、インダストリアル調のサウンドに合わせてELEMENTが宙へと舞うと、新しいバトルスーツに身を包んだ5つの生命体が“出現”した。「Hello World」というAIロボのような掛け声をキッカケに、バッキバキなヘヴィかつハイパーポップなサウンドのオープニング曲「Welcome to the METALVERSE」がスタート。飛び交うレーザービームの中をシルエットが泳ぐようにダンスをしながら客席内に迫り出したフロントステージへメンバーが移動してくると、「Welcome to the METALVERSE」の掛け声と共に会場の熱量はどんどんと増していった。
中盤でチルアウトするシーンからメインステージ背面に設置されたスクリーンに再び火が灯ると、3DCGで型取られたクリスタルのELEMENTの中から3DCGのメンバーが生まれ、さらにそれらが合体して第6の新たな生命体が誕生する、というストーリーへと繋がっていった。再び激しいサウンドが鳴り響くと、ダンスもさらに激しさを増していき、さらにパワーアップした“METALVERSE”の“出現”を飾るオープニングとなった。
続いてスウィングジャズのドラムに合わせて「Hello! 豊洲 PIT! 盛り上がる準備は出来てる?」と早くもオーディエンスを煽り、「Hey! Hey!」とオーディエンスも声と拳を上げ、一気に会場のボルテージがヒートアップすると、昨年のサマソニでも披露した“METALVERSE”オリジナルの“スウィングメタル”とも言えるアッパーチューン「Crazy J」がスタート。照明も一段と明るくなり、前回から一新されたレイクブルーとエメラルドグリーンを基調としたバトルスーツやインナーカラーがアップデートされたヘアースタイルなどもはっきりと見分けがつくようになった。中盤のコールアンドレスポンスで5人のメンバーが迫り出したフロントステージへ出てくると、「一緒にSwingしよう!」と呼びかけ、早くも会場がひとつになって盛り上がる。
先程とはガラッと雰囲気が変わり、4つ打ちのラテンビートをベースにしたサウンドと食べ物がたくさん登場するユニークな歌詞が印象的な「Si Si」へと続く。カラフルで可愛らしく、コミカルなフォーメーションダンスで一瞬にして景色を変えてしまうパフォーマンス力はまさにマルチバースプロジェクトの本領発揮というところだろう。
HIP HOPを彷彿とさせるトラップのBGMと照明がフロアを煽ると、ライブ初披露となる「Get Down」へとステージは移動する。乾いたギターサウンドに気だるい雰囲気のボーカルでスタートすると、先程の可愛らしい表情から一瞬にして大人びた表情へと変化するメンバーたち。まさにイベントタイトルにもなっている「THE END OF THE INNOCENCE」を象徴するようなパフォーマンスにドキッとさせられる。「キュン!」というキャッチーなフレーズとダンスがリフレインする「Qn」では、青春ど真ん中な可愛らしい内容の歌詞と「バキュン!」とオーディエンスを打ち抜くダンスパフォーマンスにZ世代の彼女たちの等身大の姿が見え隠れする。80’s POPSと80’s ハードロックサウンドが行ったり来たりするようなサウンドアレンジもユニークだ。
ハリウッド映画を彷彿とさせる重厚感のあるサウンドをバックに「THE END OF THE INNOCENCE」をテーマにしたストーリームービーを挟み、ダウンチューニングのヘヴィなリフとトラップのリズムが異次元のブルータルなグルーヴを生み出す「GIZA」へと突入する。LEDスクリーンに映し出される映像やレーザーや照明によって真っ赤なワールドへと染まったステージで、キレッキレのダンスとハイトーンボイスが絡み合う彼女たちの世代を超えたパフォーマンスに思わずフロアから「カッコイイ!」と言葉が漏れる。
続く「Endless World」はライブ初披露だったが、エネルギッシュなロックサウンドをベースに力強いダンスパフォーマンスとキャッチーなメロディーが印象に残った楽曲で、儚げな世界の中に一筋の光が差し込むような、見る者聞く者に勇気と希望を与えるような、そんな爽快感に溢れていた。
メンバーは一旦ステージを離れると、LEDスクリーンにはクリスタルのELEMENTが擬人化したようなCGキャラクターが登場する。HIP HOPのトラックにのせてダンスを披露すると、続けて左右のステージサイドから交互にメンバーがひとりずつ登場しスポットライトを浴びる。メンバーそれぞれのキャラクターが際立ったソロダンスパートに、CGキャラクターがシンクロしながらリアルタイムでダンスを踊るという、まさにダンスバトルさながらの演出にオーディエンスからは大きな歓声が上がった。
