デイヴィッド・ジンマン(DAVID ZINMAN)×
チューリヒ・トーンハレによる最新盤
『ストラヴィンスキー:春の祭典(1913年初稿世界初録音+1967年決定稿)』(SICC-30195〜6 3,000円 + 税)が1月28日(水)に発売されます。昨年6月に行なわれた『春の祭典』初演100年記念演奏会をライヴ収録したアルバムです。
このアルバムの目玉は、なんといっても『春の祭典』1913年初稿の世界初録音。『春の祭典』は何度も改訂を加えられた作品ですが、本アルバムでは作曲者が構想した『春の祭典』の最初の姿と、最終的な1967年の決定稿を聴くことができます。『春の祭典』のスタート地点とゴール地点、その両方がアルバムに収められているのです。
初稿の演奏に際しては、チューリヒのパウル・ザッハー財団所蔵になる自筆譜を使用し、初演にかける前の作品の原初の姿の再現が試みられています。「初稿はよりソフトで印象主義的」というジンマンの言葉通り、細部のオーケストレーションが異なっており、演奏を繰り返していく過程でストラヴィンスキーが改訂を加えた意図がよくわかります。
本アルバムの特徴は、今年発売され話題となった
ロト指揮ル・シエクルの再現稿とは異なり、初演にかける前に作曲者が思い描いた作品の形態を、記譜のミスと思われる個所も含め、そのまま演奏している点です。『春の祭典』初稿と決定稿に加え、ジンマンによるプレ・コンサート・レクチャー(約35分)も収録されています。プレコンサート・レクチャーでは、ジンマン(英語)、司会(ドイツ語)による語りのほか、作品の部分的なデモンストレーション演奏も。初稿と決定稿の差異や、
フランス国立管とトーンハレ管のファゴット奏者によるバソンとファゴットの音色を比較したりするデモ演奏に加えて、特筆すべきは、アンセルメが1922年にチューリヒ・トーンハレ管弦楽団で第2部の序奏のみを単独で取りあげた際にストラヴィンスキーが5小節のコーダを書き足した稿(世界初録音、ジュネーヴ音楽院所蔵)、『春の祭典』冒頭の有名なファゴットの旋律のもととなったユスキエヴィッツの「婚礼の歌」がジンマンによるオーケストラ編曲で含まれている点でしょう。
ジンマンの師モントゥーは作品の初演指揮者であり、1963年にロンドンで行なわれた〈初演50周年記念演奏会〉ではジンマンがアシスタントとしてリハーサルを指揮。それゆえ、このアルバムに収められた初演100年記念演奏会はジンマンにとって感慨深いものであり、円熟の棒が冴えわたっています。
デイヴィッド・ジンマンは以下のように語ります。
「自筆譜による初稿と現行版の差異は、オーケストレーション、小節の区切り方、そして演奏についての指示にわたって数多くあります。例えば冒頭の有名なファゴットのソロは、初稿ではデイナミックスの指示がなく、演奏者の解釈にゆだねられています。これまた有名な『春の兆し』には下げ弓の指示がなく、現行版の脅迫的な趣きがありません。音楽の内容にかかわる重要な変更もあります。練習番号28では、後の改訂では18小節分の音楽が削除されています。リズムの上で複雑な〈いけにえの踊り〉でも非常に多くの差異が見られるのです」(デイヴィッド・ジンマン) 本アルバムの国内盤解説書には、日本語に訳されたデイヴィッド・ジンマン・インタビューやマイケル・マイヤーによる「ストラヴィンスキー『春の祭典』の起源、影響とさまざまな争点について」、インガ・マル・グルーテ「1913年のパリ〜ストラヴィンスキーの『春の祭典』」、カーステン・レール「イーゴル・ストラヴィンスキー」、マルギット・キッチュ「『春の祭典』の初演」、「作品のインスピレーションとなったもの」、木幡一誠による「初稿と決定稿の狭間で」、そしてアルバムに収められたジンマンの語りの日本語訳が掲載。非常に充実した内容となっています。『春の祭典』ファン必携のアルバムの登場です。
■2015年1月28日(水)発売
『ストラヴィンスキー:春の祭典(1913年初稿世界初録音 + 1967年決定稿)』SICC-30195〜6 3,000円 + 税
[DISC 1]
ストラヴィンスキー:
バレエ音楽『春の祭典』(1913年初稿 / パウル・ザッハー財団所蔵の自筆譜による)
※世界初録音第1部「大地への讃仰」
01. 序奏
02. 春のきざしと若い娘たちの踊り
03. 誘惑の遊戯
04. 春のロンド
05. 競い合う部族の遊戯
06. 賢者の行進
07. 賢者
08. 大地の踊り
第2部「いけにえ」
09. 序奏
10. 乙女たちの神秘な集い
11. 選ばれた者の讃美
12. 祖先の霊への呼びかけ
13. 祖先の儀式
14. いけにえの踊り〜選ばれた乙女
[DISC 2]
バレエ音楽『春の祭典』(1967年決定稿)
第1部「大地への讃仰」
01. 序奏
02. 春のきざしと若い娘たちの踊り
03. 誘惑の遊戯
04. 春のロンド
05. 競い合う部族の遊戯
06. 賢者の行進
07. 賢者
08. 大地の踊り
第2部「いけにえ」
09. 序奏
10. 乙女たちの神秘な集い
11. 選ばれた者の讃美
12. 祖先の霊への呼びかけ
13. 祖先の儀式
14. いけにえの踊り〜選ばれた乙女
デイヴィッド・ジンマン、「春の祭典」を語る
15. 第2部「いけにえ」〜序奏(ストラヴィンスキーによる1922年作曲の新しい終結部付き / 世界初録音)
16. アントン・ユスキエヴィツ:婚礼の歌[オーケストレーション:デイヴィッド・ジンマン](世界初録音)
17. 〈春のきざしと若い娘たちの踊り〉の冒頭部では
18. ピエール・モントゥーからの修正依頼〜〈春のきざしと若い娘たちの踊り〉
19. 次の改訂箇所は〈誘惑の遊戯〉にあります
20. これはストラヴィンスキーがオーケストレーションをより明解にしたもう1つの例、〈競い合う部族の遊戯〉です
21. 第2部の冒頭は何度も書きかえられました
22. 第2部「いけにえ」〜冒頭部
23. 『春の祭典』の最後の部分を演奏します
24. この曲は何が起こるかわからないのです
[演奏]
デイヴィッド・ジンマン指揮チューリヒ・トーンハレ管弦楽団 / フィリップ・ハノン(fg / DISC 2 15〜24)マティアス・ラッツ(fg / DISC 2 15〜24)
[録音]
2013年6月8日〜9日 チューリヒ“トーンハレ”