伝統に現代の要素を重ね、オリジナリティあふれる南部鉄器を生み出してきた岩手県奥州市は水沢の南部鉄器工房「南部宝生堂 及富」が、カルト・レーベル「10 Inches Of Pleasure」の主宰をはじめ、クラブ・シーンで精力的に活動するDJ・プロデューサー野崎和宏の協力のもと、南部鉄器のアナログ・レコード専用スタビライザー「7”/12” DUAL DISC STABILIZER OTM80821」を開発。価格は22,000円(税込)で、7月1日より同社オンラインショップにて予約受付スタート(8月2日[月]以降、順次発送予定)、8月1日(日)に発売が開始されます。
レコードを上から押さえて音質を安定・向上させる役割を果たすスタビライザーを鋳鉄で制作しようというアイディアは、音楽愛好家でもある南部鉄器の若手職人、大川寛樹とクラブの現場で活躍するDJ・ミュージシャンらとの対話が発端。「一般的な12inchレコードだけでなく、未だ愛好家の多い7inch(ドーナツ版)と兼用できるものを」という要望に応え、形状や重量等の試行錯誤を繰り返し、試奏を重ね、7インチ / 12インチレコードの両方に対応する“デュアルレコードスタビライザー”を完成させました。
鋳鉄は鉄と炭素の合金で重量があり、振動エネルギーは炭素に吸収されて熱に置換されるために吸振作用が知られており、エンジンの部品やスピーカーのインシュレーターにも利用されています。本製品はこうした鋳鉄の制振性を活かしながら、ハンドリング性にもこだわり、縁にローレット加工(細かい凹凸状の加工)を入れ、強めの面取りを施すことで、プレーヤーへの着脱しやすさと持ちやすさを実現。着脱における塗料剥がれや鋳鉄のデメリットであるサビを防ぐために、黒メッキ加工を施して強度も高められています。形状デザイン・金属加工には、同じ岩手県奥州市で金型の加工製造を行なうサンアイ精機が協力しました。
開発にあたり、DJの野崎和宏の協力のもと、本スタビライザー使用時におけるレコード音質の衡量を実施。衡量には7インチ盤を使い、同一楽曲・同一録音(リッピング)条件下でのスタビライザーの有無を比較しました。結果、楽曲の構成や使用楽器、機材によって帯域分布は変わるものの、スタビライザー使用時には、低域が上がり、高域(22kHz)・中域を抑える効果を確認。通常のリスニングはもちろん、アナログ音源をデジタルにサンプリング、量子化する際にも有効とのことです。なお、「及富」のホームページには、野崎和宏による、スタビライザー、ターンテーブルの解題も含めた詳しい
レポートが掲載されています。
南部鉄器ならではの洗練された佇まいと質感を備えたスタビライザーは、手にしっくりと馴染み、使い続けるほどに風合いが増すとのこと。音質面での向上も期待できる機能美を持つスタビライザーは、レコードの愉しみをより増幅させてくれるでしょう。