ダンスバトルラストでは5人全員とCGキャラクター5体がシンクロしたダンスを披露し、そのままこちらもライブ初披露となる「Naked Princess」へと突入する。サビの部分がティザームービーで使用されていたこともあり、初披露にも関わらずオーディエンスの盛り上がりも最高潮に。HIP HOPのトラックと2-stepのダンスにピッタリなバンドサウンドが目まぐるしく展開する楽曲構成に、サビの「裸のお姫様」というキャッチーなリリックをパワフルに歌い上げるボーカルラインが際立った。
中盤ではメインステージからメンバーがフロントステージへと移動すると、さらにオーディエンスを煽っていく。ここからが本日のハイライトでもあるのだが、強烈なブレイクダウンパートを経たところで、ボーカルが力強く天に向けて手を掲げ、会場全体を一瞬にしてフリーズさせる。一時停止したステージ上で緊張した時間が過ぎる中、マイクを通さずに「ハァ〜ッ」と唸り声を轟かせ、その声が頂点に達したところでフリーズしていたステージが一気に動き出した。メンバーの可愛らしいキャラクターからは予想だにしなかった展開に、例えるならば「新たなモンスターが誕生した」瞬間を目の当たりにしてしまったような、衝撃的なインパクトをオーディエンスの記憶に焼き付けたのだ。オーディエンスのボルテージは最高潮に達し、メンバーも最後の最後まで煽りまくると、ライブ本編ラストを飾るクライマックスを迎えた。
メンバーがステージを後にしてもアンコールを求める鳴り止まない拍手が続く中、ストーリームービーが始まり、“METALVERSE”のアイコンである5つのELEMENTがスクリーン上に蘇ると、前回の〈METALVERSE #1 - UNBOXING〉でも披露された「KIRA☆」のサウンドに合わせて再びメンバーが登場した。曲名の通りキラキラしたサウンドとパフォーマンスによって、まさにINNOCENCEを象徴するようなクリアで澄み切ったワールドに会場は包まれた。
2度目のアンコールが巻き起こる中、ファンにとってはお馴染みとなったスウィングドラムが再び鳴り響き、メンバーが「まだまだ盛り上がれるよね!」と呼びかけると「Crazy J」を再演。「Swing Swing Swing Hey! Hey! Hey!」とコールアンドレスポンスを重ね、楽曲も終盤に差し掛かると、オーディエンスの歓声は一段と大きくなりエンディングを迎えた。「Thank you 豊洲PIT! またお会いしましょう!」と言葉を残し、メンバーはステージから姿を消すと、スクリーンには〈METALVERSE #3 – GARDEN OF EDEN〉が予定されていることがアナウンスされた。
終わってみると、まるでオムニバスの短編映画を見終わったような、あっという間の出来事に感じられた。“METALVERSE”が提唱する「マルチバースプロジェクト」が繰り広げるバラエティ豊かな楽曲とパフォーマンスによって、見るものをひとつのワールドに留まらせるのではなく、楽曲のテーマごとにキャストやストーリーが変化し、それに合わせてメンバーも表情や声色を自由自在に使い分けるような、このプロジェクトの持つ表現力とパフォーマンス力の無限の可能性を感じることができたイベントであった。
そして忘れてはいけないのが、“METALVERSE”の楽曲は一切リリースされておらず、メンバーも明かされていないままである。そんなタフでレアな状況下の中で開催された今回のイベントは、メンバーにとってもオーディエンスにとっても、宝探しのような時間であっただろう。どこに、どんな宝物が埋まっているのか?宝物に辿り着くには少々時間が掛かるのかもしれない。しかしながら着実に宝物に近づいていると感じられたイベントであった。 ©Taku Fujii
■〈METALVERSE #2 – THE END OF THE INNOCENCE〉
2024年2月10日(土)、11日(日)
東京 豊洲PIT
[セットリスト]※10日、11日共通
01. Welcome to the METALVERSE
02. Crazy J
03. Si Si
04. Get Down
05. Qn
06. GIZA
07. Endless World
08. Naked Princess
09. KIRA☆
10. Crazy J