聴く者の心を浄化する歌唱と美しき旋律。元
ビーチ・ボーイズのブライアンに密着した初めてのドキュメンタリー『ブライアン・ウィルソン/約束の旅路』が、8月12日(金)より東京・TOHOシネマズシャンテ、東京・渋谷ホワイトシネクイントほかにて全国ロードショー。この度、これまでにない方法でブライアンの内面に迫っていく本編映像が公開されています。
ブライアン・ウィルソンをめぐっては過去に数本のドキュメンタリー、劇映画が製作されていますが、本人に長時間、密着してのアプローチはこれが初。なにしろ、大のインタビュー嫌いで通っている人物です。正面からの取材でその心を開かせるのはまず不可能。固い壁を砕くべく選ばれたのが、ブライアンの古くからの友人で元『ローリング・ストーン』誌の編集者ジェイソン・ファインでした。製作陣は、ファインが運転する車でブライアンをふたりきりにし、そのリラックスしたムードの中での会話を収録することを発案。3年間で70時間ほどの撮影素材を収集し、9ヵ月をかけて再構成していきました。
この度公開された本編映像では、旧友ジェイソン・ファインとともに、音楽を聞きドライブをしながらインタビューを行う様子が切り取られています。ジェイソンがこの企画を引き受けた時に言っていた通り、ブライアンが全く話さない時間がかなりありました。ブライアンは、自分が選んだ曲を聴きながら、ただ通り過ぎていく風景をじっと眺めていることがよくありました。しかし、車の外を見つめるブライアンの映像はやがて、自らの人生を振り返る男の姿になりました。車と旅が、ブライアンの人生の比喩的表現になったのです。運転中にブライアンが選んだ曲も同じように重要になりました。彼は、ヒット曲だけでなく、弟であるカールとデニスを思い出すような曲も選びました。弟2人はすでに他界しており、ウィルソン家で生存しているのはブライアンのみで、それらの曲をかけながら窓の外を眺めるブライアンの姿から、その重みを感じていることがうかがえます。この映画が形を成していくにつれ、チャーミングで、自虐的、また時には葛藤するブライアンの姿が次々と見えてきました。そして何よりも、サバイバーとしてのブライアンが明らかになったのです。
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