12月8日から12月19日(木)で東京・ヒューマントラスト渋谷で開催中の「カンヌ監督週間in Tokio 2024」の12月11日(水)に、日本のアニメーションとしては6年ぶりの選出となった『化け猫あんずちゃん』が登場。上映後のトークイベントには、
久野遥子監督、
山下敦弘監督、カンヌ監督週間・アーティステックディレクターのジュリアン・レジが出席し、実写とアニメが融合した撮影の舞台裏、カンヌ国際映画祭での思い出などが語られました。
『化け猫あんずちゃん』Blu-ray&DVDセットの発売(2025年2月22日[土]猫の日)の発表も記憶に新しい中、トークイベントの模様を伝えるオフィシャルレポートが到着しています。
[オフィシャル・レポート] 現在、都内・ヒューマントラスト渋谷で開催中の「カンヌ監督週間in Tokio 2024」。11日(水)は日本のアニメーションとしては6年ぶりの選出となった『化け猫あんずちゃん』が登場。上映後のトークイベントには久野遥子監督、山下敦弘監督、カンヌ監督週間・アーティステックディレクターのジュリアン・レジが出席し、実写とアニメが融合した撮影の舞台裏、カンヌ国際映画祭での思い出などを語った。なお、前東京国際映画祭プログラミングディレクター、矢田部吉彦がMCを務めた。
「カンヌ監督週間in Tokio 2024」は、第77回カンヌ国際映画祭〈監督週間〉に選出された最前線の映画たちに出会う12日間(12月8日〔日〕〜12月19日〔木〕)。アニメ『化け猫あんずちゃん』は、母を亡くし、祖父のお寺にやって来た小5の少女かりんが、37歳の化け猫のあんずちゃんと出会い、一夏の不思議な体験を描く。森山未來が演じるあんずちゃんを山下監督が実写で演出し、その映像をもとにアニメーション化する“ロトスコープ”の手法を採用。久野監督の指揮のもと、老舗スタジオ・シンエイ動画とフランスの気鋭スタジオ・Miyu Productionsがアニメーション制作を担当した。
まず、『化け猫あんずちゃん』をカンヌ監督週間に選出した理由についてジュリアンは、「2024年は特にアニメ作品を探していました。今後の映画界を支える若いクリエイターたちがアニメ映画にとても注目しているので、カンヌ国際映画祭においても、アニメの分野から選出することがとても重要だと思ったからです」と述懐。さらに、「実は2作品、候補に上がっていたのですが、いずれも『猫』の話でした。なぜ、『化け猫あんずちゃん』を選んだかというと、これまで西洋の人たちが好きな日本のアニメ映画にとても親近性があったこと、そして『喪失』と『ユーモア』という2つのテーマを扱っていて、大人から子供まで幅広い方々に観てもらえるところが評価の対象となりました」と明かした。
カンヌ監督週間に選出されたときの気持ちについて久野監督は、「カンヌでアニメが入選することがほとんどない中で、初めての参加した作品が『化け猫あんずちゃん』だったので、めちゃくちゃびっくりしました。でも、カンヌのおかげで、いろんな映画祭に呼んでいただき、また世界各国で上映する機会もいただいたので、本当に嬉しい気持ちでいっぱいです」と感慨深く語る。
一方の山下監督は、「僕は昔、深夜枠で、『山田孝之のカンヌ映画祭』を作っていた身としては、“え?本当に行くの?”っていう感じでしたね。あのドキュメンタリーでは、カンヌに出品するための映画を製作するという狙いがあったんですが、今から思うと、全部間違っていました」と自虐ネタで笑いを誘った。
また、本作が上映される日、映画祭の計らいで、子供たちが劇場に来やすいように上映時間を設定したというジュリアンの裏話を聞いた久野は、「確か観客の半分くらいがお子さんだったんですが、とてもビビットなリアクションをとるところと、怖いシーンになると急に静かになるという両面があって面白かったですね。大勢のお客さんと観る機会が初めてだったので、それがフランスのお子さんたちと一緒だったことが貴重な経験になったと思います。あと、あんずちゃんのぬいぐるみが大人気だったので、こういうグッズは大事だなと思いました」と笑顔で語った。
“ロトスコープ”という手法について興味津々のジュリアンから、「アニメなのに特定の俳優を使って撮影する意味は?」という質問が飛ぶと、山下監督は「現場のセリフをアフレコでそのまま使うので、そこも含めて役に合う俳優を使う必要がありました」と解説。「特にあんずちゃん役の森山くんは、ダンサーでもあり、身体能力がすごく高いので、猫的な動作を要求し、見事に応えてくれました。彼の動きがそのままアニメに生きていると思います」と絶賛。撮影自体も、「アニメを多少意識はしましたが、ほぼいつもと同じ、実写映画を撮っている感覚でやれましたね。ただ、照明もメイクもいらないので、その分、スケジュールをかなり詰められたのはちょっときつかったです(笑)」と撮影当時を振り返った。
アニメ班の久野監督と実写班の山下監督、制作上の大きな相違はなかったのだろうか? これについて山下監督は、「原作はあんずちゃんだけの世界だったので、映画用にかりんというキャラクターを作って、彼女の背景を物語の軸にしていったんですが、あまりにもかりんに肩入れしすぎて、久野さんから『あんずちゃんが主役だから!』と軌道修正されたのを覚えています。途中から相米慎二監督の『お引越し』を撮っている気分になりましたから(笑)」と苦笑い。
これに対して久野監督は、「はい、そこだけは言わせていただきました(笑)。あとは、実写の撮影現場にもいましたし、編集も参加していたので、大きな相違はなかったです。ただ、ワンカット平均15秒くらいあったので(アニメは通常5秒程度)、かなり大変な作業でしたが、そこが他のアニメと違う部分になるなと思ったので、頑張ってやり切りました」と力強く締めくくった。