東京スカパラダイスオーケストラのメンバー&ストリングスを迎えた、
安藤裕子のスペシャル・ライヴ〈秋の大演奏会〉が11月9日(金)、東京・NHKホールで開催。管弦楽器が使われたアレンジに定評のある、あの名曲たちがライヴで初めてオリジナルに近い形で再現! 興奮と感動を呼んだステージのレポートをお届けします。
安藤裕子
2012. 11. 9 NHKホール
〜 オフィシャル・レポート 〜 今年3月に6thアルバム
『勘違い』を発表。9月から10月にかけてアコースティック・ツアーを全国5ヵ所で行なうなど、さらに活動のペースを上げている安藤裕子が11月9日(金)、東京・NHKホールでスペシャル・ライヴ〈安藤裕子 秋の大演奏会〉を開催した。この公演には、デビュー以来のパートナーである山本隆二(p)、山本タカシ(g)のほか、東京スカパラダイスオーケストラの
NARGO(tp)、
北原雅彦(tb)、
GAMO(t.sax)、川上つよし(b)、
茂木欣一(ds)、CHICA Stringsなどが出演。ホーン・セクション、ストリングスを含む編成により、「海原の日」「パラレル」「さみしがりやの言葉達」など、多彩なアレンジが施されている楽曲を限りなくオリジナルに近い形で体感できる内容となった。
清水ミチコの“モノマネ”による場内アナウンス(はじまりは
“山口もえ”で、締めくくりは
“黒柳徹子”。いちばんウケていたのは“田中真紀子”でした)に続き、アラビアンナイト風の衣装をまとった安藤裕子がステージに登場。「おまたせしました、安藤裕子です。今日は一夜限りのお遊びなので、みなさん、楽しんでください」と挨拶した後、メンバーをひとりずつ呼び込み、バンド(山本隆二、山本タカシ、川上つよし、茂木欣一)とストリングスによる「“I”novel.」「パラレル」からライヴがスタート。続く「TEXAS」「さみしがり屋の言葉達」では、ストリングスに代わってスカパラ・ホーンズがステージに上がり、豊かな響きをたたえた演奏を披露。安藤裕子の奥深い音楽世界を生々しく表現した。
さらにチェロ、ピアノ、サックスの編成による「サリー」(2003年のデビュー・ミニ・アルバム『サリー』のタイトル曲)からは、アコースティック・テイストを軸にしたコーナーへ。「素晴らしいミュージシャンたちの演奏で曲がどんどん大きくなって。そのなかで歌えるのは、生まれてから死ぬまでのなかでも、いちばん幸せなんだと思います。でも、ピアノとギターの少しの音だけで歌うのも、とても好きです。……来年は10周年。こうして音楽を続けさせてもらっている、みなさんにもありがとうございます」というMCに導かれた「六月十三日、強い雨。」、そして、ストリングス・セクションのクラシカルな響きと強烈なエモーションを備えたヴォーカルがひとつになった「隣人に光が差すとき」も強く心に残った。
ライヴ後半では、アルバム『勘違い』のリード曲「鬼」、シングル曲「The Still Steel Down」「海原の月」といった代表曲を次々と演奏。ライヴが進むにつれてヴォーカルのダイナミズム、感情の発露も増していき、満員のオーディエンスをしっかりと魅了していた。
深みのある音楽性と表情豊かなヴォーカルを軸にした本編とは一転、アンコールではエンタテインメント性に満ちたステージが展開された。まずはスペシャル・ゲストの池田貴史(
レキシ)がなぜかサックスを持って登場、「ケビン・コスナーです!」という自己紹介で軽く笑いを取った後、安藤とのデュエットによる「林檎殺人事件」(郷ひろみ・樹木希林)を披露。そしてラストの「ぼくらが旅に出る理由」(
小沢健二 / アルバム)では、茂木欣一とのデュエットも実現。「それで僕は腕をふるって 君にあて返事を書いた」と茂木が歌い始めた瞬間、客席からは大きな歓声が起きた。
最後は出演者全員が手を繋いで挨拶。これまでのキャリアを象徴する楽曲を、凄腕のミュージシャンたちによる演奏と奥深い表現力をたたえたヴォーカルとともに堪能できる、きわめて貴重なライヴだったと思う。
来年2月28日には、指揮者・
西本智実とのコラボレーションによる「スペシャル・シンフォニック・コンサート」(Bunkamuraオーチャードホール / 管弦楽:
日本フィルハーモニー交響楽団)も決定。デビュー10周年を目前にした安藤裕子はこれから、さらなる充実期を迎えることになりそうだ。(Text By 森 朋之)