今年4月に
東京都交響楽団(以下、都響)のプリンシパル・ゲスト・コンダクターに就任した29歳の若手指揮者、ヤクブ・フルシャ(Jakub Hrusa)。12月の都響定期演奏会が就任披露となり、大きな注目を集めています。夜にサントリーホールでの本番を控えた12月14日の日中、都内ホテルで記者会見が開かれました。
フルシャは1981年チェコ生まれ。現在、プラハ・フィルハーモニアの音楽監督兼首席指揮者ならびにグラインドボーン・オン・ツアー音楽監督を兼任し、世界中のオーケストラから引っ張りだこの気鋭です。
都響との初共演は2008年5月の定期演奏会でした。フルシャは都響とのパートナーシップについて、以下のように述べています。
「都響では普段なかなか演奏会で取り上げられないレパートリーに挑戦させてもらい、感謝しています。プリンシパル・ゲスト・コンダクターというポジションに就くことで、1度きりの客演指揮よりも突っ込んだ内容のプログラムを組み立てることができますから」(以下、同) 14日の就任披露演奏会では、
スメタナの『わが祖国』より「ブラニーク」をはじめ、
ドヴォルザークの序曲「フス教徒」、
ヤナーチェクの「グラゴル・ミサ」、
マルティヌーの「リディツェへの追悼」など、祖国チェコの作品が並べ、エネルギーに満ちた熱い演奏で会場を大いに沸かせました。
「今日の演奏会はオール・チェコのプログラムですが、これはむしろ例外的で、あくまで第一歩です。今後はチェコの音楽を紹介しつつ、ドイツ・ロマン派などにも広げていきたいと考えています」 チェコ出身の指揮者といえば、これまでに
イルジー・ビエロフラーヴェク、
ヴァーツラフ・ターリヒ、
ヴァーツラフ・ノイマン、そして近年日本でも人気の
ラドミル・エリシュカなど、錚々たる名前が並びます。チェコ楽壇の伝統を引き継ぐ指揮者として注目されることにプレッシャーを感じますか? との問いには、
「ビエロフラーヴェク先生には多くのことを教えていただきましたし、エリシュカ氏も友人であり師の一人です。チェコの偉大な指揮者たちの演奏は、自分にとってインスピレーションになれこそすれ、プレッシャーにはなりません。彼らと同じ指揮をすることはできない。自分にできることをするまでです」」 29歳とは思えない落ち着きぶりで語るフルシャの姿には、もはや貫禄さえ感じます。日本のオーケストラについては、以下のように語りました。
「日本のオーケストラは個性がない、と言われるそうですが、私はまったくそう思いません。強い個性を持っています。都響について言えば、いちばんの個性はフレキシビリティ。指揮者の指示したことが、必ず返ってくるのです。これは鍛錬を積んだ技術力、正確なリズム感、バランス、分析力がないとできないことですから、大きな魅力と言えるでしょう」 続く20日の演奏会(東京文化会館)では、
ニコライ・ルガンスキーとの共演で
ショパンのピアノ協奏曲第1番、
リストの交響詩「レ・プレリュード」、マルティヌーの交響曲第3番を披露します。
今後ますます人気が高まること必至の指揮者、ぜひご期待ください!