2016年のグラミー賞で最優秀クラシック・インストゥルメンタル・ソロを受賞したほか、たびたびグラミー賞にノミネートされているヴァイオリニストの
オーガスティン・ハーデリッヒ(Augustin Hadelich)が、スペインに関連した協奏的作品を収録する新作『レクエルドス〜プロコフィエフ、ブリテン:ヴァイオリン協奏曲 他』を9月9日(金)に発表します。
クリスティアン・マチェラル指揮
ケルンWDR交響楽団とともに、2021年ケルン フィルハーモニーで録音され、スペイン語で「思い出」を意味する言葉がタイトルに冠されたアルバムには、「ブリテン:ヴァイオリン協奏曲」「プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番」「サラサーテ:カルメン幻想曲」と、
ルッジェーロ・リッチがヴァイオリン独奏用にアレンジした「タレガ:アルハンブラの思い出」を収録。
サラサーテの名曲「カルメン幻想曲」は、
ビゼーの「カルメン」初演から7年後の1882年に書かれました。アレンジはビゼーのオリジナルに非常に近いままで、スペインを代表する音型、キャラクターと感情を生き生きとさせることに焦点を合わせて作曲されています。
1936〜39年のスペイン内戦は、
プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番がマドリードで初演されてからわずか数ヵ月後に勃発。この協奏曲は部分的にスペインで書かれており、プロコフィエフの表現主義のスタイルは、
ブリテンの大きなインスピレーションであり、プロコフィエフの最後の楽章でのカスタネットの使用は、ビゼーとブリテンの両方のリズムに関連しています。
ブリテンのヴァイオリン協奏曲は、スペインのヴァイオリニスト、アントニオ・ブローサが1939年に初演を行なっていますが、スペイン内戦に対する感情として書かれ、平和主義の作曲家の苦悩が表現されているとも言われています。
ヴァイオリンの名手
ルッジェーロ・リッチがソロ・ヴァイオリンのために編曲した
タレガの「アルハンブラの思い出」は、ギターのトレモロ奏法を「リコシェ」(弓を跳ねさせながらダウン弓でスラーさせて音を短くつなげて弾く)奏法に置き換えています。この曲についてハーデリッヒは「ブリテンの協奏曲の後に聴くと、〈アルハンブラの思い出〉は喪失に対する痛烈な瞑想のように感じます。これを理解するためには、アルハンブラ宮殿を見た経験も、スペイン内戦を学ぶ必要もありません。人間であり、この世界で私たちを取り巻く苦しみに敏感でありさえすればよいのです」と語っています。