さる9月13日(火)、川崎CLUB CITTA'にて、
DIR EN GREYがニュー・アルバム
『DUM SPIRO SPERO』の購入者を対象とした無料招待制ライヴ・イベント<Ratio ducat, non fortuna -Zombie->を開催! 混沌と興奮が渦巻いたこのステージのレポートをお届けします!
【DIR EN GREY<Ratio ducat, non fortuna -Zombie->】
〜オフィシャル・レポート〜 9月13日、DIR EN GREYによる規格外のライヴが実現した。会場となったのは、川崎CLUB CITTA'。9月15日と16日の両日に同会場で行なわれるFC会員限定ライヴを幕開けに<TOUR2011 AGE QUOD AGIS>と銘打たれた新規国内ツアーがスタートすることになっているが、それを目前に控えながらこの日に行なわれたのは、去る8月3日に発売された最新アルバム『DUM SPIRO SPERO』の購入者を対象とする無料招待制イベント。あくまでイベントということで内容は一切、事前には公表されず、ファンの間でもさまざまな憶測が飛び交っていたが、ふたを開けてみれば秘蔵映像上映とアルバム発売後初の国内ライヴという、きわめて密度の濃いものだった。
しかもそのステージ上に、超満員のオーディエンスは“いまだかつて見たことのない様相をしたDIR EN GREY”を目の当たりにすることになった。30分を超える映像(先頃終了したばかりの欧州ツアーの映像も含む)の上映が終わり、アルバムの冒頭に収められていたオープニングSEの「狂骨の鳴り」が聴こえてくると、スクリーン上に浮かんだのは“Ratio ducat, non fortuna -Zombie-”というこのイベントのタイトル。その向こう側には臨戦態勢のメンバーたちの姿がうっすらと見え隠れする。この時点で、3倍を超える難関を潜り抜けた1,500人の強運なファンたちのヴォルテージは最高潮に達しつつあったが、スクリーンを下ろした状態のまま、5人の巨大なシルエットがうごめく景色とともに「蜜と唾」が披露されるとフロア前方は人口過密状態に。さらに同曲が終わって紗幕が振り落とされ、「DIFFERENT SENSE」を演奏しはじめたメンバーたちの姿があらわになると、場内には轟音をかき消さんばかりのどよめきと歓声、さらには悲鳴にも近い声が渦巻くことになった。なにしろ視界に飛び込んできた5人の姿は、まさに文字通りのゾンビ。この楽曲のミュージック・クリップと同様の特殊メイクが施されていたのだ。しかもフロントマンの京に至っては、全身にペイントが施されており、あの衝撃映像を遥かに上回る異形ぶり。そのディテールについては言葉では説明しがたいところがあるので、写真をご参照いただきたい。さすがはDIR EN GREY、中途半端なことはしない。
しかも無料イベントでありながら、彼らはほぼフル・サイズに近いステージを披露。実際のところ、特殊メイクが施された状態での演奏時間には限界があるのではないかと不安視する声も関係者たちのなかにはあったが、『DUM SPIRO SPERO』からの楽曲を随所にちりばめながら、しかもその様相に相応しく攻撃モードに徹したその演奏は、2曲のアンコールも含めて全15曲にも及んだ。
もちろん15日に正式に幕を開ける今回のツアーの各公演において、彼らがこのような姿でステージに立つことはあり得ない。とはいえこの夜のライヴ自体が“あり得ないもの”だった事実を踏まえれば、そうした断定的な言い方は避けるべきではないかという気もしてくる。どうあれ、何事に対しても徹底的に取り組まずにはいられないこのバンドの体質が存分に反映されたこの夜のイベントが、ツアー本編に対する期待感をさらに高めることになったのは間違いないだろう。ツアーのタイトルである“AGE QUOD AGIS”という言葉には、「己の本分をまっとうせよ」といった意味合いがあるという。そこで彼らがどのように進化を提示し、いかに深化を遂げていくことになるのか。是非注目したいところだ。(文・増田勇一)