ニューヨーク・ハーレムに住む若い男女の愛と苦闘の物語を、伝説的なミュージシャンたちの演奏記録とともに描いた映画『ブルースの魂』が、2025年に迎える
B.B.キング 生誕100周年を記念し、制作から50年を経て12月28日(土)より東京・新宿K’s cinema、UPLINK吉祥寺他にて日本劇場初公開となります。公開を目前に、今回、本作でしか観られないグラミー賞受賞アーティスト、
バディ・ガイ の貴重な本編映像が公開されました。
デルタ・ブルースへの関心が再燃していた1970年代初頭。本作の監督である音楽ドキュメンタリー作家ロバート・マンスーリスは、本物のアメリカン・ブルースの名残をフィルムに収めようとミシシッピ・デルタを旅し、B.B.キングをはじめとする伝説的なミュージシャンたちの率直なインタビューや親密な演奏を撮影していました。目的は、音楽を記録するだけでなく、ブルースをこれほどまでに表現豊かで心揺さぶる音楽形式にしている、文化的・政治的要因を探ること。並行して、ハーレムに住む若いカップル(ローランド・サンチェスとオニケ・リー)の波乱含みの関係をドラマチックに描き、ドキュメンタリーとフィクションの境界線をあえて曖昧にして、見るものをブルースの核心へと誘います。
映画ではブルース・ミュージシャンたちによる衝撃的で魂を揺さぶるパフォーマンスとともに、ハーレムでの愛と苦悩をアマチュア俳優たち自身の人生経験と演技であぶり出していきます。ブルースマンたちの証言と若いカップルの物語のリアリティとの融合によって、ブルースの歴史における真実が少しずつ浮かび上がり、世代を超えた核心の力“人生の苦しみに痛む魂の回復力”が共有されることでしょう。
公開となった本編映像は、ハーレムに住む若者の物語の中でバディ・ガイが男臭い魅力を発散するパフォーマンス。約50年以上前に撮影された本作でしか見られない「Tell Me What’s Inside of You」を演奏する貴重な映像です。本作の中で唯一存命のミュージシャン、バディ・ガイは、シカゴ・ブルースの第一人者で、グラミー賞を7回も受賞。88歳の今も健在ですが、“生き神様”がいかに伝説的ミュージシャンとして現在でも崇められているのかが如実に伝わる圧巻のライヴ・シーンとなっています。
また、故・ロバート・マンスーリス監督の撮影秘話もこの度解禁に。偉大な伝説的ミュージシャンを一人ひとり、決して妥協することなく訪ねて回る監督魂には本作への情熱が伝わってきます。
[ロバート・マンスーリス監督が語る撮影秘話] 1971年、フランス政府は第3のTVネットワーク(France 3)の立ち上げを計画していた。その企画で、マンスーリス監督は好きなテーマでドキュメンタリーを撮る機会を与えられ、ミシシッピ・デルタ・ブルースを選んだのだった。その理由をマンスーリス監督は語っている。「文化国家フランスにいたから、私は黒人音楽こそが真のアメリカ文化であり、黒人音楽とはブルースなのだと気づいたのです。ブルースはアメリカの黒人知識人たちからは置き去りにされていたが、フランスでは(そしてイギリスでは、ジョン・メイオールやローリング・ストーンズ、ビートルズのおかげで)生きていた。ブルースマンたちは『オールド・カントリー(ヨーロッパ)』のあちこちにいたけれど、アメリカではどこにもいなかった。私はフランスのテレビ局での仕事と地位を利用して、ブルースマンの撮影を始めた」。同時に監督は、自分の人生を演じる人たちを登場させる映画も作りたいと思っていた。「まだパリにいた頃、『ブルースの魂』の準備のために、ハーレムの黒人たちの精神分析的な事例を集めた本を読んだ。そして、ブルースの本当の物語は人生経験であることに気づいた。つまり、ブルースの言葉とその背後にある感情に命を与えなければならない」と加える。そこで、ハーレムに住む若いカップル(ローランド・サンチェスとオニケ・リー)の波乱含みの関係をドラマチックに描くことでドキュメンタリーとフィクションの境界線をあえて曖昧にして、見るものをブルースの核心へ誘おうと挑戦的な構成にチャレンジしたのだ。 本作はブルースを題材にした最初の映画だとマンスーリス監督は言う。「1971年のクリスマスの前日にニューヨークに到着したとき、最初の問題は国中に散らばっている偉大な老ブルースマンたちの住所を探すことでした。ブルース・リバイバルなんて本の中にしかなかった。それも2、3冊くらいの中だけに。私はそれらをすべて読み、アメリカに行った際にこれらの本の著者に会いに行った。そうした中で私が教わったのは、私が撮ろうとしているのは、ブルースを題材にした最初の映画だという事実でした」。 マンスーリス監督とクルーは街から街へと飛び回り、テキサスでは刑務所の作業員、メンフィスではファーリー・ルイス、バトンルージュではロバート・ピート・ウィリアムズ、ニューオーリンズではルーズヴェルト・サイクスを撮影することに成功したのだった。 また、ブルースの哲学について尋ねられたマンスーリス監督は、こうも語っている。「ブルースにも、タンゴにも、フラメンコにも、レベティコ(ギリシャのブルース)の歌にも哲学はない。それらは見捨てられた人々が、失われた愛を求め、一般受けする詩歌を通して抗議しているだけなのだ」。 VIDEO
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