毎月、映画の放送後に、その作品に関わるクリエイターたちをゲストに迎え、製作秘話を語るWOWOWオリジナルの特別配信番組『マンスリー・シネマセッション』が4月よりスタート。番組第1弾として、4月17日(土)午後1:00よりWOWOWシネマで放送が予定されている『
踊る大捜査線 THE MOVIE』の終了後、大ヒット作『
踊る大捜査線』シリーズ(以下『踊る〜』)の
本広克行監督と
亀山千広プロデューサー(当時)をゲストに迎えたトークセッションをWOWOWオンデマンドで配信。社会現象を巻き起こした同作の裏側を解き明かしています。
『踊る〜』は、従来の刑事ドラマと異なり、警察社会をまるでサラリーマンの世界のように描き、社会現象となった
織田裕二主演の人気テレビ・ドラマ・シリーズ。98年10月に公開された劇場版『踊る大捜査線 THE MOVIE』は、『踊る〜』初の映画化作品。“湾岸署史上最悪の3日間”を描き、同年の邦画ナンバーワン・ヒットを記録。実写邦画の歴代ランキングでも3位をキープしています。また、後に続く劇場版第2〜4作や2本のスピンオフ映画も作られており、2003年7月に公開された『
踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』は、実写邦画の歴代ランキングで1位を独走中。公開からおよそ18年たった今でも、その記録を破る邦画の実写作品は現れていません。
亀山Pといえば、『
あすなろ白書』『
ビーチボーイズ』など、数々の名ドラマを送りだしたヒットメイカー。番組の中で、亀山Pは「実は『踊る〜』の前のクールでやっていたのが(木村拓哉と山口智子が出演するドラマ)『ロングバケーション』だったんです。それが当たったんで、次にやるドラマは少々視聴率が悪くても免罪符になるだろうと思った。そこで自分の中でかねてからやりたかった刑事物をやろうと思った」と、企画の始まりを回想。そうした肩の力が抜けた状態の中で企画は練られ、“刑事同士をあだ名で呼び合わない”“張り込みシーンを音楽に乗せて描かない”など、それまでの刑事ドラマの代名詞とも言うべき『太陽にほえろ!』の定石をあえて外した、異色の刑事ドラマが生まれることになったといいます。
本作のヒットの要因については、「なぜこの作品が当たったのか分からないので、これからの人生で考えたい」と前置きしつつも、「でも作品の幅が広かったんだと思います。警察の構図の中に、サラリーマンの構図をぶち込んだんですが、当時の警察官は今よりもヒエラルキーなどが厳格だったんです。そういう要素を入れたことと、キャラクターショーという部分もあったと思う。キャラクターの描き分けがうまい君塚良一さんの脚本があり、余分な芝居をたくさんつけてくれる本広監督がきたため、キャラクターがどんどん生きてきた。(本シリーズの名物トリオとして知られる北村総一朗、小野武彦、斉藤暁による)スリーアミーゴスなどは、役者さんと本広くんが現場で生み出したもの。ほとんどアドリブで、本広劇団という感じでしたからね」と分析しています。
一方の本広監督も、「『踊る〜』はインターネットやサブカルなどいろんなムーブメントをどんどんと取り入れていった。それがみんなをどんどんと巻き込んでいったのかなと思います」とヒットの要因を分析。インターネットを通じて作り手とファンが親密なコミュニケーションをとっていたのも『踊る〜』の特徴で、ネット上で映画上映後のスタンディングオベーションを呼びかけたり、大勢のファンがエキストラとして撮影に協力したりするなど、ファンの熱気が『踊る〜』の人気を支えていました。
さらに、「亀山さんもそうなんですが、みんな映画オタクなんですよ。映画を作りたかったメインスタッフがいっぱいいましたから。だから、テレビだと制限があってできないようなこともやってみようという空気になる。じゃ空撮をやろうかとか、『西部警察』みたいにパトカーを大量に呼んじゃいますかとか。そういった会話が映画のクオリティーをどんどんと上げていった。とにかく彼らは僕がもういいよと言っても妥協しない。本当にみんな熱かったんですが、そうやって彼らが熱く主張した作品作りへのこだわりの全部が正解だった。そして役者さんたちもこだわりがあった。リハーサルの時も、もう一回やらせてくれということもあったくらいで。本当に全員がそんな感じだったんで、演出部は鍛えられましたね」と、スタッフ、キャストの熱量も高かったことを振り返っています。
1997年のテレビ・シリーズ放送開始からおよそ24年。シリーズ最終章となった2012年の劇場版『
THE FINAL』から数えてもおよそ9年の時が経ち、『踊る〜』シリーズを観たことがないという若い世代が増えている中、それでもこのシリーズが描いてきたものは廃れない、と2人は力説。大盛り上がりのトークセッション全編は、WOWOWオンデマンドでご覧ください。
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