さる1月22日(日)、大阪城ホールにて
DIR EN GREYのライヴ<UROBOROS -that's where the truth is->が開催! リリースから約3年、
『DUM SPIRO SPERO』を経て、
“Remastered&Expanded”として再び降臨したアルバム『UROBOROS』の世界観は一体どのようなものなのか……。オフィシャル・レポートをお届けします。
DIR EN GREY
UROBOROS -that's where the truth is-
2012. 1. 22 大阪城ホール
〜 オフィシャル・レポート 〜 1月22日、<UROBOROS -that's where the truth is->と銘打たれたDIR EN GREYの大阪城ホール公演が行なわれた。改めて説明するまでもなく、『UROBOROS』は2008年11月に発売された彼らの前作アルバムであり、同作の世界観体現を主題とするライヴが初めて実践されたのが同年12日29日、この大阪城ホールでのことだった。3年と少々の月日と、そのなかでの進化や試行錯誤を経ながら、『UROBOROS』という名の怪物が同じ場所に再降臨を果たすことになったというわけである。
開演予定時刻の午後7時を7分ほど過ぎた頃、場内は暗転。想像力を刺激せずにおかない映像とともに聴こえてきたのは、『UROBOROS』のオープニングSEにあたる「SA BIR」。しかも先頃リリースされた『UROBOROS [Remastered&Expanded]』に収録されていたのと同じ“拡張ヴァージョン”だ。歓声が沸点まで到達した直後、一瞬の沈黙を挟んでまず最初に披露されたのは、当然ながら「VINUSHKA」。京の口から「此処が真実だ」という歌詩が発せられた瞬間、それまで象徴的映像を伴いながら広いステージを覆っていた紗幕が振り落とされ、演奏する5人の背後には果てしない廃墟が広がっていた。そして以降、彼らはこのアルバムの収録曲すべてを収録順通りにプレイ。正確に言うならば、それはまさに『UROBOROS [Remastered&Expanded]』の構成に忠実なもの(ただし「BUGABOO RESPIRA」は除く)となっていた。
映像や照明効果を駆使した演出は、2010年1月に行なわれた日本武道館での二夜公演<UROBOROS -with the proof in the name of living…->の際のそれと共通性のあるものだった。が、それ自体も『UROBOROS』というアルバムが新たなミックスやマスタリングを経ながら拡張刷新されたのと同様にグレードアップされていた点は興味深い。そして言うまでもなく、現時点での最新作である『DUM SPIRO SPERO』とそれに伴う密度濃いライヴ活動を経ながら、さらなる“進化”を遂げているDIR EN GREYの現在形バンド・サウンドは、彼ら自身によりかつて産み落とされたこの作品の世界観を、いっそう説得力と奥行きのあるものへと“深化”させていた。
あくまで速報原稿ということで、この場では各曲に伴う詳細な情景描写などは避けておくが(実際、通常の公演では考えられないほどの数の媒体関係者が東京から訪れていた。読者は今後、この公演にまつわる記事を多方面で目にすることになるはずだ)、この夜の公演について、たとえば「ライヴという概念を超越したものだった」と述べたとしても過言ではないはずだし、同じ場所に居合わせたオーディエンスの大半がそれに同意してくれるに違いない。そして重要なのは、『UROBOROS』の世界観体現が徹底的に追求された本編終了後、トータル8曲にも及ぶアンコールには確実にこのバンドの“今”が凝縮されていたということ。その事実が無言のうちに語っていたのは、『UROBOROS』に伴う物語はここで間違いなく一応の着地点を迎えたが、終点のないループのごとき5人の自己探求のプロセスは、まだまだ続いていくということなのではないだろうか。
午後9時33分。5人のメンバーすべてがその場を立ち去ると、ステージ背景のLEDスクリーンには「The continuation of that scary dream. DUM SPIRO SPERO」というメッセージが浮かび上がっていた。直訳すれば「恐ろしき夢の継続。生あるかぎり希望はある」といったところだろうか。その言葉に込められたバンド側の真意は正確にはわからないし、その解釈は十人十色であるべきものだろう。が、それがどれほど苦痛やリスクを伴うものであろうと、DIR EN GREYの探求の旅はまだまだ終わらない。大阪城ホールという選ばれし場所で提示された“真実”の意味は、筆者自身にはそう届いている。(文:増田勇一)