フロアが和んだところでメンバー2人だけでの「フーテン」。ブルージーではないけれど、風来坊を描写した歌とラウンジ感のある菊池のピアノが、この人物像に命を吹き込む。ここで甫木元が「映画撮ってるとかいうとアーティスティックな人と思われがちなんですが、こんな感じなんです」と、ダメ押し気味に自己紹介。続く「All Too Soon」は歌の譜割りがミュージカル調かつ器楽的でユニーク。サポートの山下あすか(perc,cho)のコーラスも効いていて、ノワールなジャズにきらめきを一匙振りかけたような洒脱さ。都会的な夜におとぎの国が出現したようなBialystocks独特の音楽観が十二分に堪能できた。
さらに超スローなキック&スネアから始まる「またたき」は全ての音が歌に付かず離れずのいい温度感。シンプルな音像だからこそ、サビでエモーションを開放する甫木元のロングトーンも落差があってカタルシスを生む。また、菊池と秋谷弘大(key,cho)が添えるコーラスの完成度も高い。秒針のようなシンバルの刻みから入る「Winter」はスタンダードジャズをアップデートしたようなメロディが心地よい。一聴、ジャンル違いなようなブルージーな鶴田伸雅(g)のソロが起点になり、スケールの大きなロック・ナンバーのエンディングに向かい、バンドスタイルならではのダイナミズムを満喫させてくれた。続いてピアノループに乗る早口のトーキング風ヴォーカルに耳目を奪われる「I Don’t Have a Pen」。NTT docomoのWEB CM「正解よりも、楽しいを答えに。」に起用された、アイデア満載のナンバーだ。生演奏ではサビでファンクのグルーヴに突入する勢いが何倍にもなる印象だ。そのトリッキーさと熱演に大きな拍手が起きる。
なお、対バンライヴ〈Bialystocks Live 2022 “音楽交流記1”〉が5月7日(土)に東京・渋谷WWWで開催されることもライヴ中に発表された。
Text by 石角友香 Photo by SHUHEI.W
■『Tide Pool』Release Live 2022年2月25日(金) 東京 新代田FEVER
[セットリスト] 01. 光のあと 02. コーラ・バナナ・ミュージック 03. 花束 04. フーテン 05. Emptyman 06. All Too Soon 07. またたき 08. Winter 09. I Don’t Have a Pen 10. Over Now 11. ごはん&夜よ EN01. あいもかわらず EN02. Nevermore