2018年の東京JAZZに出演し、日本各地で公演を行なったスイス・チューリッヒ出身のジャズ・ピアニスト、
クリストフ・シュティーフェル(Christoph Stiefel)が、ニュー・アルバム『Full Tree』を11月3日に発表しました。ソロ、トリオ、セプテットとさまざまな編成で活動してきたシュティーフェルは、新作をクインテットで録音しています。
2022年1月にチューリッヒを代表するジャズ・クラブ「Moods」で行なわれた4日間のイベント〈Carte Blanche〉に、シュティーフェルは新たな試みとしてクインテットで出演しました。「セプテットは、小編成でビッグバンド的なサウンドをクリエイトできるが、表現の制約を受ける。トリオは自由である一方、自身がピアノで書いたすべての多声的なことを表現する必要がある」と、オーケストラ的なサウンドとインタラクティヴな即興の面白さを表現できる可能性を見出したのがこのクインテットでした。そのヴィジョンを音楽的に実現するために、新曲を作曲し、バンド・メンバーを招集。「Carte Blanche」でお披露目したクインテットとともに、2023年1月と6月にアルバムのレコーディングに臨みました。
フロントのバスティアン・シュタイン(tp,フリューゲルホルン)、
ドメニク・ランドルフ(ts,バスクラリネット)をはじめ、ヨーロッパ・ジャズの薫陶をうけた、セプテットの信頼できる仲間たち、リズム・セクションは、ロサンゼルス生まれのラファエレ・ボサード(b)と、世界中で活躍してきた
デヤン・テルジッチ(ds)というラインナップです。メンバーの個性を意識したコンポジションである一方、「演奏方法には指示を与えないように意識的にも努めた」というサウンドは、5人の力量が最大公約数となったことがオープニングからもわかります。元来の魅力である繊細な表現と冒険心。美しいメロディ、密なハーモニー、そしてリズムのエネルギーが詰まった演奏は、自身のスタイルを貫きつつ、新たな方向性を示しています。