呉美保監督、
吉沢亮主演、母と息子、切なくも心に響く家族の物語『ぼくが生きてる、ふたつの世界』が9月20日(金)より東京・新宿ピカデリー、東京・シネスイッチ銀座(9月13日[金]宮城県先行公開)ほかにて全国順次公開されます。
2014年モントリオール世界映画祭ワールドコンペティション部門最優秀監督賞に輝き、第87回アカデミー賞外国語映画賞部門の日本代表作品に選出、そして2014年キネマ旬報ベスト・テン1位に輝く『
そこのみにて光輝く』の監督・呉美保が、9年ぶりの長編作品のテーマに選んだのは、コーダ(Children of Deaf Adults / きこえない、またはきこえにくい親を持つ聴者の子供という意味)という生い立ちを踏まえて、社会的マイノリティに焦点を当てた執筆活動をする作家・エッセイストの五十嵐大による自伝的エッセイ『ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと』。脚本を担当したのは、『ゴールド・ボーイ』、『正欲』等を手掛ける港岳彦。
そして、主演を務めるのは『
キングダム』シリーズ、『
東京リベンジャーズ』シリーズ等の話題作から、作家性の強い監督作等、幅広い作品に出演し、2025年には
吉田修一原作、
李相日監督『国宝』の公開が控える吉沢亮。本作では、耳のきこえない両親の元で育った息子・五十嵐大の心の軌跡を体現します。さらに吉沢亮演じる五十嵐大のろう者の両親を演じるのは、母・明子役に
忍足亜希子、父・陽介役に今井彰人。ろう者俳優として活躍する2人が溢れんばかりの息子への思いを見事に表現。そのほか
ユースケ・サンタマリア、
烏丸せつこ、
でんでんなど個性豊かな俳優陣が脇を固めます。
この度、9月5日(木)新宿ピカデリーにて、吉沢亮(五十嵐大役)、忍足亜希子(母・明子役)、呉美保監督が登壇し、完成披露上映会を実施しました。
[オフィシャル・レポート] コーダという生い立ちを踏まえて、社会的マイノリティに焦点を当てた執筆活動をする作家・五十嵐大さんによる自伝的エッセイを映画化した『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(9月20日公開)。9月5日(木)に都内映画館で完成披露上映会が実施され、主人公・五十嵐大を演じた主演の吉沢亮、母・明子を演じた忍足亜希子、そして呉美保監督が登壇した。
満員御礼の会場を前に、主演の吉沢は「ようやく公開日も近づいてきて、今日こうして皆さんに観ていただく日が来たという事で、この作品を通してどんなことを感じていただけるのか、ドキドキしています」と胸の内を披露。
10月9日から20日までロンドンで開催される、第68回ロンドン映画祭のコンペティション部門への正式出品も決定。6月の上海国際映画祭に続き、ヨーロッパでのプレミア上映に吉沢は「光栄な限りです」としみじみしながら「国や文化を問わず、観ていただいた方に伝わる普遍的テーマだと改めて思いました。これからもより多くの方々にこの作品が広がってくれると嬉しいです」と期待。ろう者の俳優である忍足も「日本だけではなく海外の方にも観ていただけて、とても嬉しいです」と笑顔で、呉監督は「日本の劇場公開を待たずしてこのような朗報を頂けて、ただただ嬉しいです」と喜んだ。
本作で吉沢はろう者の両親を持つ耳がきこえる息子、忍足は聴者の息子を持つ母親を演じた。ストーリーについて「コーダという特殊な環境に生きてはいるけれど、描かれているのは普遍的なテーマで、家族の関係性や親子の愛情の変化も共感が出来た。純粋に素晴らしいお話だと思った」(吉沢)、「脚本に書かれているすべてが私の中に入って来ました。様々な葛藤や思いが細かに書かれていて、涙を我慢して共感しながら読み進めました」(忍足)と振り返った。
一方、9年ぶりの長編映画となる呉監督は吉沢の起用について「彼は美しい人だけれど、その中にある美しくない何かを自分の目で見たくて、この企画をいただいた時に彼とフィットすると感じた」と説明。忍足については「初めてお会いした時に、劇中のワンシーンを演じてもらいました。それを見た時に『この方にお母さんをやっていただきたい』と思った」とそれぞれのキャスティング秘話を明かした。
コーダを演じた吉沢だが演じるにあたっては「どの家庭にもどの思春期にも似たような悩みはある。自分の失敗を親のせいにするけれど、それがたまたまコーダという環境で生まれただけで、コーダだから辛いと思い込んでいる。本人にとっては重大な出来事だけど、周りから見たら『親とのあるあるだよね』みたいな距離感を意識していました」と普遍的な人物像を念頭に置いたという。実際に一児の母という忍足は「私には中学1年生の娘がいます。吉沢さん演じる息子が娘と重なるときもありました。娘とは違い、息子は母親に対して反抗したり色々な思いがあったりするだろうとイメージして、母としての気持ちを作りました」と役作りを回想した。
そんな母・忍足との共演について吉沢は「とても温かい方で、忍足さんと(父親役の)今井さんの手話だけは現場ですんなりと入って来て、何を言っているのかがわかる。そこに僕は勝手に愛情を感じて、温かい両親だと思った。一緒にお芝居をしていてもチャーミングで素敵なお母さんだと思いながら演じていました」と親子の絆を実感。それを受けて忍足は「息子を持つのは、ドキドキワクワクで複雑な気持ちでした」と笑わせつつ「吉沢さんは素晴らしい息子。手話も徐々に自然に習得されて、そんな息子の手話表現に感動しました」と互いに褒め合い、笑顔になる場面も。
最後に呉監督は「耳のきこえない両親に育てられたコーダの物語ではありますが、どこにでもある普遍的な親子の感情として描いています。手話に出会い、果たして私たちはどれだけ目と目を合わせたコミュニケーションを取っているのだろうか?という事も考えました。そんな映画になっています」とアピール。忍足は「この作品は新しい感覚の映画になっています。手話の世界、男の世界、女の世界、この世界には色々な世界があります。皆さんがどのように感じていただけるのか私も気になります」と反響に興味津々。そして吉沢は「僕は本作への参加を通して、言葉で伝えることの重要性を感じました。生きている中で言葉を吐き捨てたり、自分の中に壁を作って自分の想いを伝える作業を怠ったりするような事もあると思います。今回手話と出会って、気持ちは伝えなければ伝わらないと実感しました。抱いた感情の全てを伝えてくれる手話という言語は愛に溢れた素晴らしい世界だと思いました。この映画を観ていただき、伝えることの大事さを感じていただけたら僕は幸せです」と呼び掛けていた。
©五十嵐大/幻冬舎 ©2024「ぼくが生きてる、ふたつの世界」製作委員会