カルト映画の“生きる伝説”と称される革新的映像作家
デヴィッド・リンチ(David Lynch)がミュージシャンとして初めてソロ・アルバム『Crazy Clown Time』をリリースすることが決定しました。収録される14曲(国内盤にはボーナス・トラックを収録)は、プロデュースと作曲のすべてをリンチが手がけ、自らギターとヴォーカルも担当。日本国内では<Beat Records>(11月2日予定)から、海外では<Sunday Best>(11月5日予定)からのリリースとなります。
昨年末に「Good Day Today」と「I Know」という二つの楽曲がリリースされて以降、世界中のメディアがアルバムの存在を噂していました。「恐るべきエフェクトと謎めいた歌詞:これはリンチ史上最も予想外の冒険だ」(ロサンゼルス・タイムズ紙)/「ついにリンチは音楽の世界にも功績を残した」(BBC)/「リンチから想像できるように、細かなところまですべてが心地良く異様だ」(ワシントン・ポスト紙)/「一人の天才的創造者が新しいメディアに爪先を踏み入れたサウンド」(NME)
アルバム『Crazy Clown Time』はコレクター・エディションCD、ボーナス・トラック入りLPセット、映像特典付きiTunes限定配信を含む、フィジカル・フォーマットとデジタル・フォーマットの両方でリリースされる予定(日本国内盤の仕様は後日発表予定)。
リンチ作品の映画音楽を多く手がけてきた
アンジェロ・バダラメンティ(テレビドラマ『ツイン・ピークス』)、ポーランド人ピアニスト、マレク・ゼブロウスキー(映画『インランド・エンパイア』)、さらには
スパークルホースと
デンジャー・マウス(アルバム『Dark Night of the Soul』)など、これまでのキャリアを通し、さまざまな音楽プロジェクトでミュージシャン達と仕事をしてきたデヴィッド・リンチ。しかしながら、今作『Crazy Clown Time』では、初めてソロ・ミュージシャンとして自らにスポットライトを当てています。
独学で、しかも他の誰とも似つかない経験を通して、音楽と関わってきたこの“非音楽家”は「サウンドと音楽の実験に強く魅了されていることが、今に繋がっている」、「ここに収録された楽曲はすべて一つのジャムから始まった。そのジャムがいつしか自らを形作り、歌詞が生まれたんだ」と、みずからの音楽活動について説明します。
『Crazy Clown Time』のレコーディングは、数ヵ月に渡って、自身の音楽スタジオ、<アシンメトリカル・スタジオ(Asymmetrical Studio)>で、ギターとドラムとしても参加したエンジニアのディーン・ハーリーと共に行なわれました。レコーディング作業は、クリエイティヴなアクシデントの連続だったとリンチは回想します。「本当に多くのアクシデントが起こったんだ。このアルバムは病院に入るべきだね」。
そこから生まれた楽曲群を、リンチは“モダン・ブルース”と表現しています。聴き手をゾクゾクとさせる独特の音風景、催眠的なリズム、そして謎めいた歌詞で満たされた『Crazy Clown Time』は、リンチの映画作品ファンだけでなく、大胆不適で奇抜なポップ・ミュージックを愛するあらゆる音楽リスナーの心も間違いなく掴むことでしょう。
2011年初頭にリリースされた二つの楽曲が、アルバムの音楽的な幅広さをすでに示唆していました。「Good Day Today」を特徴付ける強烈なビートは今回収録された「Stone’s Gone Up」や「Noah’s Arc」、「Strange and Unproductive Thinking」にも確認でき、一方「I Know」の持つ不穏な雰囲気は、「So Glad」、「Football Game」、そして
ヤー・ヤー・ヤーズの
カレン・Oをフィーチャーした「Pinky’s Dream」にも漂っています。
音楽に対するリンチの情熱は、彼の映画制作活動の中でも顕著に見ることができました。1977年のデビュー作品『イレイザーヘッド』では、ピーター・アイヴァースと共に作曲した「In Heaven」を起用し、最近では2006年の『インランド・エンパイア』でも自らが手がけた楽曲を複数披露しています。
4年前、沸き立つ野望に突き動かされ、ついに音楽の道を本格的に歩み始めたデヴィッド・リンチは、自らが立ち上げた<David Lynch Music Company>の看板アーティストと呼べるほどアクティヴに音楽活動を展開。2010年、自身のウェブサイト【
www.davidlynch.com】を大幅にモデルチェンジし、<David Lynch Music Company>の音楽作品のデジタル・アーカイヴとしての機能を持たせると同時に、リンチや彼のコラボレーター達によって生み出された数々の未発表音源や音楽実験の発表の場となっています。