『眠り姫』などの才気溢れる作品で知られる
七里圭監督の初のドキュメンタリー映画『背 吉増剛造×空間現代』が、10月8日(土)より東京・新宿k‘scimemaにて公開されます。この度、本作のポスター・ヴィジュアルと場面写真が公開されました。
80歳を超えてなお旺盛な創作活動を続ける、日本を代表する現代詩人・
吉増剛造。本作は、彼が
ECD、
灰野敬二、劇団・地点、
飴屋法水とのコラボレーションでも知られる先鋭的なオルタナティヴ・ロック・バンド“
空間現代”と、京都の小さなライヴハウス「外」で2019年に行なった、ある朗読ライヴ〈《背》〉を記録した作品となっています。
吉増剛造は、その年の夏、かつて津波を引き起こした海に面する宿の小部屋で、窓の向こうの海に浮かぶ霊島・金華山を眺めながら、その地に足を踏み入れることなく“詩”を書きました。それは今、世界が閉ざされる経験をした後の我々には、予見的で、象徴的にも感じます。その“詩”に歌人・
斎藤茂吉の短歌からの引用を加え、マスクや目隠しを用いながら、声の限りに叫び、また朗読し、録音を再生し、ありったけの力で透明なガラスにドローイングする……鬼気迫るライヴ・パフォーマンスの全編を凝視して、詩人の言葉の“背”後を浮き彫りにしています。
監督の七里圭は、デビュー作『
のんきな姉さん』で注目を集め、初公開以来15年間毎年アンコール上映を繰り返す、声と気配で物語を綴る異色の作品『眠り姫』などの先鋭的な作品で知られる鬼才。他のジャンルのアーティストとのコラボレーション作品も多く、「音から作る映画」プロジェクト、舞台上演『清掃する女』など、実験的な映画制作、映像パフォーマンスも手掛けています。自身初のドキュメンタリー映画となる本作で、生身のふたつの魂の激突をありのままに映し出しています。
また、すでに吉増剛造との次の作品制作も始まっており、京都・春秋座での劇場実験が2023年2月に予定されています。
[コメント]「ガラスは、向こう側が見えているのがすごい」と詩人は言った。
吉増剛造氏の、ガラスにドローイングしながらの朗読パフォーマンスは、詩が表れる何かに向かう根源の手、詩へ通じる小径、詩情についての表現であり、それ自体が詩であった。詩の「背」にあるポエジー。詩とポエジーの係り結びとしてある「背」を見つめること。それが、この映画のテーマである。「背」は「瀬」と書いてもよいかもしれない。――七里圭監督©charm point