ブルース・スプリングスティーン(Bruce Springsteen)が1983年から2018年までの35年間に制作しながら、これまで世に出なかった完全未発表アルバム7作を収める6月27日(金)発売のボックス・セット『
トラックスII:ザ・ロスト・アルバムズ』。このボックスのDisc2『ストリーツ・オブ・フィラデルフィア・セッションズ』より完全未発表曲「ブラインド・スポット」が公開されています。
『ストリーツ・オブ・フィラデルフィア・セッションズ』はグラミー賞とアカデミー賞をともに受賞した楽曲「ストリーツ・オブ・フィラデルフィア」で成し遂げたことをアルバム全編に拡張しようとした作品です。当時のスプリングスティーンは、1990年代半ばの曲、とりわけウエストコーストのヒップホップで耳にするリズム・パートに興味を持つようになっていました。
当初はロサンゼルスの自宅でドラム・ループのサンプルCDを聴きながら、エンジニアのトビー・スコットとともにキーボードとシンセサイザーを使って独自のループを制作。そこからアルバムへと発展させていきました。『ストリーツ・オブ・フィラデルフィア・セッションズ』のレコーディングの大半はスプリングスティーンがみずから演奏。1992年から1993年にかけてのツアー・バンドや、
パティ・スキャルファ、スージー・タイレル、リサ・ローウェルらも参加しています。
公開された「ブラインド・スポット」は『ストリーツ・オブ・フィラデルフィア・セッションズ』のテーマの中心にある、人間関係における疑念と裏切りを探求する楽曲。スプリングスティーンは「それが狙いを定めたテーマだった。理由はよくわからない。パティと僕はカリフォルニアで素晴らしい時間を過ごしていた。でも、気に入った1曲に狙いを定めてしまうと、その筋道を辿ってしまうことがあるんだ。〈ブラインド・スポット〉があったから、レコードの残りもずっとその筋道を追いかけたんだ」と語っています。
アルバム『ストリーツ・オブ・フィラデルフィア・セッションズ』はレコーディングが終わり、ミックスもされ、1995年春にリリースされる予定でしたが、スプリングスティーンが7年ぶりにEストリート・バンドを再結成することを決めたため、最終的にお蔵入りとなりました。
「そろそろバンドで何かやるか、ファンにバンドや僕のキャリアのその部分を思い出してもらう時期かもしれないと言ったんだ。それでそっちに進んだ。でも『ストリーツ・オブ・フィラデルフィア・セッションズ』はずっと気に入っていて、ブロードウェイ・ショーの上演期間中に(単独リリースとして)出そうと思ったこともあったんだけどね……いつもしまっておくんだ。でも捨てたりはしないんだよ」とスプリングスティーンは語っています。
Photo by Neal Preston