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ボブ・ディラン『コンプリート武道館』収録の未発表音源と発売までのエピソードが公開

ボブ・ディラン   2023/09/19 13:42掲載
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ボブ・ディラン『コンプリート武道館』収録の未発表音源と発売までのエピソードが公開
 1978年に実現したボブ・ディランの初来日公演から45周年を記念し、当時、東京・日本武道館で行なわれた2公演を完全収録する『コンプリート武道館』が11月15日(水)に日本先行発売されます。ボブ・ディランのオフィシャル・サイトでもアナウンスされ、世界的にも注目されるこのアルバムから、未発表音源の「ザ・マン・イン・ミー」が公開されています。また、2007年にマスターテープが発見されてから、今回のリリースに至るまでのエピソードがあわせて公開されています。

[ボブ・ディラン『コンプリート武道館』、45年間封印されたマスター・テープ。]
ついに歴史が解き明かされる。ボブ・ディラン初来日公演、1978年(昭和53年)2月28日、3月1日、日本武道館での伝説の二日間を完全収録した『コンプリート武道館』が11月15日にリリースされることが発表されたが、そのマスター・テープは約45年間にも渡って封印されていたものだった。

1978年11月に当初日本のみで2枚組LPでリリースされた『武道館』は2日間の録音からの抜粋で、翌1979年に全世界発売となった。そのためマスター・テープは日本からアメリカへ渡ったと考えられていたが、そこから約30年後日本に存在していたことがわかった。2007年に「ボブ・ディラン・ライブ」というタイトルの何らかのテープが静岡工場の倉庫にあることがわかり、取り寄せてみたところ、ボブ・ディラン初来日公演の2日分の24チャンネル・アナログ・マルチ・テープが20本、まさに奇跡の発見となった。

30年近く倉庫に眠っていたままだった20本のマスター・テープは、当時の『武道館』の編集以来、一度も開けられた形跡はなく、いずれも30年前のものとは思えないほど、極上で最高のコンディションで残されていた。1978年版オリジナル『武道館』には収録されなかった未発表曲、収録されなかった日のヴァージョン、すべてが素晴らしく、ざわめき、息遣いまで聴こえてくるような会場の緊張感とともに、瑞々しく、生々しい歌と演奏、完璧な2日間のコンプリート音源であった。

日本で発掘された“秘宝”をなんとかリリースできないかと、何度も何度もボブ・ディラン側に繰り返し交渉するものの、非常にハードルは高く、なかなか進展しなかった。しかし、長年の交渉が実り、発見から15年の月日を経て、2022年に突如『コンプリート武道館』のプロジェクトが動き出す。1978年『武道館』のライヴ盤を企画した当時の担当菅野ヘッケル氏を総合監修に、1978年武道館の現場で録音し、『武道館』のミックスを行なった鈴木智雄氏をチーフ・エンジニアに迎え、新たなるマスター・テープの制作が日本でスタートした。

「歴史的ツアーの2日間の完全なコンプリート音源であり、何一つ取り除いたり、後から手を加えていない。完成したアルバムには、歴史に刻まれた伝説の武道館コンサートが素晴らしい音で記録されている。僕らは、あの日の会場で日本のファンが聴いたであろう音を忠実に再現しようと試みた」(菅野ヘッケル)

「“武道館における熱い思いを永遠の記録としてレコードで再現したい”というハッキリした意向があったので、キーワード“熱”に沿ったミックスを行った。その結果、1978年のオリジナル盤を越えるミックスが完成し、各楽器とボブ・ディランの声が明瞭に聞こえ、より鮮明でクリアなサウンドを届けられるようになった」(鈴木智雄)

45年前の24チャンネル・アナログ・マルチ・テープから、最新テクノロジーでリミックスとリマスターが施され、アナログは最高解像度のピュアなマスターからのカッティング(Mixer’s Labの北村勝敏氏がカッティングを担当)。ヴォーカルや演奏の生々しさ、まさにボブ・ディランがそこで歌ってるかのような臨場感を感じることができる、こだわりに、こだわり抜いた、すべてが日本で制作された最高クォリティのマスターが完成した。

今回のマスターについて、リマスターを担当した吉川昭仁氏(Studio Dede)はこう語る。

「2インチのアナログ・マルチ・テープからマルチトラックでデジタルに取り込んだのち、鈴木智雄氏がアナログコンソールに立ち上げトラックダウン。そのトラックダウン時にトラックダウンのスタジオにマスタリング機材を持ち込み卓アウトから直にDSD11.2のフォーマットにて取り込みを行う。この11.2Mhzの容量はCDの256倍であり、SACDの4倍となる、解像度的には2023年現在考えうる最大のサイズフォーマット。今回のアナログのマスターは、その11.2Mからダイレクトにカッティングされているので、過去には実現出来なかったルーティーンであり、発売されていたものとは比べ物にならないクォリティである。マスタリングから、カッティングまで一貫してマスタークロックに“abendrot The Everest 701”を採用。これもまた10年前には実現出来なかった事で、デジタルが普及して長い年月が経つが、今のテクノロジーでこそできる最良のアプローチにより最高のマスターに仕上がった」

完成したマスターを聴いた菅野ヘッケル氏はこう語った。

「これこそあの日のステージで、ボブが日本のファンに聞かせたかった音だ」

『コンプリート武道館』のアナログは、最高音質を確保するため各面20分以内に収め、8枚組LPとしてリリースされる。こういった関係者の証言や貴重な秘話は、5万字を超える日本版ブックレットにも収録されている。


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Photo by Joel Bernstein

ボブ・ディラン『コンプリート武道館』特設サイト
110107.com/Dylan_budokan
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