共産体制下のアルバニアに生まれ、政変とともに10歳でスイスに亡命。祖国の旋律と言葉を今に継承するシンガー、エリーナ・ドゥニ(Elina Duni)が、ピアニストのコリン・ヴァロン(Colin Vallon)を含むカルテットで初来日。9月2日(金)沖縄・宜野座村文化センター がらまんホールを皮切りに、9月3日(土)福岡・宮若 古民家 SHIKIORI、9月4日(日)東京・板橋 安養院 瑠璃講堂、9月7日(水)大阪・阿倍野区民センター 小ホールの全4公演を行ないます。
アルバニアの伝統的な民謡にジャズのエレメント加えた独自の音楽性と心に流れ込んでくるようなヴォイスで、欧州ジャズ界で注目を集めているエリーナ・ドゥニ。ECMよりリリースされた最新作
『Dallëndyshe(ダッレンデゥシェ / つばめ)』では、亡命という体験や愛を歌っています。
今回の来日公演は彼女の世界を支える音楽的相棒の鬼才ピアニスト、コリン・ヴァロンが同行。昨年、
コリン・ヴァロン・トリオで来日公演を行ない、その圧巻の演奏でオーディエンスを魅了したヴァロンとともに作り上げる音の世界に期待が高まります。
歴史的にヨーロッパ、ロシア、トルコ、アラブの文化が交錯してきたバルカン半島は、 美しく哀愁味の強いメロディと躍動的な変拍子のリズムを持つトラッドの宝庫。 アルバニア出身のエリーナ・ドゥニが、プリペアド奏法なども駆使して現代ユーロ・ ジャズの最先端を示すコリン・ヴァロンらとともにカルテットで奏でる音は、これまで あまり広く知られてこなかったアルバニアとその周辺国の民謡の豊かさを再認識させる とともに、ジャズとトラッドの融合を単なる“足し算”ではなくより高次元かつスリリングな形で実現させている点が素晴らしい。 現代ジャズを牽引する一方で、ヨーロッパとその周縁のマージナルな音楽にも光を充ててきた名門 ECMの最良の成果のひとつといえる音世界を、ぜひお見逃しなきよう。――吉本秀純