ドイツ人サウンド・アーティスト、
アルヴァ・ノト(Alva Noto)が2007年から続ける『ゼロックス』シリーズ5部作の最終章『
Xerrox Vol.5』が、12月6日(金)にリリースされます。
2007年にスタートした、アルヴァ・ノトこと
カールステン・ニコライの「Xerrox」シリーズの当初のコンセプトは、オリジナルよりも記憶に残る映像や音響の「コピー(複製)」を作ること。シリーズ名は米国のゼロックス社が1960年に商品化した電子写真複写機から始まり、現在ではコピー機やコピーのことを意味する「xerox」に由来していますが、名前だけではなく「コピー(複製)」という根本的なコンセプトにも影響を与えています。
当初は荒々しさとホワイトノイズの中に解答を求めるコンセプチャルなフォーカスを特徴としていましたが、後の作品では、音響的な粒子に重点を移しながら“溶解”というテーマに取り組んでいます。コピーのプロセスは、現在ではソフトウェアの操作によって目に見えるものではなくなっていますが、その代りに、アーティストが作曲中にメロディや音響のイメージを描写し、操作し、コピーし、新しいパターンに変換することで展開。ニコライはこの進化を、ホメロスの叙事詩「オデッセイア」やネモ船長が登場するジュール・べルヌの物語との共通点を示しながら、構築、探求、を包含する旅と表現しています。
シリーズの完結についてニコライは「始まりと終わりの両方を縁取るトラックのサイクル体を作ることを目指した」とコメント。「旅のモチーフは続くが、今回は無限への旅に出るというコンセプチュアルな目的を通して、物語は溶解にDissolution(ドイツ語で“Auflösung”)という言葉は素晴らしいコンセプトで、謎を解明するという意味もあるし、錠剤が水に完全に溶けるともある。ここで、私は意図的に溶解する過程を描写している」と話しています。
また、「このアルバムの完成にはおそらく最も時間がかかった。最初にメロディーのスケッチを描き、それが作品の基礎となった。これらのレコーディングはすべてゼロから制作したものだ。これらのスケッチをもとに、コピー、マニピュレーション、再形成のプロセスを構築した」とニコライが説明する通り、制作にあたり、ニコライは作曲プロセスを進化させ、サンプルを排除し、オリジナルのメロディを採用。
加えて、近年、映画や大規模なアンサンブルを手がけた経験から、ニコライの作曲へのアプローチは、クラシックの楽器法の影響も強く反映。ニコライは「このアコースティックなクラシック楽器の共同作業の経験は、Xerrox Vol.5の作曲プロセスにも生かされている。一部の楽器は、オーケストラへの移植を念頭に置いて設計されている」と説明しています。
ニコライは「私は当初、強く感情的なメロディーの側面には興味がなかった」とし、続けて「でも、その断片が中心的な役割を果たしていることに気づいたんだ」と振り返ります。この変化は、メランコリーと別れのほろ苦さに彩られた感情的な体験も反映されており、本シリーズを敬愛していた坂本龍一が亡くなったことでアルバムの感情的な響きはさらに深まりました。「“Xerrox Vol.5”は別れに大きく関係している。20年近く育ててきたシリーズそのものとの別れだけでなく、親しかった人たちとの別れもたくさんあった。これらの人々のことは、音で認識できると思う。とても感情的で個人的なアルバムだ」と語っています。
■2024年12月6日(金)リリース
Alva Noto
『Xerrox Vol.5』
CD AMIP-0370 3,190円(税込)
[TRACK LIST]
01. Xerrox Topia
02. Xerrox Sans Nom I
03. Xerrox Sans Nom II
04. Xerrox Ascent I
05. Xerrox Ascent II
06. Xerrox Sans Repit
07. Xerrox Nausicaa
08. Xerrox Xenonym
09. Xerrox Ada
10. Xerrox Arc
11. Xerrox Kryogene
12. Xerrox Isotop