アルバート・アイラー(ts)の最高傑作『スピリチュアル・ユニティ』、1964年のオリジナル盤リリース時に収録されていたものの、後に差し替えられ、長い間聴かれることのなかった幻のトラックが復活し収録された『スピリチュアル・ユニティ 完全版 ESP50周年記念エディション』(KKJ-1007 2,130円 + 税)が11月22日(水)にリリースされます。
アルバート・アイラーは、1959年から3年間軍役について軍のコンサート・バンドに所属していましたが、その後半はパリで過ごし、除隊後もヨーロッパに留まりました。スウェーデンやデンマークでセシル・テイラーなどと共演するうちに“自由”を得たと確信した彼は、次第に独自のフリー・ジャズを開拓、精霊との交信を重視したフリー・インプロヴィゼイションという、それまで誰も分け入ったことのない道を切り開いていきます。
1963年にニューヨークへ戻ったアイラーは、1964年に入るや次々と衝撃的な演奏をアルバムに残していきましたが、その年の7月に録音した『スピリチュアル・ユニティ』は、彼の代表作というべき「ゴースト」のふたつのヴァリエイションを中心に4曲を収録し、
ゲイリー・ピーコック(b)、
サニー・マレイ(perc)とのタイトなインタープレイによってアイラーの過激で愛に満ちた“叫び”を理想的な形で味わうことのできる傑作となりました。
この傑作がESP50周年を記念して久しぶりに新装となってリリース。なんといっても注目は、プラステイクを収録しての完全版であることです。今回5曲目に収録された追加曲は、オリジナル盤がリリースされた時、B面1曲目(3トラック目)に収録されたものの、その後のプレスでは差し替えられ、近年流通していた4曲収録のヴァージョンでは聴くことができなかった貴重なトラック。また、このトラックには曲目表記に混乱がありました。もともと、オリジナルLPではB面1曲目(CDでは3曲目)が「Spirits」となっていましたが、実際に演奏されているのは「Saints」。オリジナル盤からして誤りがあったわけですが、さらなる混乱のもとは後に発売されたVenus盤にあり、そこでは3曲目がオリジナルLPを踏襲して「Spirits」と表記されていたばかりか、追加の5曲目が「Spirits-II」となっていました。これは明らかに3曲目とは異なる曲であり、正しくは「Vibrations」(もしくは[tune Q]2) 。「Vibrations」は、同じ年にドン・チェリーを加えたカルテットによってコペンハーゲンで録音されたdebut / Fontana盤『ゴースト』にも収録されているので、確認することができます。Venusがオリジナル盤の誤表記を引き継いだまま、さらに別の曲名まで間違ってしまったため、さらにわかりにくくなっていました。
今回は追加トラックの曲目も修正。長年、通常に流通していた3曲目と、この差し替えられた5曲目が同居してワールドワイドにリリースされるのは初であると、ESPも宣言。20世紀の革新であり、新しい道を切り拓いたパイオニア、アイラーの歴史的作品完全収録となるこのリリースは紛れもなくジャズ史における重要リリースです!
■2014年11月14日(水)発売
アルバート・アイラー
『スピリチュアル・ユニティ 完全版 ESP50周年記念エディション』
KKJ-1007 2,130円 + 税
[収録曲]
01. Ghosts: First Variation
02. The Wizard
03. Spirits
04. Ghosts: Second Variation
05. Vibrations aka [tune Q]2 *
* ボーナス・トラック
[演奏者]
アルバート・アイラー(ts)
ゲーリー・ピーコック(b)
サニー・マレイ(perc)