長編初監督作品『
PLAN 75』(22)が第75回カンヌ国際映画祭でカメラドール特別賞を受賞し、同年のアカデミー賞日本代表として選出、更に第16回アジア・フィルムアワード、中国最高賞と言われる第35回金鶏奨、第58回シカゴ国際映画祭他、世界各国の映画祭で監督賞にノミネートされるなど、恐るべき評価を集めた
早川千絵監督の長編2作品目となる新作『ルノワール』が、第78回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品されることが決定。あわせて、6月20日(金)の全国公開に先駆け、予告編とポスター・ヴィジュアルが公開されました。
高齢化社会が深刻化した近い将来の日本を舞台に、75歳以上の国民に生死の選択を迫る衝撃的な物語を描いた『PLAN 75』から3年――。最新作『ルノワール』で綴られるのは、80年代後半の夏、闘病中の父と、仕事に追われる母と暮らす11歳の少女・フキの物語。主人公・フキを演じるのは多数の候補者の中からオーディションで抜擢された、驚異の新人・鈴木唯。役柄と同様11歳だった彼女の、真っ直ぐに大人を見つめる視線、この年齢ならではの自然な躍動感、時折見せる寂しげな表情など、スクリーン一杯に広がる瑞々しい演技は見どころとなります。また、フキの母・詩子役に
石田ひかり、父・圭司役に
リリー・フランキーと、数々の映画賞を受賞してきた名優たちが名を連ねるほか、フキが出会う大人たちとして、
中島歩、『PLAN 75』に続き
河合優実、そして
坂東龍汰ら大ブレイク中の若手実力派俳優陣が出演します。
名優たちとの共演を経て、12歳でカンヌ主演デビューを果たす鈴木が主演女優賞に輝いた場合、かつて主演男優賞を獲得した『
誰も知らない』(
是枝裕和監督作)の
柳楽優弥(当時14歳)より若い〈最年少受賞〉となり、“日本人初の主演女優賞”への期待も高まっているところです。
子どもと大人の淡い境目をたゆたう少女のひと夏を描いた映画『ルノワール』。マイペースで想像力豊かな主人公・フキは、事情を抱えた大人たちと触れあう中で、11歳の小さな体に宿る“うれしい・楽しい”という感情をむくむくと膨らませていきますが、時折見せる子供特有の残酷な一面や鋭い視線にどきりとさせられることも。早川監督は、少女が積み重ねていく感情のひだを細やかに描写するとともに、大人たちの人生のままならなさや、人間関係の哀感を温かなまなざしとユーモアを持って描き出しています。観客は自分にも覚えのある子どもならではのひりひりとした感情と、今の自分に似た大人たちの孤独や痛みに共感し、激しく心を揺さぶられることでしょう。
今回公開された予告編は、11歳のフキが「みなしごになってみたい」というタイトルの作文を提出し、母親(石田ひかり)が担任教師に呼び出されるシーンから幕開け。自由な発想で時たま大人を驚かせるフキですが、闘病中の父親(リリー・フランキー)をいつも気にかけ、放課後は父親の病室へ通います。そんな日々の中で、フキがそれぞれに事情を抱えた大人たちと対峙する姿が紡がれていきます。同じマンションに住む久理子(河合優実)が、哀しみに暮れた表情で、ベランダから下を見下ろしている事に気付くフキに、秘密を打ち明け始めたり、またある時は、母が知り合った男性・御前崎(中島歩)や、大学生・薫(坂東龍汰)との出会いのシーンが切り取られ、子どもと大人の間で揺れる、ひと夏が繊細に描かれているのが伝わります。
あわせて公開されたポスター・ヴィジュアルは、楽しそうに踊るフキの様子が大きく据えたもの。うれしい、楽しい、寂しい、怖い……はちきれんばかりの感情を抱えたフキは、“哀しみ”を知って確かに大人に近づいていきます。幾重にも変化する11歳の少女の表情とともに、私たちが過去に置いてきた、遠い日の宝石のような記憶を呼び覚ます本作に期待が高まります。
©2025『RENOIR』製作委員会+International Partners